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珍奇な武術家、続々登場!!|「女必殺拳」に学ぶテクニック(1)

※引き続き、「女必殺拳」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


珍奇な武術家たちに注目しよう!


本作はアクション映画です。

主要キャラはほとんど全員が武術の達人であり、彼らの繰り広げる激戦こそが本作の見どころです。


ただし、一口に<武術の達人>と言っても中には奇妙な連中も交じっていまして……というかですね、本作に登場する武術家の多くが珍奇なイロモノなんですよ!

本記事では、この愉快な武術家たちに注目します。


【珍奇な敵キャラ①】スピンゲル


まずは、敵サイドの武術家を何人かご紹介しましょう。


<1>

最初に取り上げるのは、「蒼心流武術」の達人でヌンチャクの名手。

その名はスピンゲル!

彼は、敵サイドの中で最もまともなキャラです。また、万青(紅竜の兄にして少林寺拳法の達人)と戦い、見事勝利するという実力者でもあります。


<2>

と言っても、他のキャラが総じてぶっ壊れているから比較的まともに見えるという話でして、彼にもツッコみどころはあります

例えば……

・ツッコみどころ①:道着が原色のオレンジ色である(いくら何でも派手すぎやしないか?)

ツッコどころ②:戦闘中、ブルース・リーをコピーしたような表情を浮かべる(モノマネしているのかな?)

ツッコどころ:どう見てもアジア人なのに、なぜ名前が「スピンゲル」なのか?


【珍奇な敵キャラ②】鉄頭僧


<1>

続いてご紹介するのはスピンゲルの対極の存在、すなわち最もぶっ壊れたキャラです。

その名は鉄頭僧!

「高砂流吹矢」の達人です。


彼の特徴は、ズバリ外見です。

・髪型:モヒカン!

・上半身:裸。素肌にマントを着けている!

・下半身:黒色のズボン。ピチッと体に密着しているので、タイツを履いているのかもしれません。

・右手:吹き矢!

・左手:巨大な盾(ネイティブアメリカン風のイラストが描かれている)!


つまり「鉄頭僧」なぞという和風、もしくは中華風の名前ではありますが、そのスタイルは未接触部族風なんですよ。


しかもですね、彼はこの未接触部族風のスタイルで東京(横浜?)の住宅地にやってきて、紅竜らと一戦交えるのです。

うーむ……よく警察に通報されなかったな。


<2>

さてそんな奇天烈な鉄頭僧ですが、しかしその実力は確かなもので、彼は第2幕前半でファンシンを、そして第2幕後半では玉堂を仕留めています。

スピンゲルをも上回る功績です。


<3>

ところで……この鉄頭僧という男、おそらくは鑑賞者から最もヘイトを集めたキャラです。


というのもですね、第2幕前半にこんなシーンがあるんですよ。

・Step 1:鉄頭僧が、ファンシンと紅竜を襲撃。吹き矢を放ち、まずはファンシンを仕留めた

・Step 2:続いて、紅竜を狙って吹き矢を放った。だが狙いは逸れ、たまたまその部屋にいたインコに命中。インコが死ぬ


ここで思い出していただきたいのが、【私たちの多くは、「人間が殺されるシーン」よりも「動物が殺されるシーン」に嫌悪感を覚える】という現象

つまり、多くの鑑賞者にとって<鉄頭僧 = かわいらしいインコを殺したクソ野郎>であり、彼は一身にヘイトを集めたものと推測されます。


【珍奇な敵キャラ③】上江州鉄心


続いてご紹介するのは、「沖縄古武術二丁鎌」の達人。

その名は上江州鉄心!


彼は、本作随一のやられ役です。

ここでは、彼のやられっぷりを整理してみましょう。


▶【Step 1】強キャラ……じゃないの!?

上江州鉄心は、<紅竜の前に立ちはだかった最初の非モブキャラ>です。彼は、スピンゲルや鉄頭僧よりもずっと前に登場している。

すなわち、映画開始から11分ほど経過したところで……上江州鉄心、参上!


彼は口ひげを生やした中年男です。紫色の道着を着て、鎖鎌をぶんぶん振り回す。明らかに只者ではない!


これにはさすがの紅竜もハッとします。

私たち鑑賞者も「おおっ、こいつは強そうだ!これまでのモブキャラとは一味違う強キャラに違いない!」と心躍らせる……のですが、しかし!

上江州鉄心が鎖鎌で攻撃すると、紅竜はあっさりとそれをキャッチ。そして投げ返した。鎌は上江州鉄心の左目に命中する。

敗北!

以上!

これが彼の最初の出番です。


多くの鑑賞者は、思わず噴き出したことでしょう「お前……強キャラじゃなかったのかよ!噛ませ犬かよ!」


▶【Step 2】バカにされる!

映画開始から13分ほど経ったところで、再び出番がやってきます。

舞台は敵組織の事務所。

上江州鉄心は頭に包帯を巻いている。多くの鑑賞者は、「おっ、生きていたのか!なかなかしぶとい奴だな」とちょっと驚いたことでしょう。


すると……そこに犬走一直というちょっとクセのあるキャラがやってきた。そして彼は言った「ドジを踏んだそうだな」。

上江州鉄心、これは悔しい!

バカにされてしまった!


▶【Step 3】修行だ!

小娘(紅竜は20歳ほどの若い娘です)にあっさり敗北し、さらに味方からはバカにされ……最悪だ!

しかし、上江州鉄心は腐らない(偉い!)。


映画開始から31分ほど経ったところで、修行に勤しむ上江州鉄心の姿が映し出されます。

彼は左目に眼帯を付け、鎖鎌をぶんぶん振り回している。


▶【Step 4】決着の秋!

