驚き!冒険者パーティを追放された男は、その後何をしたか?|『結婚しない女』(3)
テーマ発表!!
第1回、第2回に引き続き、映画「結婚しない女」をベースに新しい物語を妄想します。
※「結婚しない女」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 「結婚しない女」は、夫から突然離婚を切り出された中年女性が、「絶望」「男性不信」「男遊び」などを経て、1人の人間として自立するに至る物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!
三葉 承知しました。
嘉村 前回ご紹介したのは、「『結婚しない女』 ~『女子高生』編」でした。
案②
三葉 まずは、「結婚しない女」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 さて「結婚しない女」にしろ、前回ご紹介した「案①」にしろ、恋愛・結婚をテーマにした物語ですが……。
嘉村 ええ。
三葉 「『結婚しない女』のストーリー構造」は、恋愛要素のない物語にも適用可能でしょう。
嘉村 ほぉ。
三葉 ということで「案②」は……ズバリ!「『結婚しない女』 ~『パーティ追放』編」です。
嘉村 パーティ追放……?
三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は若い男性です。ある日、彼はトラックに轢かれて死亡。異世界に転生した。
嘉村 つまり、「異世界転生もの」ですね。
三葉 そうですね。主人公が辺りを見回すと……そこは「剣、魔法、ドラゴン、中世ヨーロッパ風の街並み」といった世界。おお、異世界である!主人公は感激した。
嘉村 ふむふむ。
三葉 というのも、彼の趣味はラノベやアニメ。常日頃から「異世界に転生して、冒険者パーティに入る。そして大活躍して、ハーレムを築いちゃったりして……あー、いいなぁ!オレも転生してぇよ!」なんて考えていたのです。
嘉村 なるほど。
三葉 主人公は転生後ほどなくして、冒険者パーティに加入しました。それは出来立てホヤホヤのパーティ。メンバーはひよっこばかりですが……なぁに、問題ない。これから成長すればいいのだ。幸い、メンバーは皆フレンドリーで、かつ向上心が強い。共に切磋琢磨すればいい。
嘉村 ふむ。
三葉 かくして、主人公は仲間と共に旅に出ました。彼らは多くのクエストをこなし、次第に成長していく。主人公は充実した日々を過ごします。
嘉村 ふむふむ。
三葉 さてここで一度、「結婚しない女」と「案②」の比較表をご覧いただきましょう。
嘉村 なるほど。
三葉 それでは話を戻して……主人公が属するパーティは、次第に頭角を現し、赤丸急上昇のチームとして知られるようになりました。ところが……嗚呼、一体どうしたことか!?仲間がグングン腕を上げていく中、主人公だけはグズのまま。剣を振ればあまりにのろく、魔術はほとんど使えない。
嘉村 うーむ。
三葉 主人公は肩身が狭い。そしてしばらくして……ついに、恐れていたことが現実になってしまった。すなわち、ある日剣士が申し訳なさそうに切り出したのです「言いにくいんだけどさ、パーティを……抜けてくれないか?」。
嘉村 あー……。
三葉 主人公はショックを受ける「えっ……えっ!?まっ、待ってくれよ。ここまで一緒に旅してきた仲じゃないか!確かにオレはグズだが、しかし頑張るから……」。
嘉村 ふむ。
三葉 主人公の懇願に対して、魔法使いは鼻を鳴らしました「やれやれ。お前が頑張ろうが頑張るまいが、そんなことはどうでもいいんだよ。大切なのは結果さ」。格闘家がうなずく「そうそう。『頑張るから』とか言っちゃう時点で、意識が低いんだよねぇ」。ヒーラーも言う「ねぇ、剣士くんの気持ちを考えようよ。彼がどれだけ気を遣っているか、あんたにわかる?」。
嘉村 中学生の学級会みたいですね。
三葉 仲間たちの厳しい言葉を受け、主人公は俯いた。そうか。オレは邪魔者だったのか。元来人付き合いが苦手で、ストレス耐性も低い主人公の心は……完全に砕けた!
