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その時、ぼたんはおっとり温厚なお嬢様らしからぬ行動に出た!|『あんハピ♪』(4)

 本記事は、アニメ「あんハピ♪」を徹底分析する特集の……第4回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 ここまで、はなこ(第2回)、そしてヒバリ(第3回)の人となりをご紹介してきた。


 今回は……ぼたん

 彼女の「スペ体質」や「おっとり温厚な性格」、あるいは「コミュニケーションスタイル」に注目する。


※ぼたん。


ぼたんはスペ体質である


 「あんハピ♪」は、様々な「不幸」を抱えた女子高生たちの日常を描いた作品だ。

 そこで、まずはぼたんがどのような「不幸」を抱えているか確認しておこう。


 作中、彼女の「不幸タイプ」は「不健康」と説明されている。

 文字通り、「虚弱体質」という意味だが……これが想像を絶する虚弱さなのだ。

 握手すれば手の骨が折れ、身体測定で前屈すれば腰の骨が折れる。さらに縄跳びの縄がぶつかっただけで足の骨が折れる。


 無論、彼女の虚弱さは骨の脆さに限らない。

 例えば、5m走れば疲労のあまり倒れ込むという具合である。


 これはもう「不健康」とか「虚弱体質」とかいうレベルではない!

 「スペ体質」というのがしっくりくると思う


 視聴者の大半が感じたことだと思うが……まったく、よくぞ高校生になるまで生きていられたものである。


※OPの「きららジャンプ」中、1人だけ挙動がおかしいぼたん。


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 なお、この「不健康」に関連するトピックとして……ぼたんは「医療に関する豊富な知識とスキル」を持っている


 幼い頃から「不健康」であったことに加えて、父が病院長を務めているため、彼女は薬などに関する知識が豊富なのだ。

 いつも薬箱を持ち歩き、ケガした時には自分で処置を行っている。


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 ところで、ぼたんはしょっちゅうケガをしているが……超スピードで回復するのがお約束となっている

 骨が砕けようとも、数分後には元通り。


 この超高速の回復が、上述の処置によるものなのか(特殊な処置を施している?)、それとも彼女の体質によるものなのか(超人的な回復力の持ち主?)、大変気になるところではあるが……残念ながら本作では明言されていない。


【特徴①】おっとり温厚で、成績優秀なお嬢様


 続いて、ぼたんというキャラの人物像を見ていこう。


 彼女の人となりは、基本的に理解しやすい。

 つまり、フィクションの世界ではお馴染みのキャラだ(「ストックキャラクター」と言ってもよいと思う)。


 まず、彼女はおっとり温厚だ。のんびりした口調で、いつも穏やかに微笑んでいる。

 また、作中にそれらしいエピソードは見当たらないが……設定上は成績優秀者である。

 さらに、実家は金持ちだ。


 いかがだろう。

 「おっとり温厚で、成績優秀なお嬢様」……女の子が複数登場するアニメやマンガを思い返してみると、ぼたんに似たキャラが見つかるのではないだろうか。

 例えば、「らき☆すた」の高良みゆきはかなり似通ったキャラに見える。


※はなことヒバリのスキンシップを見て、頬を染めるぼたん。こうした仕草から、「けいおん!」の琴吹紬を想起した視聴者もいると思う。彼女も「おっとり温厚で、成績優秀なお嬢様」キャラだ。


【特徴②】自虐風コミュニケーション


 では、ぼたんはありふれたキャラなのかというと……それは違う!

 彼女には、類似キャラにはない2つの独自性がある。


 第1に、上述の「スペ体質」。

 「虚弱なお嬢様」というのは古典的なテンプレキャラだが、ここまで悲惨な例はそうはないはずだ。


 そして第2に、「自虐風コミュニケーション」!

