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「もう1つ別の要素を加える」ことで、物語を盛り上げるテクニック!!|『関東無宿』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「関東無宿」に【「AとBの対立」を上回る第三極を加えることで、物語を盛り上げるテクニック】を学びます。

※「関東無宿」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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「ルール」を守る者、「ルール」を破る者、そして……


本作の主人公は、ヤクザの幹部・勝田。

彼は、仁義を重んじる男です。


一方、彼の周りにいるヤクザ(親分、子分ら)は、金のためなら何でもする連中。仁義なんて、あっさり無視してしまう。

まぁ、仁義だ何だと言っても、金がなくては話になりませんからね。

とはいえ、勝田は気に食わない。「ヤクザって、そんなもんじゃないだろ!」と苦々しく思っている。


つまり本作には、【「ヤクザとしてあるべき姿 = ルール」を守る者 v.s 「ルール」を破る者】という対比が描かれているのです。


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そしてこの対比は、ヤクザ映画ではお馴染みのものです。

・1:主人公は、「ルール」を守るいいヤクザ

・2:彼らは、「ルール」を破る悪いヤクザにひどい目に遭わされる

・3:最終的に、主人公が悪いヤクザをぶちのめして、ハッピーエンドを迎える

……なんて具合です。


しかし、本作はこれにとどまらない。第三極とでも呼ぶべき、もう1つの要素が登場するのです。

本記事では、第三極を担う「花子」というキャラに注目します。


花子の概要


▶ 名前:花子

性別:女性

職業:女学生(おそらく女子高生)

家庭環境:崩壊している(母がおらず、父とは上手くいっていない)。

▶ 相貌:美人(「シャンだ」と評されている)


花子の作中での言動


続いて、花子の作中での言動を見てみましょう。


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……かなり突飛なキャラですよね。


「この子、バカなんじゃないの?」「頭がおかしいんじゃないの?」と感じた方もいるでしょう。

しかしですね、おそらくそれは違います。

花子は、むしろ賢い子だと思うのです。


例えば、こんなシーンがあります。

とあるチンピラが興奮気味に叫んだ「敵対する組の親分を殺してやったぜ!10年もすれば出所できるだろう。出所したら、オレは幹部だ!」。

それを聞いた花子は、鼻で笑った「あんた、間抜けねぇ。10年も経てば、ヤクザの世界だって世の中だって変わっているのよ。アホらしいったらありゃしない」。

チンピラは言葉を失う。


そう、花子は物事を冷静に見極めることができるキャラなのです。

彼女がアウトサイダーの世界に入っていったのは、バカだからではありません。「考えなしのガキが堕ちていった」と考えるのは誤りです。


彼女は「自由」。「ヤクザの女になるなんてバカだ」「美人局をするなんて頭がおかしい」といった世間一般の価値観・倫理に囚われたりはしない。

自分の興味関心に従い、人生を楽しんでいるだけなのです。


「ルール」に囚われない者!


さて、本記事の冒頭でご紹介した「対比」を思い出してください。


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勝田の周りのヤクザは、ヤクザが守るべき「ルール」を破る連中、言わばルールブレイカーです。


しかし、ですよ。そんな彼らも、花子と比べれば甘い甘い。

ルールブレイカーと言えども、所詮はヤクザ。ヤクザという枠組みの中で生きていることに変わりはない。実際彼らは、他のヤクザと殺し合いをしたり、その結果警察に捕まったりしていますからね。


対する花子は……自由!


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花子という第三極の存在が、本作をユニークなものにしている……それと同時に、多くの鑑賞者を混乱させているように見えます(いわゆる「ヤクザもの」を期待する人にとっては、花子の存在が余計なものに感じられるでしょう)。


「AとBの対立」を上回る第三極を加えることで、ユニークな物語を作る……ぜひ試してみてくださいねー!!


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(担当:三葉)

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