さぁ、クライマックスです。

紅竜が敵の本拠地に潜入。次々と敵を倒していく。

そして、映画開始から1時間12分ほど経ったところで、お待たせしました!満を持して上江州鉄心が登場……したのですが。

ん?ちょっとおかしいぞ。


上江州鉄心の手には、釵(サイ)が握られている……。


あれ。鎖鎌はどうしたの……?

きみ、「沖縄古武術二丁鎌」の達人だよね?

そしてきみ、さっき鎖鎌の特訓をしていたよね?

それがここにきて……釵なの!?


いや、事情はわかるんですよ。じつはこの最後の戦い、舞台がとある屋敷の廊下なのです。つまり狭い。鎖鎌をぶんぶん振り回すスペースはない。ゆえに釵なのでしょう。

しかし、だったらもう少し自分に有利な場所で紅竜を迎え撃つべきだったのでは……?


とまぁそんな我々の疑問をよそに、上江州鉄心は紅竜と戦い始めます。

が、あっさり釵を奪われてしまう(また奪われた!)。

そして数秒後には脳天に釵を刺され、はい死亡。


このやられっぷり、爆笑必至ですよ!


【珍奇な敵キャラ④】アマゾネス7


<1>

続いてご紹介するのは、7人組の女性キックボクサー!

 「タイ式キックボクシング」の達人・アマゾネス7です。


7人は、ヒョウ柄の未接触部族風の衣装に身を包んでいます。

「タイ式キックボクシング(= ムエタイ)」と言いつつ、<タイ>っぽさはほとんど感じられない。<アマゾネス>成分多めの7人組なのです。


<2>

<7人組の女性キックボクサー>で、名前が「アマゾネス7」!かなりインパクトがありますよね。

しかし残念ながら出番はほとんどなく、7人は紅竜らにあっさり敗北してしまいます

うーむ、惜しい……。


【珍奇な敵キャラ⑤⑥】馬八元、ネレー


次にご紹介するのは、「日本元流棒術四段」の馬八元と、「中国古武道トンファー」の名手・ネレー……なのですが、この2人もアマゾネス7同様に出番が少なく、【廃工場で紅竜を待ち伏せ → 襲撃 → あっさり敗北】という道をたどります。

2人とも、最期は紅竜に首をへし折られてあの世へ旅立ちました。


【珍奇な敵キャラ⑦】エバ・バリッシュ


さらに!

アマゾネス7、馬八元、ネレーよりも出番の少ないキャラがいます。

「南半球空手チャンピオン」のエバ・バリッシュです。


エバ・バリッシュは金髪美人。ゆえに私たち鑑賞者は「ほぉ!これは紅竜との女性武術家対決だな!」と心を弾ませるわけですが……残念。

彼女は修行シーンが2秒ほど描かれるだけで、それ以外は一切出番がありません(なぜだ!?)。


【珍奇な敵キャラ⑧】赤沢


最後に、赤沢というキャラをご紹介しましょう。

彼は元々牧師だったそうで、それっぽい格好をしています。また丸メガネをかけ、顔も理知的


……なのですが、その戦い方はじつに荒っぽい!

彼はスピアガン(水中銃)の乱射を得意としているのです。


そして……あまり強くない!

物語終盤に<紅竜を葬るための秘密兵器>として招聘されたものの、あっという間に紅竜に殺され、退場してしまいます。


【まとめ】まるで特撮ドラマの「悪の秘密結社」!


<1>

以上、個性豊かな敵キャラをご紹介してきました。

いかがですか?面白いですよねー!


しかもですね、彼らが初登場した際には「蒼心流武術 スピンゲル」「高砂流吹矢 鉄頭僧」なんて具合に画面にテロップが表示されるんですよ!

※補足:テロップが表示されないキャラもいます。また、初登場時ではなく、2度目の登場シーンでテロップが出るキャラもいます。


これ、仮面ライダーなどの特撮ドラマに登場する「世界征服を狙う悪の秘密結社」のノリですよね!

彼らは言わば、<生身のショッカー/変身しないショッカー>なのです。


<2>

なお、本記事でご紹介した以外に、

・角崎:敵組織のボス。「燃えよドラゴン」のラスボス(ハン)同様、鉄の爪を付けている。また、驚異的なジャンプ力を誇る。若い頃には素手で牛を50頭ほど殺したことがあるらしい


・林:組織のナンバー2。ナイフ投げの名手だが、近接戦は苦手。とにかく外見が怖い

・犬走一直:空手(?)の達人。プライドの高い男

……などなど珍奇な連中がいるのですが、彼らについてはまた別記事で触れることにしましょう。


で、主人公サイドはどうか?


<1>

さて。

個性豊かなキャラばかりの敵組織に対して、主人公サイドはどうか?こちらもまたビックリ人間大集合かというと……否。

じつは主人公サイドはまともな連中ばかりなのです。彼らは総じて少林寺拳法の達人であり、王道的な立ち回りを披露します。


つまり本作は、【王道的な武術家とビックリ人間たちの戦いを描いたアクション作品】と言えるでしょう。


<2>

なお……主人公サイドの中から強いて1人珍奇なキャラをあげるとすれば、それは湖城しのぶでしょう。

<胡蝶しのぶ>ではありませんよ。湖城しのぶです。


彼女は「湖城しのぶバレエ教室」を主宰するバレエの先生です。しかしそれと同時に、「琉球湖城流空手」の達人でもある!

敵がバレエ教室に乗り込んできた時には一歩も引かず、レオタード姿で見事な空手を披露しました。


鉄頭僧や上江州鉄心と比べてしまうとインパクト不足は否めませんが……しかし、【バレエの先生がレオタード姿で怪しげな男たちと戦う】というのも、なかなかどうして珍奇でユニークですよね!



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(担当:三葉)

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