相手が口にした「名言・格言」にいちゃもんをつけることで、反論したり皮肉ったりする ~映画「レディ・バード」の場合
◆概要
【相手が口にした「名言・格言」にいちゃもんをつけることで、反論したり皮肉ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「レディ・バード」
▶1
本作の主人公は、レディ・バード(女子高生)。
本名は「クリスティン」だが、彼女は自らをレディ・バードと称し、家族や友人にもそう呼んでほしいと頼んでいる。
ある日、
・Step1:同級生のジェナと話していた時のことだ。
・Step2:レディ・バードが言った「私、サクラメントを脱出したい……」「退屈で死にそう。こんな辺鄙なところうんざりよ」。――彼女はカリフォルニア州サクラメントで生まれ育った。しかし故郷サクラメントを嫌っている。「退屈な田舎町からさっさと脱出したい!」「私は都会の大学に進学するのよ!」というわけだ。
一方、
・Step3:ジェナは言った「こんな言葉があるわよ。『シンク・グローバル、アクト・ローカル(Think globally, act locally)』ってね」。
※補足:これは、環境保護や都市計画、教育など、様々な分野で用いられるコンセプトおよびキャッチフレーズである。日本語では「地球規模で考え、足元から行動せよ」と訳されることもある。
つまり、
・Step4:ジェナは故郷サクラメントを愛しており、大人になってもこの町に住みたい、この町で活動(アクト)したいと言っているわけだ。
・Step5:それに対してレディ・バードは「……それを言った人、サクラメントで暮らしたことないと思うよ」。――「サクラメントの退屈さを知っていたら『足元から行動せよ』なんてことは言えない。とっとと都会に逃げ出したくなるはずよ」という皮肉だ。
▶2
ご注目いただきたいのは、「……それを言った人、サクラメントで暮らしたことないと思うよ」というレディ・バードのセリフである。
要するに「こんな田舎町でアクト(活動)するなんてうんざりよ!」と反論しているわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【相手が口にした「名言・格言」にいちゃもんをつけることで、反論したり皮肉ったりする】という技法の出番だ。
改めて一連のやりとりをご覧いただきたい。
まずはジェナが「こんな言葉があるわよ。『シンク・グローバル、アクト・ローカル』ってね」。それに対してレディ・バードは「……それを言った人、サクラメントで暮らしたことないと思うよ」。
「こんな田舎町でアクト(活動)するなんてうんざりよ!」と言うのと比べて、ぐっとおしゃれでウィットに富んだセリフになったといえるだろう。