 まずは、具体的なエピソードをご紹介しよう。


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 高校の入学式の日。

 出会ったばかりのはなことヒバリが教室で話をしていると、近くの席に座っていたぼたんが不意に微笑む。

はなこ、ヒバリ「ん?」

ぼたん「あっ、ごめんなさい。お2人のお話がとても楽しく、つい。フフッ」

ヒバリは恥ずかしそうに「あっ……いやぁ」

ぼたん「人様の会話を盗み聞きした上、こんな得体の知れない気持ち悪い女が笑っていて、さぞご気分を害されたでしょうね」

ヒバリは困惑して「いや……そこまでは思ってないけど……」

ぼたんは満面の笑みで「まぁ!では、こんな私を法に訴えないでいてくださるんですか!?きれいな方だと思ってましたが、まさか天使だなんて!」

ヒバリはやっぱり困惑「はぁ……」

ぼたん「私は久米川牡丹と申します。名前負けする病弱なダメ人間ですが、どうぞよろしくお願いしますね、ヒバリさん」


※右上:「まぁ!では、こんな私を法に訴えないでいてくださるんですか!?」と自虐するぼたん。


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 あるいは、遠足(「開運オリエンテーリング」)中、はなこの姿が見えなくなった時のことだ(第6話)。


 ぼたんは、「はなこは弁当を食べるのに使ったスプーンを洗いに行き、そのまま川に落ちたのではないか」と推理する。

ぼたん「どうしましょう……私がはなこさんをしっかり引き止めておけば!昔からそうなんです。母譲りの病弱のせいで、自分のことだけで精一杯になってしまって……。開運オリエンテーリングだというのに、グズでノロマでマヌケで亀で、人間の失敗作のような私が無理矢理ついてきたから!ああ!はなこさんがどこかで不幸な目に遭っていたらと思うと……!ああっ!」

 ぼたんは悲嘆に暮れる。

ヒバリが励ます「まだ何かあったって決まったわけじゃないでしょ!」

ぼたんは急に冷静になって「でも、あのはなこさんですよ?」

ヒバリが言葉を失う「……」


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 ご覧の通りの自虐っぷりである!


 ところで、公式サイトのぼたんの紹介欄には、「おっとりとしたにこやかなお嬢様タイプだが、自身のこととなると超ネガティブ」と記載されている。


 なるほど。確かに、ぼたんは「超ネガティブ」に見える!

 ……が、それでは彼女が本当にネガティブ思考の持ち主で、自身を卑下しているのかといえば、それは違うだろう。


 例えば前掲の2つ目のエピソードを改めてご覧いただきたい。

 すなわち……ひとしきり自虐した後、ヒバリに「まだ何かあったって決まったわけじゃないでしょ!」と励まされると、すぐに冷静になって「でも、あのはなこさんですよ?」と切り返し、ヒバリがその的確すぎる指摘に沈黙する。


 文章ではわかりづらいかもしれないが……完全にギャグシーンである。

 ぼたんが本当にネガティブならば、こうはいかないだろう。

 冷静な口調で「でも、あのはなこさんですよ?」なんて言えるはずがない。

 最悪の事態を想定し、いつまでも嘆き悲しむはずだ。

 

 つまり、ぼたんの「自虐」は、彼女なりのコミュニケーションスタイルと理解すべきだと思うのだ。


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 世の中には様々なコミュニケーションのスタイルがあって、例えば隙あらば人を笑わせようとボケまくる人もいれば、噂話が大好きな人もいる。


 しかし、それではボケまくる人は根っからの陽性で、いつも楽しいことばかり考えているかと言えば……そんなことはないだろう。

 同様に、噂話が好きな人が、いつでもどこでも噂ばかり気にしているかと言うと……それも考えづらい。


 そもそも、コミュニケーションスタイルとは「円滑な人間関係を築くための手段」である。

 ボケまくるのは「『楽しい人』と思われたいから」かもしれないし、噂話ばかりにするのは「沈黙が苦手で、何とか話題を作ろうと苦慮してのこと」かもしれない。


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 ところで、一体なぜぼたんが隙あらば「自虐」するような子になったのか考えてみると……彼女のスペックが高すぎるからではないだろうか。


