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シリアスシーンに「大阪のおばちゃん的キャラ」をぶち込んでみよう!|『ロープ』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「ロープ」に【「メリハリのある物語」の描き方】を学びます。

※「ロープ」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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物語には「メリハリ」が必要!


物語には、「メリハリ」が必要です。

どれほどハラハラドキドキする名シーンだとしても、それが延々と続けば鑑賞者・読者は慣れてしまう。そして、やがて何も感じなくなってしまうでしょう。

では、どうすればハラハラドキドキし続けてもらえるのか?答えは簡単です。ズバリ、「鑑賞者・読者が安堵するシーン」を所々に配置すればいいのです。

スイカに塩をかけると、塩のしょっぱさのせいでスイカの甘味が際立って感じられると言いますが、要するにそれと同じですね。


そして「ロープ」においては……「ウィルソン」というキャラが「塩」の役割を果たしていると思うのです。

ウィルソンは中年女性。主人公(ブランドン、フィリップ)宅の家政婦です。一言で言えば「口うるさくて、おしゃべりなおばさんキャラ」。「大阪のおばちゃん的キャラ」と言い換えてもいいでしょう。


ここからは、「ウィルソンが、いかにストーリーにメリハリをもたらしているか」を具体的にご説明しましょう。


<「ロープ」のあらすじ>

1:「自分たちは選ばれた人間だ。殺人すら許される」というエリート思想に憑りつかれた2人の青年(ブランドン、フィリップ)が、大学時代の同級生(デイヴィッド)を絞殺。遺体をチェストに詰め込む。

2:ブランドンは強気で自信満々。一方フィリップは比較的弱気で、殺人を後悔し、発覚を恐れている。

3:彼ら(主にブランドン)はさらなるスリルを求めて、パーティを開催。デイヴィッドの両親らを招く。そしてパーティ会場(2人の自宅)には、遺体入りのチェストを置き、テーブル代わりに使うなどする(なんと悪趣味な!)。

4:パーティ中にアレコレあって……ルパート(参加者の1人。ブランドンらの大学時代の恩師)が2人の凶行に気づく。最終的に彼が警察を呼ぶところで、物語は幕を閉じる。


シーン①


本作は、ブランドンとフィリップが、デイヴィッドを絞殺するシーンから始まります。殺人後、ブランドンは大興奮。「自分たちは選ばれた人間だ!殺人すら許される!」「殺人は芸術だ!」などと滔々と語ります。

ところが、映画開始から約12分経ったところで呼び鈴が鳴る。買い物に出かけていたウィルソンが帰ってきたのです。

ブランドンは話を中断し、彼女を出迎えてやります。


ウィルソンが部屋に入ってくる。直後、彼女はニコリともせずにペラペラと話し始める。

曰く、「タクシー代2ドル40セントの貸しよ。チップ込みでね!ハァ。道が混んでいなければ30分前には着いていたのに」。

曰く、「パテを探して5軒も店を回ったのよ。でもどこも高くてね。お金をかけるのもどうかと思ったもんだから(ここでウィルソンは笑みを浮かべる)、わざわざダウンタウンまで行って、カデルさんの行きつけの店で買ってきたのよ」。

曰く、「あー、それから、パーティのお遣いなんて、金輪際私は行きませんからね!」。


ご注目いただきたいのは、このシーンです。

上述の通り、本作は「殺人 → 歪んだエリート思想の開陳」というショッキングなシーンから始まります。鑑賞者は「おっ、一体何事だ!?」と画面に釘づけになるでしょう。

とはいえ、それがいつまでも続くようでは、鑑賞者は飽きてしまう。そこで……ウィルソンの登場です。

彼女が登場したことで、雰囲気が緩みます。何しろ、彼女の第一声は「タクシー代2ドル40セントの貸しよ」ですからね。「殺人は芸術だ!」といった高尚(?)な話とは打って変わって、どうにも現実的。

鑑賞者はこのギャップにホッとし、またクスリと笑ってしまうのです。

まさに、ウィルソンが「メリハリ」をもたらしたと言えるでしょう。


シーン②


続いて、映画開始から約17分たったところで挿入されるシーンをご紹介しましょう。

ブランドンが「ルパートも招待したよ」と話す。

フィリップは取り乱します「どういうつもりだ!彼は頭が切れる男だ。犯行がバレてしまうぞ!」。

対するブランドンは笑みを浮かべて「彼は我々と同じで、芸術的な視点から物事を見ている」云々と反論。以降しばらく堅苦しい議論が続き……ブランドンが言った「ルパートは優秀な男だ。しかし我々のように殺人を犯す勇気はない」。


と、そこにウィルソンがやってきます。

彼女は「ルパートには勇気がない」という言葉だけが耳に入ったようで、「いいえ、ルパートさんは勇敢よ。だから戦場で名誉の負傷をしたの」と話に割り込んでくる。

さらに、「フィリップさん、袖にサラダが付いているわよ」と一言。


このシーンです。

すなわち、話に強引に割り込んできて、そして親切(≒ お節介)な言葉を発する。この「大阪のおばちゃん的言動」によって場が緩み、物語に「メリハリ」がもたらされていることがご理解いただけるかと思います。


「大阪のおばちゃん的キャラ」をぶちこんでみよう!


以上、「ウィルソンが、いかにストーリーにメリハリをもたらしているか」をご説明してきました。


「シリアスなシーンが続いているなぁ」「どうもメリハリを欠くなぁ」と感じたら、思いきって場違いな「大阪のおばちゃん的キャラ」をぶちこみ、場の雰囲気を緩めてみる!

なかなか有効なテクニックだと思います。ぜひ試してみてくださいねー!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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