100人カイギsummit2020 -DAY6 人とAIとコミュニティ- report
前回に続き 2020年11月7日に行われた 100人カイギsummit2020 レポートをお送りします。
前回のレポートはこちら
100人カイギsummit2020 -DAY6 約束どおり解散した100人カイギの今- report
今回のトークテーマは『人とAIとコミュニティ』。 お話の内容をリアルタイムで可視化する、グラフィックレコード(Mina Okadaさん作)とあわせてお読みください。
100人カイギsummit2020
一般社団法人INTO THE FABRIC(所在地:東京都港区、代表者:高嶋大介、以下:ITF)の主催するコミュニティ、100人カイギ(※)は2020年11月2日(月)〜7日(土)の6日間、「100人カイギsummit2020」をオンラインで開催。
テーマは「つながる、その先」。
新型コロナウイルス感染拡大によって、これまで当たり前だった「人と出会うこと」に大きな変化が生まれ、コミュニティのあり方が問われています。 これからの時代、人と繋がる意味・価値を、多様な登壇者計43名とともに改めて考えるイベント。
・WEBサイト
『人とAIとコミュニティ』
AIという言葉をよく聞くようになりましたが、AIが実際に何に使われているのかピンとこない人もまだまだ多いのではないでしょうか。AIが身近になると、人とのつながり方がどう変わっていくのかを3人の登壇者に聞きました。
【登壇者】写真左より
井上亜梨紗さん : Forbes JAPAN コミュニティプロデューサー
原田英治さん : 英治出版株式会社 代表取締役
進藤圭さん : ディップ株式会社 執行役員
三人が所属するそれぞれのコミュニティ
進藤さんはバイトルという求人サイトを運営する会社でAIやRPAの研究開発を担当しています。アルバイトなどを通して若い人の支援をする会社ではあるものの、少子高齢化で若者の数自体が減っているのが現状です。
少子化への対策として、飲食店の労働力をまかなうために機械を導入できないかと考えたのが始まりで、AIに注目。それから10年ほど経ちます。
原田さんの会社では、組織系の本をたくさん出版しています。最近ではW杯を2回指揮し、名将と呼ばれた岡田武史さんの著書、『岡田メソッド』を出版。「著者を応援する」という文化が会社の特性です。
原田さんは、島根県海士町と東京を3対1の割合で住む2拠点生活を経験してきました。海士町は島根県の北に浮かぶ隠岐諸島にある人口2200人の島。島では、10人に1人は知り合いという感覚です。海土町には、家や車に鍵をかける習慣がないほど暮らしに安心感があります。
島にはお裾分けの習慣が残っていて、ちょっとしたお土産のお返しに鯛が返ってきたり、等価交換ではないやりとりによって関係性が続きやすくなっているのではないかと原田さんは言います。等価交換ではないやりとりは、健全なる負債感になるのです。
贈り物をもらったら、その場、直後、その後と3回お礼を言う習慣があり、渡した側も心が満たされます。お互い様という感覚は、他者の失敗に対する寛容さにもつながります。持ちつ持たれつの安心感が、小さなコミュニティである離島の長寿率や幸福度の高さにも繋がっているのかもしれません。
対して、全てが匿名のネットの世界では、相手を本当に理解しないまま誹謗中傷が出来てしまうことが問題視されています。多くのウェブサイトが誹謗中傷を起こさない仕組みを仕掛けていますが、それが逆に失敗を許さない空気感を生み出していると井上さんは感じています。
AI=コミュニティ
「AI」という呼び名は、ダートマス会議(人工知能という学術研究分野を確立した会議の通称)で名付けられました。学者の世界での『学派』はまさに“コミュニティ”です。彼らは学派に生きており、学派間には健全な対抗意識ができているのだと進藤さんはいいます。
AIの使い方のフォーマットは『米国オープンAI』というコミュニティが取り決めており、そこに別学派の対向意見が加わることによって、健全に技術が伸びていく仕組みになっています。
複数のコミュニティがまた別のつながりを生む
進藤さんは「マシンラーニング」という5,000人ほどのコミュニティを運営してます。偶然にもこの日、100人カイギsummitに居合わせたメンバーに声をかけられ多そうです。このように、同じ人が複数のコミュニティに共存している可能性は十分にあります。複数のコミュニティがまた別のつながりを生んでいくのです。
各コミュニティでの関係性もさまざまです。たとえば、別の競合するコミュニティに所属している人同士でさえも、巡り巡って別のコミュニティでは仲間だったりすることもあります。
マシンラーニングには、15分でひとつのものについて話をまとめることをテーマとしています。そこには正しさを議論しないというルールがあり、立場に関係なく、自分の言いたいことを限られた時間で言える環境を確保しています。
