キャプションを工夫して、鑑賞者のドキドキを高めていくテクニック!!|『シャイニング』に学ぶテクニック
名作映画を研究して、創作に活かそう!
本記事では、「シャイニング」に【クライマックスに向けて、鑑賞者のドキドキを高めていく方法】を学びます。
※「シャイニング」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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「キャプション」に注目!!
本記事で注目するのは、作中に表示される「キャプション」です。
ご覧の通り、背景色は黒、文字色は白。シンプルながら目立つ組み合わせですよね。
そしてこれが、1回あたり約3秒間画面いっぱいに表示される。つまり鑑賞者は、3秒間じっとキャプションを見つめることになるのです。3秒といえば決して短い時間ではありません。
要するに……「シャイニング」のキャプションには、かなりインパクトがあるのです。注意力散漫な人でも、「ほぉ、いまは火曜日なのね」と記憶に残るでしょう。
キャプションの内容
作中、キャプションは8回表示されます。
いつ、どのようなキャプションが表示されるのか見てみましょう。
以上8個のキャプションは、4つのタイプに分けられるでしょう。
【タイプ①】作中の出来事に関するキャプション
・1個目:「THE INTERVIEW(インタビュー)」
・2個目:「CLOSING DAY(ホテル閉鎖の日)」
※補足:「THE INTERVIEW」は、日本語字幕では「インタビュー」と訳されることが多いようです。しかし、「採用面接」とした方が適切かなという印象です(英語の「interview」には「採用面接」という意味があります)。ここでは、ジャック(主人公)が採用面接を受け、合格する様子が描かれています。
【タイプ②】月(month)単位のキャプション
・3個目:「A MONTH LATER(1か月後)」
【タイプ③】日(day)単位のキャプション
・4個目:「TUESDAY(火曜日)」
・5個目:「SATURDAY(土曜日)」
・6個目:「MONDAY(月曜日)」
・7個目:「WEDNESDAY(水曜日)」
【タイプ④】時間(hour)単位のキャプション
・8個目:「4pm(午後4時)」
ここでご注目いただきたいのは、「①時間要素のないキャプション」→「②月(month)単位のキャプション」→「③日(day)単位のキャプション」→「④時間(hour)単位のキャプション」という具合に、「時間の幅」がぐんぐん狭まっていくという点です。
まとめ:「『時間の幅』を狭め、鑑賞者のドキドキを高める」というテクニック
はて。「時間の幅」が狭まっていくことに、どのような意味があるのでしょうか?
例えば……「TUESDAY(火曜日)」というキャプションが表示された時、多くの鑑賞者はドキッとするでしょう。
というのも、1つ前は「A MONTH LATER(1か月後)」でした。ところがここに来て、「日(day)単位」のキャプションが表示された!いよいよ物語が佳境に入るわけだな……と鑑賞者は直感し、胸の鼓動が高まるわけです。
さらに「4pm(午後4時)」というキャプション。1つ前までは「日(day)単位」だったのに、ついに「時間(hour)単位」!
ここから24時間以内にヤバイことが起こるに違いない!さあ、いよいよクライマックスだ!!……と考え、鑑賞者の緊張は最高潮に達するのです。
つまり「シャイニング」には、【キャプションの「時間の幅」を次第に狭めていく → クライマックスが近づいていることを鑑賞者に伝える → 鑑賞者のドキドキを高める】というテクニックが使われているのです。
補足
「シャイニング」には、いくつかのバージョンがあります。
本記事で分析したのは、「ヨーロッパ版(European Version)」(上映時間119分)。日本では、一般的にこちらが知られています。
一方、アメリカなどで流通しているのは、「北米版(US version)」(上映時間143分)。
ご覧の通り、「ヨーロッパ版」と「北米版」では上映時間が大幅に異なっています。ゆえに、作中に表示されるキャプションの数も違う。
しかし、「『時間要素のないキャプション』→『月(month)単位のキャプション』→『日(day)単位のキャプション』→『時間(hour)単位のキャプション』という具合に、『時間の幅』がぐんぐん狭まっていく」という点は、共通しています。
※「北米版」については、デイヴィッド・ヒューズ「ザ・コンプリート キューブリック全書」を参考にしました。
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(担当:三葉)