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100本のスプーンが離乳食を「手作り」し続ける理由。

100本のスプーンでは、すべての年代の方に楽しんでもらえるファミリーレストランとして、ちいさいおこさまをお連れのファミリーのためのサービスも提供しています。

三児の父であり、100本のスプーンの総料理長である髙橋さん(通称テツさん)へ離乳食のことを中心に、ベビーのためのサービスについて聞いてみました。

髙橋徹也 (Tetsuya Takahashi)

100本のスプーンの総料理長。2015年入社。服部栄養専門学校を卒業後、神楽坂のフレンチ「ル・マ ンジュ・トゥー」、神谷町の「シェ・ウラノ」など個性豊かなシェフの元で修行を重ねる。100本のスプーンでは「あざみ野ガーデンズ」「FUTAKOTAMAGAWA」「東京都現代美術館」「TACHIKAWA」の料理長を務める。離乳食をはじめとした100本のスプーンの全料理を監修。自身も三児の父親として日々子育てと向き合っている。趣味はキャンプ。


離乳食をひとつの料理の「ジャンル」として

―わたし自身100本のスプーンを知ったとき、離乳食が無料で、しかも店内で手作りというところにはかなり驚きました。導入のきっかけはなんだったのでしょうか。

スープストックトーキョー社全体で、「0歳から100歳まですべてのお客さまに寄り添いたい」という価値観を大事にしてきました。その中の施策の一つとしてはじめて食事をするちいさいお客さまのためのメニューがあってもいいよね、というのがはじまりでした。そしてちいさなお子さまを持つお母さんたちってお出かけの準備がかなり多い。離乳食やミルク、おむつ、お着替…そんな負担を少しでも減らし、気軽に食事に来てほしいという思いがありました。

あとは正直、当時スタートしたばかりのブランドで探り探りな状態もあり、安心・安全についてもちろん大事にはしていたけど、リスクとチャレンジのバランスが、後者の方が強かったというのもあります。

料理について熟知していて、且つ父親であるというシェフが多く、スタートしやすい状況でもあった。実際やってみたら需要が大きかったです。料理人がやるからには煮ればいい、ブレンドしちゃえばいい、ということではなく、離乳食をひとつの料理のジャンルとしてこだわって作るというところに意義を見出すこともできた。

―チャレンジしやすいタイミングだったんですね。離乳食がひとつの料理のジャンルとなるうえで、どういうポイントにこだわりがあるんでしょうか。

こだわりといっても、実は僕たちの離乳食は特別な素材を使ったりするわけではなく、手に入りやすいような食材を使っているし、すごく手の込んだテクニックを入れているわけではない。ただ、赤ちゃんが食べるということ以前にこの素材はどう調理すれば美味しくなるか、ということを大事にしています。出汁を引き、その時期旬の野菜が持つ旨味を引き出す。その中で離乳食のルールとして成長時期に合わせた硬さや大きさなどをかけ合わせて設計しています。調味料を使っていなくても完食してくれたりおかわりしてくれる赤ちゃんが多いのは、そういう美味しさを感じてくれているからなんだろうと思いますし、それは胸を張れるところですね。

3~5月の初期離乳食「春のさくら色マッシュと10倍がゆ」
3~5月の中期離乳食「鶏ささみと春キャベツのそぼろ餡かけがゆ(5倍がゆ)」
3~5月の後期離乳食「釜揚げしらすと春キャベツのミネストローネ(2倍がゆ)」

試行錯誤を重ねながら、次なるサービスへ

―年間にするといまや5店舗で約5万食も提供しているとか!たくさんのお客さまに喜ばれている反面、各店で手作りして無料で提供するのは大変じゃないですか。

全メニューのなかで一番出ているメニューですからね。外部の工場に委託してみては、有料にしてみては、という意見がスタッフから出ることもありました。その度に仕込みにかかる時間設計やタイミングを見直したりして、安心・安全というところも顧みると、やっぱり店内で手作りというところは大事にしていこうという結果になっています。ときにはお客さまからご意見をいただくこともあるんですが、対策を重ねながらほとんど事故なく提供することができています。

たとえば、提供温度に関してはとても難しいところですね。安全のためにしっかりと加熱をした上で提供することを目指しているんですが、「熱すぎる」「ぬるすぎる」というご意見をいただくことも多く、試行錯誤を重ねながら適正温度帯のルールも確立していっています。