AIが今後コミュニティにどのように関わっていくか
ここまでコミュニティの話を中心に進みましたが、AIがコミュニティで得意とすることは一体なんなのでしょうか。
たとえば全員に話を満遍なく促す作業。人間同士だと好き嫌いがあったり、相手の感情をもらってストレスになることも考えられますが、AIはヒトがヒトを管理するシーンで助けになります。AIは、ヒトの感情をある程度の種類に振り分けながら、大人数のデータを同時に正確に認識することが得意なのです。
逆にAIが苦手とすることは、偶然の発明です。今回の登壇者の組み合わせもまさに不思議な巡り合わせでセッティングした高嶋さんのセンス。集められた3人も意外性を感じているのだそうです。
AIはパターン化して正解を作るのが得意です。囲碁などの法則性のあるゲームをAIにさせれば、そのうち人間はAIに勝てなくなります。ところが結婚や就職などの重大な選択の『後押しの力』はまだ人間の方が強いのだそうです。それは重大な局面になると『(右脳優位の)感情的意思決定』をするからだそうです。不合理であるのが人間で、そこに意味を見出そうと努力するのもまた人間なのです。
この話を受け、井上さんはコミュニティは『不合理な集合体』だと表現していました。
コミュニティマネージャーはAIに果たせるか
原田さんは、海士町のコミュニティ内でテクノロジーを活用していました。遠い土地である海士町に何度も来てもらうにはどうすれば良いのか考えた時に、Facebookの「タイムラインを充実させる基準は10人とのつながり」という法則に倣いました。生身の人間同士でも、名前で呼び合える関係の人が10人できれば、そこでの時間が華やかになり、リピート率も上がるのではないかと考えたのです。
海土町で噂が回るのは「インターネットより早い」と言われています。現地のリアルなネットワークを使って、名前で呼び合える関係性の人たちが島に10人できれば、島に来た人にとって島時間の充実度が格段に上がるのではないかと考えました。
さて、『場の空気を読む』とのは、コミュニティマネージャーの大切の仕事の一つですが、最近ではAIも空気を読めるようになりつつあります。
AIは、話の内容、声の大きさ、笑っているかどうか、それらを音声などから解析して色で表現します。視覚聴覚から得られる情報については、AIもかなり対応できるようになってきています。
『思っていた空気の色とAIのジャッジが違ったら…』と井上さん。そう思うとちょっと怖い部分もあるけれど、人間が感情でフィルターをかけがちなことや、人間同士では提起しづらい問題の解決に向かいやすくなるのかもしれませんね。
AIは一度に多くの人が発する情報を一気に整理するのが得意です。逆に人の顔色や微妙な目の色を読むことに関してはまだ苦手です。
ヒトとAI、それぞれに得意不得意がありますが、人間同士だと曖昧な判断を下しそうな部分を、AIに情報として処理してもらえると人間のコミュニティがより円滑になりそうです。
目に見えない資産を可視化
原田さんはEIJI PRESS Base というコミュニティの運営をしていますが、そこにあるのは細かい取り決めではなく仲間意識だけだと言います。
「仲間と作る現実は自分の理想を超えてゆく」という経営理念のもと、コミュニティにもメンバー自身の限界を仲間と超えていくためにゆるやかに活用してほしいそうです。
メンバーが管理される立場ではなく、当事者意識から出るエネルギーが、プラスで能動的な行動を生んでゆくようです。
とはいえ、仲間意識がどうやって生まれていくのかというと、その場のケミストリー要素(相性など)によるものが左右するのが現状です。
そこにAIが介入し、ひとつの活動内でのヒトの役割分担の適性を提案してくれたら…コミュニティ内の『目に見えない資産』を可視化することができます。
数値化こそできていないけれど、そこに確かにあるコミュニティの資産・価値をメンバーが自覚することができたら、より幸せになれそうです。
進藤さん曰く、実はGoogleでは、すでにそのような試みを行なっていて、人物を特定しないが、各人とその周りの関係性と行動をデータ化できるようになっているそうです!
目に見えない資産や価値を可視化することで、今あるコミュニティが発展し、また次のコミュニティが生まれる。合理的な部分をAIが担ってくれることで、我々人間が本当に大切にしたい部分に時間や力を注げるようになりそうですね。
テクノロジーとの共存は必ずしも無機質なものではなく、より人間らしいなれるものだと思うと、今後の発展がますます楽しみです。
100人カイギsummit2021
2021年11月3日(祝・水) 100人カイギsummit2021を開催いたします!
今年のテーマは「つながるは、ひろがる」
イベントの詳細はイベントページをご覧ください!
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