コロナ禍の医療で起きたことをテーマにデスカフェ
葬儀社、ライフネット東京(東京・品川)代表・小平知賀子さん主宰のデスカフェが18日、ライフネット東京事務所で開かれた。テーマは「コロナ禍の医療の現場と5類変更後の事」。
理学療法士のAさんがコロナ禍の医療現場で何が起きていたのか、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することで何が変わるかなどについてわかりやすく解説してくれた。
理学療法士は患者の体を支えたりマッサージをしたりするなど、患者との濃厚接触が避けられない仕事。このため、新型コロナの蔓延が始まったころは、N95マスク(微粒子も捕集するマスク)が不足して困ったという。コロナ患者と向き合う時は、感染防止のための防護服に身を包んだ。「息苦しく暑い。すぐに汗だくになった」。
新型コロナに感染して入院した患者の家族に対して、医師は「心臓や肺の働きが停止することもあるかもしれません。その時は蘇生措置を希望しますか?」と万が一の時の対応について、確認を求めるが、「心の準備がないままに医師からこう問われたら、今死なれたら困るとしか考えられなかったと思います」とAさん。普段から万が一の場合に備えて、将来の医療やケアについて、医療・ケアチームと、繰り返し話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の必要性が期せずして、明らかになったという。
しかし、Aさんは、それ以上に、アドバンス・ライフ・プランニング(ALP)の必要性を感じたらしい。ALPとは、健康なときから「自分は何を大切にしているのか」「どのような人生を歩みたいか」によってついて考えるものだ。
コロナ禍で、病院や高齢者施設は、外出禁止、面会禁止にするところが多かった。
外出禁止、面会禁止で家族に会えないことは予想以上に患者に悪影響を与えていたことがわかったという。Aさんは孤独感にさいなまれていた高齢の患者に、LINEを使って家族に近況を伝える方法を伝授。それにより彼は元気になり、リハビリにも打ち込んだという。
どんな状況になっても、いつまでも家族と一緒に過ごしたいーー。どんな治療を選ぶかよりも、こうした、絶対に譲れない希望を表明しておくことが大切とAさんは感じたという。
デスカフェでは、外出禁止、面会禁止で、患者と家族が死に目にも会えないケースがあることを材料に議論が弾んだ。新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけは季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するが、「クラスター発生の危険を考えると、面会禁止、外出禁止などの対応はすぐには撤廃しない病院や施設が多いと思う」とAさん。それ以外の様々な対応は、インフルエンザに近いものになりそうだ。
しかし、コロナ禍への対応を通じて明らかになったのは「人生の道のりのなかで医療の役割は一部に過ぎない」ということ。最後、どう生きたいということを明確にして、いろいろな選択肢を考えることが、これからはますます必要になる。
コロナ禍では、ビデオ会議の普及などIT利用が急速に進むなど、良いこともあった。それと同様に、将来の医療、ケアを考える際は、その大もとにある、どんな生き方をしたいのかというALPをしっかり実行することが大切とみんなが感じたことは、貴重な成果だったかもしれない。