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進め!僕らの百合柔道部!!|『がんばれ!ベアーズ』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「がんばれ!ベアーズ」をベースに新しい物語を妄想します。

※「がんばれ!ベアーズ」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「がんばれ!ベアーズ」は、いまは落ちぶれた元プロ野球選手が、問題児だらけの少年野球チームの監督になり、選手と共に奮闘するコメディ映画ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「元高校球児の主人公が、不良ばかりの高校野球部の顧問になり、部員と共に奮闘する物語」、「元スイマーの主人公が、クセのある老人ばかりの水泳チームの監督になり、選手と共に奮闘する物語」の2案でした。


案③


嘉村 「案③」にまいりましょう!

三葉 「案③」は、「元柔道家の主人公が、問題児ばかりの女子柔道部の顧問になり、部員と共に奮闘する物語」です。


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三葉 さて詳細をご説明する前に、ここで一度「がんばれ!ベアーズ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。


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三葉 ……です(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 では「案③」に戻りまして……舞台は女子高の柔道部。

嘉村 あっ、女子高なんですね。

三葉 ええ。「案③」は百合テイストの作品なので。

嘉村 えっ、百合!?


三葉 おっ、興味湧いてきました?

嘉村 いや、そういうわけではありませんが……。

三葉 と言っても堂々性行為が描かれる「ガチ百合」ではなくて、仲よしな女の子同士のやりとりを楽しむ「ソフト百合」ですが。

嘉村 ふむ。

三葉 それから……柔道ですからね。寝技をする中で思わず胸に触れてドキドキするとか、間違ってキスしちゃうとか、そんなサービスシーンもいくつかあって。

嘉村 ……それ、大丈夫なんですか?

三葉 何がです?

嘉村 いや、「柔道を冒涜している」とか怒られません?

三葉 「テニプリ」が許されるなら、それくらいかわいいものだと思いますけどねぇ。


嘉村 そういやそうか……。

三葉 とまぁ、そんな「ソフト百合」作品だとご認識ください。

嘉村 承知しました。

三葉 さて、本作の主人公は「大学時代には名選手として知られ、将来を嘱望されていたものの、試合で負傷して現役引退。いまはしがない体育教師。柔道なんてもう二度としたくない……っていうか体を動かすのも面倒くさい。仕事も面倒。彼氏を作るとか、友だち付き合いとか、そういうのも全部面倒」とだらけきったAさん、27歳。

嘉村 うーむ……。

三葉 物語は、そんなAさんが「やる気は超高校級。実力は小学生未満」の弱小柔道部の顧問に就任するところから始まります。

嘉村 なるほど。……でもアレですね。

三葉 何です?

嘉村 Aさんはもう二度と柔道なんてやりたくないと思っているんですよね?それに随分ものぐさなようだし……よく顧問を引き受けましたね。

三葉 ええ。じつは先日ちょっとしたミスをやらかし、その埋め合わせとして引き受けたんですよ。

嘉村 ほぉ。ミスというのは?

三葉 体育準備室に隠していた同人誌が生徒に見つかってしまったんです。

嘉村 ……。

三葉 それだけならまだしも、彼女は運が悪かった。

嘉村 ……。

三葉 第一に、ジャンルが悪かった。ハードなBLものだったんですよ。

嘉村 ……。

三葉 第二に、相手も悪かった。

嘉村 ……誰だったんです?

三葉 PTA会長の息子に見つかったんですよ。

嘉村 あー……。

三葉 そりゃもう大騒ぎですよ。すぐさまPTA会長が学校にねじ込んできて、「教育者としてうんたらかんたら」、「人間としてもあーだこーだ」。

嘉村 ふむ。

三葉 校長が必死に庇い、どうにかこうにか穏便に収まりましたが……その後、校長が静かに「Aさん」「はい……」「借りを返さない人間をどう思うかね?」「えっ……?」「……」「その……人間のクズだと思います」「ところで今日、私はきみに大きな貸しを作ったつもりなんだがどう思うかね?」「あっ……はい……私もそう思います」「柔道部の顧問の件、これまで何度頼んでも断られていたけど、改めて頼もうかな」「……いえ、その必要はありません」「よろしい」……なんてやりとりがあって、彼女は顧問に就任したのです。

嘉村 なるほど。納得しました。

三葉 とまぁ、そんな具合ですからね。Aさんには、真面目に指導しようなんて気はない。一方、上述の通り、部員らはやる気はあるけれど実力は下の下です。

嘉村 ふむ。

三葉 しばらくして近隣の高校と練習試合をしますが……ズタボロに敗北する。やる気ゼロのAさんは、大敗しようがどうしようが何とも思っていなかったのですが……部員らはあまりの負けっぷりにショックを受ける!

嘉村 まぁ、そうでしょうねぇ。

三葉 彼女たちは肩をぶるぶる震わせ、必死に涙をこらえている……これにはさすがのAさんもハッとします。

嘉村 おっ!

三葉 かくしてAさんの熱血指導が始まったのです!

嘉村 なるほどねぇ。

三葉 例えば、部員の体格や性格に合った技を伝授したり。

嘉村 ふむ。

三葉 あるいは、昨年のインターハイを録画した映像を入手して、試合を1つ1つ解説してみせたり。

嘉村 ふむふむ。

三葉 また、自宅でもできる筋トレを教えたり。

嘉村 なるほど。

三葉 こうした努力の甲斐あって、部員らは徐々に力を蓄えていきます。そして目標が生まれる。すなわち、インターハイ出場です。

嘉村 いいですねぇ。青春って感じです。

三葉 ところが……Aさんは次第に勝利至上主義に陥っていく。

嘉村 ほぉ!

