#10 / 合同会社くらしとデザイン舎 代表 山根 正充(やまね・まさみつ)さん「食も映像もデザイナーも、やっていることはすべて笑顔を見たいからなんですよね」
100人カイギ & Stories 。今回は目黒駅から半径500mの範囲内(目黒区、品川区、港区にまたがる地域)で活躍されている方にご登壇いただいている目黒駅前100人カイギの第9回目に港区からご登壇された山根正充(やまね・まさみつ)さん。食に関わることをはじめ、様々な活動を行う山根さんに、普段お仕事をされているコワーキングスペースでお菓子をつまみつつ、くつろいだ雰囲気でお話をお聞きしました。
考えるより先に行動しちゃうんです
ーー山根さんとは以前から知り合いなんですけど、プロフィールについてあらためてお聞きしますね。仕事としてはデザイナーになるんでしょうか?
デザイナーとカメラマンと映像作家が今は収入としていちばん大きいです。他にも活動が多岐にわたっていまして、小さな収入源をあげるとキリがないのですが、デザイナーという肩書きが一応しっくりくるところです。
デザインもウェブやチラシ、パッケージデザインまでグラフィック全般です。チームを作って仕事するより一人ですることが多くて、末端まで全部一人でやっちゃいます。
人前に立つことも多いですが、普段は超地味な仕事風景です(笑)
会社員時代は、カメラの商品カタログ制作に20年近く携わっていまして、風景、人物、料理など、プロのカメラマンさんのお仕事を間近で見てきたので、撮影のテクニックをいつのまにか覚えたのもあって、予算のない仕事のときは自分で撮ったりしていて、気づいたらカメラマンとしての仕事がくるようになってました。
ーーそれはすごいですね!しいたけの動画、見たことあります。
伊豆修善寺「鈴木しいたけ園」さんですね。
ーーあとは出汁の先生とか?
そう、出汁の先生とか。読売カルチャーで講師をしているのと、だしソムリエの認定講師の資格があって、3級講座もやっています。だしソムリエアカデミーの運営の手伝いなんかもしています。
ーー他にもいろいろありますよね。活動が多すぎて追えてないんですが(笑)
東京の国立市で米作りをしている農家さんが中心になってやっている 東京お米サロンっていうプロジェクトにも関わっています。
東京で米作りをしている農家さんってほとんどいなくなってしまってこのままでは東京から田園風景がなくなってしまうので、みんなで応援しようとプロジェクトが去年立ち上がって、そのサイトのデザインとか運営のお手伝いをしています。
あとは日本野菜テロワール協会のお手伝いもしてますね。
それぞれの地域には昔からある伝統野菜というものがあるのですが、日本の在来種の野菜って消えゆくものもあって、需要も少ないし育てるのも大変だしっていうことでどんどんなくなっている。
ーーそれって札幌大球(札幌伝統野菜)も入りますか?
実は今年10月に北海道に取材に行くんですよ。協会を立ち上げた小堀夏佳さんという方と一緒に映像を撮りにいきます。
小堀さんは、NHKのプロフェッショナルやマツコの知らない世界に出たりしている有名な方なんですが、その方から依頼されて、富山の農家さんのロゴを作ったりしてます。地方の生産者さんのブランディングをして価値をあげようとするときに、デザインとか映像は親和性が高いですよね。
ーーそうなんですね!その他にもまだありますよね。
発酵関係もあります。木桶仕込み醤油っていう昔ながらの木桶で仕込んだ醤油があるのですが、いま需要が醤油全体の1パーセントくらいになっちゃってるんです。でも特徴的な醤油なので、その価値を高めていこうと活動している人たちが居て、まず木桶を作る職人さんが居なくなりそうだから、小豆島の醤油屋さんが自分たちで作ろうと木桶職人復活プロジェクトがはじまり、どんどん大きくなって、いまは世界に向けて木桶醤油の価値を伝えるフェーズにきているのですが、その際に、ご縁をいただきプロモーション映像を作りました。
仕事なのかライフワークなのか境界が曖昧なものが多いですが、このままだと消えてしまうものに対して「応援しなきゃ」という気持ちになっちゃうのかもしれません。
ーーなるほど。絶滅の危機にある札幌大球のイベントでもいつもお料理作っていただいてて、すごく助かってます!
