【歴史に学べ!】日本初の料理マンガのストーリーと、ストーリーのベースにある「対立構造」をチェック★|「突撃ラーメン」(1)
ラーメン!
ラーメン!
突撃ラーメン!
傑作マンガを分析・研究する「21世紀マンガスタディーズ」のお時間です。
本日取り上げるのは……刮目せよ!これが日本初の料理マンガだ!
望月三起也「突撃ラーメン」
<Amazon(有料)>
登場人物紹介
・清水:マスター・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。最も好きな必殺技は『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の「アバンストラッシュ」。
・三葉:清水とは中学からの友人。最近ハマっている曲は『とある科学の超電磁砲S』の「sister's noise」。I find it out...
まずは概要をチェック!
三葉「それではまいりましょう!」
清水「はい」
三葉「まずはざっくり作品のご紹介、その後、特に注目すべきポイントをご説明してまいります」
清水「1970年!」
三葉「ええ」
清水「ざっと……半世紀前のマンガ!」
三葉「その通り」
清水「んー……ぶっちゃけた話、どうなんです?面白いんですか?さすがに50年前の作品というのは……」
三葉「心配ご無用!爆笑必死!……というタイプの作品ではありませんが、いまでも十分イケると思いますよ」
清水「ほぉ!日本初の料理マンガですか!」
三葉「そうそう!料理マンガ……ここでは『グルメマンガ』や『食マンガ』も含めることにしますが……『美味しんぼ』、『クッキングパパ』、『孤独のグルメ』、『深夜食堂』、『ワカコ酒』、『ラーメン大好き小泉さん』、『ダンジョン飯』、『野原ひろし 昼メシの流儀』、『めしぬま。』、その他その他……これらすべての祖に当たるのが本作です!」
清水「おおっ!」
三葉「すごいでしょ!」
清水「うーむ……これは必読ですねぇ!」
※注:上記でご紹介した望月氏の著作はこちら。
※注:上記の長野編集長のエピソードについては、以下のサイトを参考にしました。
続いてキャラ紹介!
三葉「ここからは、本作の内容に踏み込んでまいります」
清水「主人公の錦がアクションスターというのがユニークですね」
三葉「既にご想像がついている方もいらっしゃると思いますが……本作はこの錦少年が料理の道を歩む物語です。ただ、物語開始時点ではアクションスター」
清水「ふむ」
三葉「で、主人公をアクションスターにしたのは、おそらく派手なアクションシーンを描くためです」
清水「ほぉ」
三葉「前述の通り、作者の望月氏はアクションマンガを得意とした方。料理マンガというわけのわからぬジャンルを開拓するにあたり(何しろ日本初の料理マンガですから!)、自身の得意技を持ち込もうと考えたのは自然なことだと思います」
清水「なるほどねぇ……一理ありますね。では、もしも望月氏がスポーツマンガを得意としていたら……」
三葉「おそらく主人公はスポーツ選手になっていたでしょう」
清水「ふむふむ。それでは、もし時代物を得意としていたら……」
三葉「舞台は江戸時代、主人公は武家の少年だったかもしれませんね」
清水「殺し屋マンガを得意としていたら……」
三葉「主人公はゴルゴ13だったかもしれません」
いよいよストーリー概要!
三葉「ここからはストーリーを見てまいりましょう。本筋のみをざっくりまとめています。詳細は、ぜひ実際に本作をお読みください」
清水「えっ!死ぬんですか!?」
三葉「ねぇー、びっくりですよね」
清水「はぁ……」
三葉「しかも殺されたとか、肉体的な暴力を受けたとか、そういうことではない……職人としての誇りを踏みにじられたから自死!」
清水「うーむ……職人としての強烈なプライドを感じさせるエピソードですねぇ」
清水「げっ!殴り込みですか!?」
三葉「そうそう!」
清水「しかも銃って……舞台は日本なんですよね?」
三葉「ええ、東京ですね」
清水「ハリウッド映画みたいだ……」
三葉「こういうストーリー展開が、アクションマンガの大家・望月氏の面目躍如といったところですね」
清水「おお!ついに始まった!錦はずぶの素人でしょ?まずは包丁の握り方を教わったりするんですかね!」
三葉「……と思いきや……」
清水「えっ……」
清水「うーむ……『自力で腕を磨く』って言ったって……ちゃんとした修行をせずに、こんなことで復讐は果たせるのでしょうか……」
三葉「心配になりますよねぇ」
清水「ええ……」
三葉「ところがどっこい!」
三葉「終劇!」
清水「えっ!」
三葉「ハッピーエンド!」
清水「えー!」
三葉「何かご不満でも?」
清水「いや、『不満』っていうか……急展開すぎません?」
三葉「ふむ……確かに読んでいて、『駆け足すぎるかも』とは感じました」
清水「いや、というか……竜玉師は名人なんですよね?前述しましたが、まともな修行もせずに勝利?……どうなんですか、それ?」
三葉「なるほど」
三葉「じっくり見てみましょう」
清水「お願いします」
清水「あー、なるほど。つまり、錦は屋台流のやり方で腕を磨いたというわけですね」
三葉「そうそう!そしてコレ、バトルマンガの主人公が道場やジムで鍛錬して強くなる……のではなく、日々の実戦の中で成長していくとか、訳のわからぬ特訓でレベルアップするとか、そういうのと同じ構図だと思うんですよ」
清水「ふむ、確かに」
清水「ふーむ……なるほど」
三葉「本作のベースには『庶民』と『一流』の対立構造がある……と考えると、ストーリーもグッと理解しやすくなりますよ」
清水「ほぉ」
三葉「上述の対立構造に注目して、改めてストーリーを見てみましょう」
三葉「こう考えると、『錦が伝統的な料理修行をするシーンが描かれなかった理由』は明確ですよね。だって、錦は『一流』に復讐をするんですよ。『一流』で修行してしまっては、本質的な意味で復讐とはいえないでしょう」
清水「うーむ、なるほど……『庶民』側の父の復讐である以上、『庶民』流のやり方で腕を磨くのが自然なことだ、と」
三葉「そうそう!」
清水「ふむ」
三葉「したがって、もし本作の続編を制作するならば……『一流』側から刺客が送り込まれてくるとか、錦以上の『庶民』派が登場するとか、そういう展開が適切だと思いますね」
<余談>
上述の対立構造は、同時期に『マガジン』で連載されていた『あしたのジョー』に通じるものがある。
簡単に申し上げると……『あしたのジョー』におけるジョーと西(ボクサーを辞めた後の西)の関係。あるいは、ジョーとホセ・メンドーサの関係。
ジョーはいつだって、紀ちゃんと結婚した西や、妻子を大切にするメンドーサが象徴していたもの……そう、「日常、幸福、家庭……すなわち高度成長を遂げる戦後日本そのもの」と戦ってきた。そして最後の戦い……ジョーはそれに敗北するのだ!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)