「赤き着物」って何?「白き着物」って何?|『関東無宿』に学ぶテクニック
名作映画を研究して、創作に活かそう!
本記事では、「関東無宿」に【「ヤクザもの」にぴったりの演出】を学びます。
※「関東無宿」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
---🌞---
【Point①】赤き着物 or 白き着物
「しきしまの/大和男子の/行く道は/赤き着物か/白き着物か」
※大和男子:「やまとおのこ」と読む。
これ、作中に複数回登場するフレーズです。「赤き着物」と「白き着物」が何を指しているか、おわかりになりますか?
答えは……「赤き着物」は囚人服、「白き着物」は死装束のことです。
つまり意訳すると、「大恩ある組や親分のためなら、その先に『牢獄』、はたまた『死』しかなくとも喜んで突き進め。それがヤクザの生きる道だ」という具合。
「『人情』よりも、『義理』を重視すべし」というヤクザの規範・美学を表す言葉と言えるでしょう。
※人情:個人的な感情や人間関係のこと。愛する女性への気持ちが典型例。
※義理:ヤクザとして求められるあり方。一般的には、組や親分に報いること。
ちなみに、この「赤き着物 or 白き着物」という比喩表現は、他のヤクザ映画にも登場します。
例えば、ヤクザ映画の古典「人生劇場 飛車角と吉良常」には、以下のセリフがあります。
「やくざの行く先は、赤い着物か白い着物……それ以外にねぇよ」
【Point②】醤油の小皿
本作の中盤、勝田(主人公)が、イカサマ師と花札で対決するシーンがあります。ざっくりご紹介しましょう。
※イカサマ師:賭博をする際、イカサマをする者のこと。
勝田の対戦相手は、名の知れたイカサマ師です。
彼は、「鏡面仕上げのライターや煙草入れを自分の前に置き、そこに札を映して読む」というイカサマをしていました。
しかし、勝田はその手口を知っていた。
ゆえに、勝田には通じない。
勝田が勝利を重ね、イカサマ師は追い詰められていきます。
と、そこに、1人の女が寿司桶を持ってやってきました。彼女は言った「弥助でも召し上がって、ひと息お入れになっては」。
※弥助:「やすけ」と読む。握り寿司のこと。
しかし、勝田もイカサマ師も手を止めようとはしません。2人は茶を飲み、寿司を食いながら勝負を続ける。
ところがここに来て、急にイカサマ師が調子を上げ始めた。そしてあっという間に勝田はあり金をすべて失い、敗北してしまいます。
じつは……寿司桶を持ってやってきた女は、イカサマ師の相棒。
イカサマ師は、「小皿に注いだ醤油に札を映して読む」というイカサマをしていたのです。
---
というこのシーンなのですが……いかがでしょう。「小皿の醤油に札を映す」というイカサマが、じつにいいと思いませんか?
ハリウッドのスパイ映画のような、壮大なタネではありません。
生活感があると言うか……ちょっと貧乏臭い感じがする。しみったれており、小物臭い。
そしてですね、その貧乏臭さ、小物臭さが「ヤクザ v.s イカサマ師」という対決にマッチしていると思うんですよ!
関連記事
▶ 「もう1つ別の要素を加える」ことで、物語を盛り上げるテクニック!!|『関東無宿』に学ぶテクニック
---🌞---
関連
---🌞---
最新情報はTwitterで!
---🌞---
最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)