 上述の通り、彼女は「おっとり温厚で、成績優秀なお嬢様」である。

 その上、顔立ちは美しく、胸のサイズも大きい。

 「不健康」というハンデがあるため「万能」とは言えないにしても、相当にスペックが高いことは間違いない。


 そんな彼女である。

 「近寄りがたい」と感じる人もいるだろう。

 嫉妬する人もいるに違いない。


 賢いぼたんは、幼い頃からそんな自分の立ち位置を理解しており、円滑な人間関係を築くために、「自虐」するようになったのではないかと思うのだ。


【追加考察】ぼたんは、なぜいの一番に飛び出したのか?


 ここまで、ぼたんは「おっとり温厚な性格をしている」と申し上げてきた。


 しかし!

 作中で1ヵ所だけ、そんな彼女らしからぬ行動をとるシーンがあるのだ。

 本記事の最後に、このシーンについて検討してみたい。


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 すなわち……夏休み前の定期テスト中のことである(第8話)。

 一般的な学力テストと合わせて、「不幸」を背負った7組の生徒には「特別幸福テスト」が課される。


 詳細は割愛するが……ぼたんらは、VR(バーチャル・リアリティ)の世界で、RPG風のバトルをすることになる。

 バトルは1対1で行われ、やがてはなこの順番が回ってくる。

 彼女の相手は……担任教師・小平先生だ。


 はなこは大苦戦!

 小平先生は「負けたら夏休み中は毎日補習よ」と言う。

 はなこはショックを受けるが、実力の差は明らかだ。


 小平先生が、とどめを刺さんと攻撃を放つ!

 はなこは、為すすべなく悲鳴を上げる。

 もうダメだ!はなこは敗北し、夏休みはなくなってしまうのだ!


 ……と思ったその時!

 観客席にいたぼたんが飛び出し、はなこの前に立つ!

 そして小平先生の攻撃を防御する!

小平先生「……試験中ですよ、久米川さん」

 ポカンとするはなこら。

ぼたんは勢いよく「困ります。……はなこさんが補習だなんて、そっ、そんなことになってしまったら……夏休み一緒に遊びに行けなくなってしまうじゃないですかー!」

ぼたんは泣きそうになりながら「もう全日程のスケジュールを考えて、お2人に相談しようと思ってましたのにー!」

はなこ「……そうなの?」

ヒバリ「気が早いわよ!」

ぼたんは毅然とした表情に戻り、小平先生に向かって「はなこさんと一緒に過ごせなくなるくらいなら、私もお供します!」

小平先生「……そうですか。では、お仕置きしちゃいましょう!」

 小平先生が攻撃態勢に入る。

はなこ「ぼたんちゃん……」

ぼたんが微笑む「死なばもろともです!」


 このあと、ぼたんに刺激を受けたヒバリらも乱入し、結局はなこら5人が力を合わせて小平先生と戦うことになるのだが……ご注目いただきたいのは、いの一番に飛び出したのがぼたんだということだ


※VR内で、小平先生と戦うぼたんら5人。

 

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 テスト中にも関わらず飛び出していき、そして小平先生の言葉にひるまず、「死なばもろともです!」と言い切る……この感情的な行動!

 私が見た限り、おっとり温厚なぼたんが、作中で唯一それらしくない行動を取ったのがこのシーンだ。


 では、一体なぜぼたんがそんなことをしたのかと言えば……それは、「普段はおっとり温厚な彼女が感情的になるほどに、はなこらと過ごす夏休みを楽しみにしていたから」だ。

 「それだけ、はなこらを大切な友人だと思っているから」と言い換えてもいいだろう。


 要するにこれは、「ここぞという場面で『そのキャラらしからぬ行動』を取らせることで、そのキャラがどれだけ強い感情を抱いているかを視聴者に伝える」というテクニックなわけだが……これがじつに効果的に機能していると思うのだ!

 「あんハピ♪」をこれから視聴するという方は、第8話のこのシーンを見逃さぬようにご注意ください★



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(担当:三葉)

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