嘉村 うーむ……。
三葉 とまぁこうして、主人公はパーティを追放されました。
嘉村 なるほど。要するに「案②」は、「追放もの」なんですね。
三葉 主人公は絶望する。面白きこともなき世を離れ、念願の異世界転生を果たしたと思いきや、追放である!そりゃオレはグズだよ。役立たずだよ。でもさ、でもさ……チクショウめ!主人公は人間不信に陥った。酒に溺れ、道端で眠る日々。
嘉村 何と言うか……哀れですねぇ。
三葉 と、そんなある日のことです。1人の男が主人公に声をかけた「よぉ、ニイサン。随分と荒れているね」「……」「おいおい、無視すんなよ」「放っておいてくれ」「ハハッ。そんな怖い顔をするなよ」。男は、強盗団のリクルーターだと名乗りました「ニイサンのように世間を恨んでいる者を探し、勧誘する。それがオレの仕事さ。どうだい。オレたちと一緒に世間に復讐する気はないかな?」。
嘉村 ははぁ……。
三葉 強盗団だと?フフッ。そうか、強盗団か。いいだろう。いっそワルになってやんよ!主人公は強盗団に加入しました。
嘉村 ええっ……。
三葉 自暴自棄になっているわけですよ。
嘉村 なるほど。
三葉 とはいえ、主人公は本質的に善人です。
嘉村 ええ。
三葉 かくして、初仕事を前に彼は頭を抱えた。彼の目の前で、いままさに罪なき人びとが襲撃されようとしている。良心が疼いて仕方がない。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ううっ、チクショウ!オレは正義のために戦う力もなく、かといってダークサイドに堕ちることもできぬのか!
嘉村 ふーむ。
三葉 だが……仕方がない!中途半端なグズ、それがオレさ!彼は自分を受け入れた。そして考えた「オレは半端者だが、他人様から後ろ指を指されるような生き方だけはしたくねぇ!」。彼は抜刀し、強盗団に斬りかかりました。
嘉村 おー!
三葉 主人公の突然の裏切りに、強盗団の面々は混乱する。しかし、強盗団は30人ほどのチーム。しかも大半が手練れの者です。主人公1人でどうにかなるものではない。主人公は死を覚悟していました。
嘉村 ふむ。
三葉 ところが……そこで、主人公の能力が発現した!
嘉村 ほぉ。
三葉 上述の通り、主人公は剣も魔法もからっきしでした。「せっかく転生したのに穀潰しかよ。神様もチート能力を授けてくれればいいのに」とがっくりきていたのですが……絶体絶命に陥ったことで、彼の中に眠っていた能力がいま目覚めたのです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 まぁ、どんな能力でもいいのですが……この主人公には、クセの強い能力が似合いそうですよね。例えば、「植物を意のままに操る能力」、あるいは「気象現象を思いのままに操る能力」。
嘉村 「幽☆遊☆白書」の蔵馬や、「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」のウェザー・リポートみたいな能力ですね。
三葉 主人公の能力は強かった。圧倒的な破壊力を持っていました。まさに「チート能力」と呼ぶに相応しい。彼は大暴れし、たった1人で強盗団を皆殺しにしてしまった。
嘉村 ふむふむ。
三葉 「○○村に一騎当千の男がいる」という噂は、あっという間に国中に広がった。そしてしばらくして……主人公のもとに数人の男女がやってきました。人びとがどよめく。無理もありません。彼らは、国一番の勇者パーティだったのです。勇者が主人公に言った「きみの力を借りたい。我々の仲間になってもらえないだろうか?」。
嘉村 ほぉ。
三葉 最強の勇者直々の依頼です。かつての主人公なら、一も二もなく飛びついたことでしょう。しかし、彼は変わった。ダークサイドに堕ちかけたことをきっかけに、彼は自分を見つめ直したいと思った。……オレは一体何がしたいのだろう?「冒険者パーティ」だの、「ハーレム」だの、それは本当にオレが望んでいることなのか?ただのミーハーではなくて?
嘉村 なるほど。
三葉 かくして主人公は言いました「大変ありがたいお誘いですが……」。勇者は戸惑った。勇者パーティのメンバーといえば、大変な名誉です。まさか断られるとは思っていませんでした。勇者は、言葉を尽くして乞う。しかし主人公の決意は固い。やがて勇者が笑った「頑固な人だ。致し方がない。諦めましょう」「本当にすみません」「ところで、あなたはこれから何をするのですか?」。主人公は頭を掻き、恥ずかしそうに答えた「自分探しの旅に出ようと思います」。で、物語は幕を閉じる。
嘉村 ふむ。
三葉 最後に改めて、「結婚しない女」と比較してみましょう。
三葉 以上、「『結婚しない女』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
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「結婚しない女」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)