三葉 成長期の高校生には無茶なトレーニングをさせたり。

嘉村 うーむ……。

三葉 「いいか。背負い投げに入るときには、相手のアゴに一発アッパーをお見舞いするんだ。技をかける中での不幸な事故ってことで、問題にはならねぇから安心しな」なんてダーティな指導をしたり。

嘉村 ……。

三葉 彼女らは勝ち抜き形式の団体戦に出場しているのですが、「なぁ、B子。あんたの相手は強敵だ。あんたじゃ勝ち目がない。だから、決して勝とうとするな。勝とうとして技をかけにいくと、どうしたって隙が生まれる。相手はその隙を見逃すような素人じゃないからね。……いいね。相手の体力を奪うことだけ考えるんだ。あんたが疲弊させて、C子で仕留める。これでいこう」なんて、合理的ではあるものの、選手にとってはなかなかどうして受け入れがたい指示を出したり。

嘉村 ふーむ……。

三葉 こうして彼女たちは勝ち進みますが、それと反比例してチームの雰囲気は悪化の一途をたどっていきます。

嘉村 なるほど。

三葉 そして、インターハイ出場がかかった予選の決勝戦。ふとしたことから、Aさんは気づく……部員からやる気が失われ、チームとしてのまとまりもなくなっている!

嘉村 ふむ。

三葉 彼女は、それまでの自分のやり方が間違っていたことに気づきます。勝利も大切だ……しかしもっと大切なことがある!それは「スポーツマンシップに則ること」とか、「対戦相手に感謝すること」とか、「試合を楽しむこと」とか……そして何よりも、「喜びも悲しみも分かち合える仲間を持つこと」!

嘉村 ふむふむ。

三葉 Aさんはそれまでのラフでダーティな指示を取り消し、「練習の成果を発揮することだけに集中するんだ。勝ち負けなんて時の運だからね」と微笑む。そして試合に負けた部員にも、「よくやった!いままでで一番いい試合だったよ」と声をかける。

嘉村 なるほど。

三葉 最終的にインターハイ出場は逃しますが……。

嘉村 チームの雰囲気が改善した。つまり、インターハイに出場するよりももっと大切なものを手に入れたわけですね。

三葉 はい。で、ハッピーエンド!

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて最後に、以上のストーリーを「がんばれ!ベアーズ」と比較して整理しましょう。


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案④


嘉村 続いて、「案④」にまいりましょう。

三葉 はい。「案④」は「元マンガ家の主人公が、問題児ばかりのマンガ研究会の顧問になり、部員と共に奮闘する物語」です。


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三葉 早速ですが、「がんばれ!ベアーズ」との対比表をご覧ください。


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三葉 「元プロ野球選手」の代わりに「元マンガ家」、そして「問題児だらけの少年野球チーム」に対して「問題児だらけのマンガ研究会」です。

嘉村 なるほど。

三葉 大きな流れは「案③」と同様なので割愛するとして……。

嘉村 ええ。

三葉 この「案④」の一番のポイントは、「『勝利至上主義に陥り、チームの雰囲気が悪化』の部分(前掲の表の『Step4』)をいかに表現するか」でしょう。

嘉村 と言うと……あっ、そうか!「案④」のテーマは「マンガ」。つまり、スポーツではないし、団体戦でもない。だから、「マンガの世界における『勝利至上主義』とは何か」をしっかり考える必要があるんですね。

三葉 ええ、その通りです。ところで、「マンガの世界における『勝負』や『勝利』」を描いた作品といえば、「バクマン。」がよく知られていますが……。


嘉村 ふむふむ。

三葉 「バクマン。」では、プロマンガ家が「ハガキの枚数 = 読者からの支持率」を巡って勝負します。これにより、「バクマン。」はスポーツマンガのような緊張感のある作品となっていますが……「案④」の舞台は高校のマンガ研究会。「バクマン。」式のやり方も使えません。

嘉村 確かに!

三葉 とはいえ、解決策はいくつかあるでしょう。

嘉村 ほぉ。

三葉 例えば……マンガ研究会で同人誌を作り、コミケに出展することにしましょう。主人公の指導により売上は伸び、ファンも増える。万事好調です。そんな中、主人公はより一層人気を伸ばそうとして……「勝利至上主義」ならぬ「読者人気至上主義」に陥る!

嘉村 ふむふむ。

三葉 そしてネット上のコメントをもとに、作品ごとの評判を割り出し、作者の意向を無視して続編を描くよう強要したり。

嘉村 おー。

三葉 逆に、強引に打ち切ったり。

嘉村 ふむ。

三葉 「あなたは『悪役令嬢もの』を描きなさい!流行には積極的に乗るべし!!」なんて指示を出したり。


嘉村 ははぁ……。

三葉 まぁ、そんな具合ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 で、最終的に主人公は「『勝利』 = 『売れるマンガを描くこと』以上に大切なこと」を思い出して、自分のあり方を反省するに至ります。

嘉村 「『勝利』 = 『売れるマンガを描くこと』以上に大切なこと」というのは?

三葉 舞台は高校ですからね。「青春を共に過ごす仲間」とか、「まず何よりもマンガを楽しむこと」とか、そんなところでしょう。

嘉村 なるほど!


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 「がんばれ!ベアーズ」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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