また離乳食の仕込み中は異物混入を防ぐため、担当者は専用エプロン着用し、他の作業と並行せず集中して行うようにしています。離乳食スタート当初から店舗数は増えているんですが、各店で意識高く取り組めているからだと思っています。

でもそういうことを、世のお母さん・お父さんたちは日々必死にやっているわけですからね。子育てするみなさんの手助けになっているならば嬉しいし、100本のスプーンを選んで外食してくれるならば「手作りの離乳食」をみんなで大切にしていこうという想いで日々取り組んでいます。

赤ちゃんから直接感想を聞くことはできないけど、来店してくれたお母さん・お父さんが喜んでくれたり、レシピに関して質問してくれるととても嬉しいです!それぞれの店舗でシェフを中心に離乳食を作っているので、なにか気になる点があれば答えたいですしお客さまのお声を直接聞けたら僕たちも励みになるので、スタッフへどんどん話しかけてほしいですね!

以前離乳食教室を行ったときにも、「食べてくれなかったらどうしたらいいんですか?」という質問が多かったんですが、それでもいいんです。食べるための練習をしている段階だから。いろんな食材を体に入れるテストをしているので、食べる食べないはそこまで重要ではないんですよね。それは自分自身も勉強になりました。

離乳食教室開催時のテツさん。参加したお母さん・お父さんたちからは様々な質問が飛び交った。

というのも、僕の子どもはいちごと牛乳しかほとんど口にしてくれなかったので(笑)でもいちごは無敵だなと。その経験から以前ポケットマルシェさんとの取り組みでいちごを作ったメニュー開発をしたんですが、離乳食〜幼児食向けの「いちごポタージュ」や「いちごパンケーキ」がとても人気でした。それを機に、通年で定番として出している幼児向けデザート「バナナパンケーキ」の開発にも繋がりました。どれが気に入ってもらえるのか頭を悩ませることも多いけれど、離乳食の次のステップのメニューについてもラインナップを広げていっています。

離乳食の次のステップとして幼児食メニューも登場。

―1才から食べられる「ちいさいおこさまの為のバースデーデザート」もそのなかのひとつですよね。

そうですね。お誕生日や記念日に喜ばれている100本のスプーンのアニバーサリープレートですが、1歳のお誕生日にもお祝いできるものがほしい!という要望が多く、従来のものに加えてファーストバースデーをお祝いできるように乳・卵・小麦使用しないレシピのバスケットも提供しています。

1才から食べられる「ちいさいおこさまの為のバースデーデザート」

お客さまとの会話や父親としての自身の経験から、100本のスプーンでの家族の食事の時間を楽しんでもらえるようにしていきたいと思っています。そういった機会を増やせるように、また離乳食教室や料理教室も計画していきたいですね。

その他、ちいさいお子さま向けのサービス

他にも100本のスプーンではちいさなお客さまとそのご家族に向けて、気軽に楽しんでご来店いただけるように、以下のようなサービスも行っています。ぜひスタッフまでお声がけください。

■紙おむつ(S・M・Lサイズ)
■お子様用お食事エプロン
■おむつ替え台(※一部商業施設内では店外のお手洗いでのご用意の場合もあり)
■絵本(貸出)
■ちいさいおもちゃ(貸出)
■お子様用カトラリー

本棚の設置、絵本の貸出は各店舗にて行っています。
離乳食以降もお子様カトラリーをサイズ別にお貸ししています。


カメラマン:谷口みな美(Minami Taniguchi)
京都芸術大学 情報デザイン学科卒業後、2021年新卒入社。Soup Stock Tokyoルミネ大宮、お茶の水にて店舗勤務ののち、現在はデザイナーとして活躍中。Soup Stock Tokyo、100本のスプーンに関わるデザイン全般を手掛ける。趣味は、ペンと紙を持ち歩いて出かけ先でお絵描きすることと、お散歩。座右の銘であるラブ&ピース。

インタビュアー:本間菜津樹(Natsuki Honma)
大学卒業後、アパレルEC運営会社にて出店ブランドのサポート業務等に従事。その後地元の出版・印刷を行う会社に転職し、ものづくりに関わるうちにその楽しさを実感。自身でも文章を書くように。出産・子育てをするなかで親子の場づくりがしたいという思いが芽生え、100本のスプーンへ。現在は東京都現代美術館の二階のサンドイッチ勤務。

インタビュイー:髙橋徹也 インタビュアー:本間菜津樹