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負けたら切腹!幕末テニス!!|『クール・ランニング』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「クール・ランニング」をベースに新しい物語を妄想します。

※「クール・ランニング」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「クール・ランニング」は、ジャマイカ(常夏の国!)の男たちが、ボブスレー(氷上のスポーツ!)の選手になり、金メダルを目指して奮闘するコメディ作品ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「ジャマイカの短距離走の選手が、剣道の国際大会で優勝しようと奮闘する物語」、「ごく普通の老人が、eスポーツの大会で優勝しようと奮闘する物語」の2案でした。


案③


嘉村 「案③」にまいりましょう!

三葉 「案③」は、「幕末の武士が、テニスの国際試合で優勝しようと奮闘する物語」です。


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嘉村 武士!

三葉 さて詳細をご説明する前に、ここで「クール・ランニング」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。


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三葉 ……となります(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて「案③」ですが……時は幕末!舞台は江戸!海には黒船!

嘉村 おー!まさに激動の時代の始まりですね!

三葉 みなさんご存知の通り、ペリーは日本に開国を求めますが……この時、もう1つ要求したことがあります。

嘉村 「水や食料を提供せよ」とか……。

三葉 いえ、「江戸で国際親善テニス大会を開幕せよ」という要求です。

嘉村 ……ん?

三葉 テニスとは、紳士のスポーツである!

嘉村 ……ふむ。

三葉 日本とアメリカ、そして近隣諸国の友情を育むにはテニス大会が一番!

嘉村 ……ほぉ。

三葉 第13代アメリカ大統領ミラード・フィルモアの名において、来年、江戸で国際親善テニス大会を開催するよう要請する!そしてそれに向けて、テニスコートや選手村の準備を進めよ。また、日本代表選手の選出・育成も忘れずに」とまぁ、そんな具合ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 この時、江戸幕府の代表としてペリーと交渉したのが戸田氏栄(とだ・うじよし)というサムライです。彼はペリーの要求に対して「承知した」と回答する。ペリーは、「うむ。確かに伝えたぞ。ではまた来年」と去っていきました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 戸田氏は「これこれこういうことになった」と、老中首座・阿部正弘(あべ・まさひろ)に伝達します。話を聞いた阿部氏は仰天「ええっ!マジで!?」。

嘉村 「マジで!?」って、阿部氏軽いなぁ……。

三葉 戸田氏は神妙な顔でうなずきます「マジっす」。阿部氏はひっくり返りそうになりながら、「ちょっと戸田ちゃん、その……何て言ったっけ?テニ、テニ……」「テニスですね」「そうそう。そのテニスってヤツだけど……何それ?」「……さぁ」「『さぁ』って……そんな無責任な!」「阿部さんならご存知かと」「知らないよ!」「左様で」「いや、『左様で』って……」。

嘉村 あー、そうか!その頃の日本人はテニスを知らないんですね。

三葉 阿部氏は憂鬱そうな顔をして「何でOKしちゃったのよー」「だって阿部さん!連中、メッチャ威圧的なんすよ。顔も怖いし」「いや、気持ちはわかるけど……」「ついイエスって言っちゃったんですよ」「うーん……」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて……当時日本は鎖国していましたが、外国との接点が完全に切れたわけではありませんでした。朝鮮や琉球、中国、オランダなどとは付き合いがありました。

嘉村 ふむ。

三葉 2人は大慌てでテニスに関する情報を集めます。そしてどうやらそれが、「棒状の何かで、小さな球を引っ叩く競技」であると判明する。

嘉村 まぁ……確かにそう言えなくもないですねぇ……。

三葉 戸田氏が言います「どうやら何とかなりそうですな」。阿部氏はうなづいて「マジ危なかった。……で、選手の候補は決まったの?」「はい」「なにしろわが国の代表として南蛮人と戦うわけだからね。コレ、絶対に負けられない戦いだから」「承知しております」「負けたらオレたちの首も飛ぶからね」「……承知しております」。

嘉村 怖いテニスだ……。

三葉 「で、どんな人を選んだの?」「はい。テニスは棒を振り回す競技とのことですので、やはり剣の達人がよいでしょう」「なるほど」「わが国にはたくさんの達人がおりますが、その中でも私の一押しはこの男です。この男、宙を飛ぶハエを一刀両断にするのが特技とのことで……」「おおっ!」「拳ほどの大きさの球を引っ叩くなど朝飯前かと」「さすが戸田ちゃん!いいねいいね!」……と、そんなやりとりがあって、日本代表のリーダーが決まります。

嘉村 それが主人公ですね!

三葉 はい。ここではA氏としますが……A氏には、将軍・徳川家定の名の下に特命が発せられる。A氏は突然の話にショックを受ける。しかし、彼は真面目な男です。「命に代えても優勝いたします」と頭を下げる。

嘉村 なるほど。

三葉 かくして、A氏の奮闘が始まります。テニスというのが一体どんなものなのかさっぱりわからぬものの、「剣の達人はテニスに向いている」とのこと。彼は日本全国の名の知れた剣士に声をかけ、仲間を集め……「一癖も二癖もあるものの、腕は超一流」というオールスター軍団が誕生します。

嘉村 ふむふむ!

