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『告白』/ボウリング/『福田村事件』

・湊かなえ『告白』(Audible Studios)を聴く。

 愛娘が学校内で事故死した教師。終業式の日、彼女はクラスの生徒に告げた。
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」
 その言葉をきっかけに学級は崩壊し、教師の復讐が始まる。その凄惨な物語は教師、一生徒、犯人の親族、犯人の視点から綴られていく。中学生の無垢と無知、会話の欠如が引き起こす残酷な復讐劇。

・この作品、文章で読んでも結構迫力があるけど、読み上げるとさらにそれが増す。死を連呼するとことか、同じ言葉でも徐々に語気を強くしていくのは音声ならではだろう。

・この作品、娘を殺された教師が復讐を行う過程が丁寧で、だからこそ恐ろしい。手紙や一方的に話す教師は常に丁寧な口調を崩すことはない。不気味で得体のしれない恐怖がある。

・会話の欠如、と書いたのは、この作品が常に独白によって展開されるからだ。作品世界自体は様々な語り手が多様な方向から語ってくれる。ただ、登場人物同士は表面上の会話以外をあまりしていないように感じた。

・家から少し離れた映画館に。ボルダリングやボウリング場、スパ等が併設されていて、南国の雰囲気漂う建物だった。

・映画館は電子パネルの類はなく、人が開場やら準備中やらをアナログパネルで教えてくれる。風情があるな。

・映画開始まで、時間があったのでボウリングをすることに。

・こちょこちょ調べると1ゲーム10分だというので、3ゲームで登録。

・ボウリング、実は結構好きだ。でもみんなで集まるとスポッチャになってしまうので、ボウリングをするのは久しぶりだった。

・ただ、ここは古びたボウリング施設。スポッチャは無い。

・台湾でホストファミリーの子供たちと出かけたことがある。夜市でご飯をいくつか食べ、臭豆腐のとんでもない匂いに絶句しつつも楽しんだ。そんな夜、友人達はビルとビルの間へと私を誘った。お互いに英語が流暢に話せる訳ではない。意思疎通もそこそこに連れられる私は内心ドキドキだった。日本でも路地は怖いのに、外国なら尚更だ。勧められるまま階段をのぼりきった私を、カコンという気持ちのいい音が出迎えた。そこはボウリング場だった。

・そのボウリング場に凄く似ていた。古き良き地元民に愛されるボウリング場だった。

・台湾のボウリング場には黒くて大きな番犬がいて怖かったな。目は可愛いかったけど。

・隣のスーパーテクお爺さんコンビを真似つつ、何度も投げる。およそ60回。成績は微妙だったけど、ストライクで〆られたのは最高だった。

・「就活なにくそー!!」とか、口ずさんで投げる。カコン、という音と共に倒れるピン。凄く気持ちが良かった。まぁ、こんなことをしている場合ではないっちゃないんだが。←こういう感情をピンと共にぶっ飛ばしてきた。そのために行ったのだ。

・もう少し近くにあったら頻繁に行くのにな。

チェキ

・『福田村事件』を映画館で見る。土地柄か年配の方が多かった。

『福田村事件』
 関東大震災の際、千葉県福田村に「朝鮮人による暴動が起こっている」という噂が流れてきた。そして、住民達はちょうど村を訪れていた香川の行商人を朝鮮人だとして殺害してしまう。何故そのような悲劇が起こってしまったのか、に迫るドキュメンタリー。

・日本統治下の朝鮮で教師をしていた男、澤田が視点人物。彼は日本軍による朝鮮人虐殺を目撃し、そのショックから日本に帰国した。(架空の人物)

・前半は村人と行商人、それぞれの日常が描かれる。どちらも普通の人。笑うし、怒るし、泣く。ただ、どちらにも朝鮮人に対する差別を抱えている人がいる。

・9月1日、関東大震災。

・福田村もかなりの被害を受けた。だが、住民達の心を揺さぶったのは、「東京では朝鮮人による暴動が起こっている」という噂だ。真実か否かを確かめるすべは無く、噂は住民の心の中で成長していった。

・そして、運悪くそこに行商人達が訪れた。香川の行商人達は訛っており、それが朝鮮人の言葉だと勘違いされる。何の証拠もないまま、住民達の興奮は高まり、そして一人が手を出したが最後、殺戮が始まってしまう。

・一言で言うなら、凄惨で残酷。恐怖状態下の集団心理を上手く描いた作品だと思う。行商人が捕まって殺されるまでがあっという間だ。もう少し時間をとってもいいかもしれない、と思ったが、生命が一瞬で奪われてしまう残酷さを演出しているのだろう。

・行商人のリーダー沼部新助(永山瑛太)の台詞が印象に残った。「朝鮮人だろ」と自分達を囲む村人に向けて、彼はこう叫ぶ。

「朝鮮人なら殺してええんか」

と。そこで村人達はハッとしたように言葉を失う。その時、一瞬だけ狂気が抜けた本来の村人の顔に戻っていた。

・集団による暴力に対して、問いかけられた言葉。その言葉をそれぞれの村人が反芻し、無言になった。自分は何に突き動かされているのか。現代でも集団による暴力は多い。SNSでも、暴露垢の発信に追随する形で暴言を吐く人はいる。

・どちらの答えも、不安だからだろう。特に関東大震災、東京の大半は甚大な被害を受けた。自分の生活の足元が大きく揺らぐ出来事だろう。自分の立ち位置さえ分からなくなったに違いない。そんな時、自分の立ち位置を見つけて縋りたくなるのは当たり前なのかもしれない。

・福田村にも、軍を辞めてなお軍服を着て生活する村人達が登場する。彼らもまた、動乱の時代の中で自分の立ち位置を見つけるのに精一杯だったのかもしれない。

・久々に邦画を見たかもしれないな。

・私は人の心情に興味があるのだろうか。人に薦めるかはともかく、いい映画だと思う。

・東出さんの演技が凄く良かったな。野性味が増していていい味を出していた気がする。

・あくまでフィクション。だからこそ、見やすい。ここを入り口にして、学ぶことが必要なんだと思う。


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