なぜFルブランはペンホルダーを選んだ?
男子卓球界で今、中国選手に次ぐ活躍を見せているのがフランスのルブラン兄弟です。3つ年の離れた兄のアレクシスと弟のフェリックスはまだ若いですが、国際大会で素晴らしい成績を残しています。2人ともフランス代表として、2024年のパリオリンピック出場が決まっています。
兄弟2人とも華やかさを持っています。個性的なプレースタイルが多いとされるヨーロッパ卓球選手の中でも、ずば抜けて独創的で、卓球ファンを虜にしています。
特に、弟のフェリックスはペンホルダーのラケットを使用しており、トップ選手の中でもかなり目立つ存在です。
フェリックスはプレースタイルで目立っているだけでなく、実力も申し分ありません。日本のエースである張本選手も、オリンピックへ向けて彼の事を相当警戒しているそうです。
2024年5月に開催された国際大会『サウジスマッシュ2024』では、男子シングルス3回戦で対決し、フェリックスが3-0のストレートで勝利。2024年6月の『WTTスターコンテンダー』では準決勝で再び対決。2-3のフルセットで張本選手が敗北し、リベンジすることは出来ませんでした。
今回は弟のフェリックスに焦点を当てて、彼がどのような経緯であのプレースタイルを作り上げたのか、探っていきます。
F・ルブランの詳細
フェリックス・ルブランは2006年生まれ、身長は約178cm。右利き。2024年3月には、自己最高である世界ランク5位に昇り詰めました。ヨーロッパのトップ選手では珍しい中国式のペンホルダーラケットを使用しています。
卓球のラケットは大きく分けるとシェークハンドとペンホルダーの2つあります。そして、ペンホルダーには日本式と中国式があります。元々アジアの卓球選手の多くはペンホルダーグリップを使用していました。しかし現在は、アジア選手の間でも、シェークハンドがより一般的です。中国式ペンホルダーの発祥である中国においても、ペンホルダー選手を見かける機会は減っています。世界ランク5位のフェリックスより上位の4名は全て中国選手ですが、いずれもシェークハンドグリップを使用しています。
フェリックスはペンホルダーラケットの利点として、「このグリップはシェークハンドグリップよりも手首がずっと自由になる。そのため、繰り出すボールに多様性を持たせることができます。特にサーブを打つときは顕著です」と説明します。
ペンホルダーを選んだ理由
2000年代に活躍した最高の卓球選手の中には馬琳選手、王皓選手、許シン選手など、ペンホルダーグリップを使用した選手も多いです。
しかし、フェリックスがペンホルダーを使用するきっかけとなったのは、その誰でもありませんでした。彼は陳剣(Jian Chen)選手のペンホルダー卓球が好きで、その影響を受けました。陳剣選手はフェリックスの地元である「モンペリエ」にあるフランス卓球リーグのクラブ「モンペリエ」に所属していた中国系の選手です。
「4歳の時に彼のプレーを見て、彼のようになりたいと思いました。彼ができるなら、私にもできると自分に言い聞かせました。彼はシェークハンドグリップの選手に負けないくらい強かった。私も彼のようになりたいと思いました。そうして私は自分独自のスタイルを作り上げました。」とフェリックスは説明します。
ペンホルダーを使用すると決めたフェリックスは、その後シェークハンドに変更することは一度もありませんでした。そして、結果を出しました。彼の活躍は、同じようなプレースタイルばかりの卓球を好まない人々や、中国式ペンホルダーの愛好家を大いに喜ばせました。
フェリックスはプロ卓球選手として、自身のプレーがユニークであることは自覚していて、それが注目を集めることにも好意的です。「人とは違うからこそ、卓球ファンの皆さんは私のプレーを楽しんでくれているのだと思います。クールなプレーだと言ってくれることに感謝しています。変わった選択をして本当に良かったです」
周囲にペンホルダー選手がいない環境で、彼はコーチや家族と協力し、中国系のトレーナーからアドバイスを得たり、ビデオを見て技術を盗むことで、腕前を上達させていきました。「コピーするだけではなく、それらの良い点を活かし悪い点を克服して、新しい技術へ消化するように努めています。」
ちなみに、ヨーロッパの卓球選手でペンホルダーグリップを使用する選手は他に、ドイツのチウ・ダン選手がいます。1996年生まれ、ドイツ代表選手で初めてのペンホルダープレイヤーです。2024年6月時点で世界ランク10位。こちらも相当な実力者です。
父親が元中国卓球選手で、ドイツに移住し卓球教室を開いていました。そんな卓球一家にチウ・ダンは生まれました。なので、帰化選手ではなく、中国系ドイツ人ということになります。ペンホルダーの選手であった父からシェークハンドを勧められましたが、後にペンホルダーに変更しています。
個性的な選手を生む土壌
フェリックスは卓球一家で育ちました。兄のアレクシスはフェリックスと同じく現役で大活躍中のフランス代表選手。父親も元フランス代表選手でした。下手をすると「勝つにはシェークハンドだ」と強要されそうな気もしますよね。どのようにしてフェリックスのような個性的な選手が育つことができたのでしょうか。
フランス代表チームのスタッフであるモウニー氏は「日本の選手は幼少期から徹底的に練習する。一方ヨーロッパでは子供のときは遊びで卓球を始める。どちらも一長一短あると思う。けれど、それが周りとは違うプレースタイルを生み出す土壌になっているのかもしれない。結果として日頃からユニークな選手と練習をすることになり、対応力が磨かれている。日本の選手も海外リーグへ出ていくべきなのかも。」と語っています。
パリオリンピックでは、張本選手を含めた日本代表チームにも頑張ってほしいですし、地元開催のルブラン兄弟の活躍も楽しみですね。
F・ルブランの使用用具
▼ラケット
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▼以前のラケット
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参考資料
https://www.instagram.com/felix.lebrun/ https://www.instagram.com/dang_qiu/ https://en.wikipedia.org/wiki/F%C3%A9lix_Lebrun https://olympics.com/fr/infos/tennis-table-felix-lebrun-prise-porte-plume https://en.wikipedia.org/wiki/Xu_Xin_(table_tennis) https://en.wikipedia.org/wiki/Fan_Zhendong https://en.wikipedia.org/wiki/Ma_Lin_(table_tennis)
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