三葉 ……と言っても「超一流」なのは剣の話であって、テニスについてはまったくのど素人。

嘉村 ええ。

三葉 彼らは戸田氏からの情報をもとに長崎の出島を訪れ、オランダ人貿易商からテニスの基礎を習います。

嘉村 ほぉ。

三葉 同時に、より専門的な指導を受けるためにコーチを探す。そんな時、妙に人懐っこい中国人が「上海に世界的なテニスプレイヤーがいるよ。手数料を払えば紹介してやろう」と声をかけてきます。

嘉村 うーむ、怪しい……。

三葉 主人公らは大喜びで紹介を依頼し、上海に渡る。しかしそこにいたのは……卓球のチャンピオン!「テーブルテニスじゃねぇか!」。

嘉村 やっぱり……。

三葉 「あの野郎!騙しやがった!」と怒り心頭の主人公らですが、運よくイギリス人と知り合いになり、本物の名コーチを紹介してもらいます。

嘉村 ふむ。

三葉 彼らは、元々が剣術の達人ですからね。名コーチに教わり、メキメキ腕を上げていきます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして、当初は「絶対に負けられない戦いだ」と悲壮な覚悟でプレイしていた主人公らですが、次第に「テニスをプレイすることの楽しさ」に目覚めていきます。

嘉村 ほぉ。

三葉 そして1年後……決戦の日がやってきました。主人公らが江戸に戻ると、テニスコートや選手村が完成している。そしてアメリカ、イギリス、オランダ、ポルトガルなど、世界中のテニスプレイヤーが集まっている。

嘉村 ふむふむ。

三葉 こうして、将軍・徳川家定やペリーらが観賞する中、試合が始まります。主人公らは努力の甲斐あって勝利を重ねる。戸田氏と阿部氏は大興奮です「戸田ちゃん、見たいまの!?」「華麗なジャックナイフでしたねぇ!」「あの打点の高さ!」「さすが達人っす!」。

嘉村 ……随分テニスに詳しくなりましたね。っていうかアレですね。戸田氏と阿部氏はこの物語のギャグ要員なんですね。

三葉 とまぁ、素晴らしい試合を披露しますが……。

嘉村 優勝は逃してしまうわけですね。

三葉 はい。決勝戦で敗北します。

嘉村 ふむ。

三葉 試合後、主人公は空を仰ぎます。使命を果たすことはできなかった。しかし、悔いはない。彼らは全力を出し切ったのだ。……テニスに出会えて本当によかった!

嘉村 ふーむ。

三葉 主人公らは将軍の前に進み出て、その場で腹を切ろうとする。……さて、このまま見事切腹を果たしてエンディングという展開でもいいのですが……。

嘉村 ええ。

三葉 せっかくなので、ハッピーエンドにしましょう。すなわち……切腹しようとする主人公らを、将軍が慌てて引き留める。

嘉村 ほぉ。

三葉 そして将軍が言う「まぁ待て待て。腹を切るのはもう少し待て。いまペリー殿と話していたのだが……諸君らに次の命を下す!アメリカにてテニス修行をせよ。武士たるもの、黙って引き下がることは許さん。リベンジを果たすのじゃ!!」。かくして主人公らは、ペリーと共に黒船に乗り、アメリカに旅立っていく……で、おしまいです!

嘉村 なるほど。

三葉 さて最後に、以上のストーリーを「クール・ランニング」に沿って整理してみましょう。


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三葉 基本的には「クール・ランニング」と同じ構造ですが、「幕末」「サムライ」「テニス」などの要素を盛り込んだことで、大きく異なる物語になったのではないかと思います。


案④


嘉村 続いて、「案④」にまいりましょう。

三葉 はい。「案④」は「JKが、全国高校生料理コンテストで優勝しようと奮闘する物語」です。


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嘉村 JK、料理……うーむ。「案③」とのギャップが激しいな……。

三葉 まずは、「クール・ランニング」との対比表をご覧ください。


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嘉村 「ジャマイカの短距離走の選手」の代わりに「JK」、「ボブスレーで金メダルを目指す」に対して「全国高校生料理コンテストで優勝を目指す」ですね。

三葉 はい。

嘉村 ふむ。

三葉 全体的な構造は「クール・ランニング」や「案③」と共通しているので、ここではポイントとなる場面だけご説明させていただきます。

嘉村 承知しました。

三葉 主人公は現代日本の女子高生。物語は、彼女が意中の人に告白するところから始まります。

嘉村 ほぉ。

三葉 ところが、「オレ……家庭的な子が好きなんだ」「えっ……」「きみ、調理実習で鍋を爆発させてただろ?そういう人はちょっと……ごめん!」とフラれてしまう。

嘉村 うーむ……。

三葉 彼女は3日3晩泣きはらし、そして決意します……料理界のインターハイ「全国高校生料理コンテスト」に出場して優勝してみせる!私、料理女子になる!!

嘉村 なるほど。

三葉 かくして彼女は友人らを誘って料理部を立ち上げ、料理上手の教師に顧問を依頼し、腕を磨く。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そしていよいよコンテスト!主人公らは、「食戟のソーマ」や「ミスター味っ子」風に、全国の料理女子と熱い戦いを繰り広げます。


三葉 努力の甲斐あって、彼女らは善戦しますが……。

嘉村 優勝は逃すと。

三葉 そうですね。しかし、彼女は満足している。持てる力のすべてを尽くして戦った。優勝はできなかったけれど……悔いはない!

嘉村 ふむ。

三葉 さてエンディングですが……試合後、冒頭の男の子が駆け寄ってきます。「あら、○○くん。どうしたの?」「オレ……オレ……きみのことを好きになった!付き合ってください!」。

嘉村 おー!

三葉 彼はコンテストで奮闘する主人公を見て、その強く美しい姿に魅かれたのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし、主人公は言う「んー……ごめん!私、冬のコンテストに向けて特訓しなきゃいけないんだ!当分、料理が恋人でいいかな!」。

嘉村 なるほど!最初と最後で立場が逆転するわけだ!

三葉 はい。で、おしまいです!


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 「クール・ランニング」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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