そういう意味では料理人もできますからね(笑)
ーーほんとになんでもできますね!デザインできて映像できて料理もできる。
ほんと、何屋さんかわかんないですよね。
他にも日本スレスレ駐車認定協議会(JSPC)の会長もやってます。自称ですが(笑)
なんか考えるより先に行動しちゃうんですよね。
コロナ禍で考えついた「ミルスル」という動画と体験のサービス
ーーもともと私と山根さんは、白金高輪の地域の活動「プラたか.net」で初めて会ったんですよね。その関わりから港区の方も登壇して欲しくて山根さんにお声がけして。当日はどんなことをお話しされたんでしたっけ?
ミルスルっていう僕が運営するECサイトの話をしましたね。ミルスルは「見る」と「する」が合体した造語なんです。
コロナ禍になって、おうち時間が増えたじゃないですか。そのときにオンラインで動画を見て、おうちでそれをするっていうのができたら面白いなと思ったんです。ミルスルでは動画と食材がセットになっていて、「動画を見ながら作る」というコンテンツをいろいろ作って販売しています。
動画ってYouTubeでも無料で見れちゃうものですし、買うってなかなかハードル高いんですよね。相当マニアックな動画じゃないとなかなか買う気持ちにならないと思ったので、醤油の仕込み方をやったり、精進料理の先生に出てもらったり、その道のプロを映像にして、しかも食材もセットにして販売することにしたんですよ。
ーー動画だと、遠くの人でも聞けるっていうのは魅力ですよね。
そうなんですよね。あと、人とワイワイするのが苦手な人もいらっしゃいますから、そういう方にはちょっと役にたってるかなと思います。
ーー私もそうめんつゆ作りを一回だけ利用したことがあるんですが、出汁の香りがめちゃめちゃいいつゆができて、その夏は幸せでした。
100人カイギがいいのは登壇者も参加者も平等なところ
ーー目黒駅前100人カイギに登壇されたときの印象についてはどうですか?
ぜんぜん違う世界の方が登壇されているので、「そんな世界もあるのか」と発見があります。そういうことを自分も伝えられてるとしたら、登壇してよかったなと思います。
一方的じゃなく、刺激を受けたり与えたりっていう双方向なんですよね。登壇者が偉いとかそういうのじゃなくて、みんなが平等に影響しあうというか。
ーー確かにそうですね。ネットワーキングの時間があるのがすごくいいなと思っていて。登壇者も参加者も一緒にお話ができますもんね。
登壇後はなにかつながりができましたか?
美容院は目黒駅前100人カイギで登壇された方( 美容室Kanteの伊野真人さん)のところに行くようになりましたよ(笑)地域の話を聞くとその地域が好きになります。当日限りで終わらないっていいですよね。
ーーご登壇後に、活動に影響を受けたことがありますか?
人というよりは場所なんですけど、目黒駅前100人カイギの開催場所であるスタジオEASEの福島さん(第1回ご登壇)と知り合えたことで、E-Parkでイベントをさせていただいたり、クリスマスイベントで出店させていただいたりしました。それで目黒という場所とのつながりが深くなって愛情が湧いてきたという感じですね。
スタジオEASEってハウススタジオとしては老舗で有名なところなんです。デザイナーとして会社勤めをしていたころから憧れの場所だったので、つながれて嬉しかったです。
ーー11月3日、4日に100人カイギマルシェがスタジオEASEさんのE-Parkで開催されますよね。
そうなんです。目黒駅前100人カイギ主催者の洪さんからお声がけいただいて出店することになりました。
ーー札幌大球のイベントもその後すぐ開催でお世話になりますが、マルシェもよろしくお願いします!
食も、人に喜んでもらいたいという気持ちのひとつなんです
ーーいま関心があることについて聞いてもいいですか?たくさんありそうですけど(笑)
自分が何者か絞り込みたいです。(笑)
すぐいろんなことに興味が出ちゃうんです。
ーーでもいいことですよね。好奇心が高いっていうのは。
いやいや、結構切実なんですよ。自分は何者だっていうのを一言で言いたいんです。
ーーうーん、いろいろされてるから難しいですよね!でも食に関することだけは統一されているような。
食だけでないこともあるんです。たぶん一番は人に興味があるんです。
実は、また新しい事業を立ち上げようとしてまして、
いままで職人さんとかそれなりに有名な方ばかり映像として撮ってきたんですけど、あらゆる人にそれぞれ歴史がある。その人がこれまでどうやって生きてきて、今何を思って、これからどう生きていきたいか作品として残していけないかと思ってるんです。それってその人にとってかけがえのない思い出になるし、いつか、その人が亡くなったときに家族が見て「こんなこと思ってたんだね」と知ることができたらすごくいいんじゃないかと。まだローンチは先になると思いますが、コツコツと作例を撮り溜めているところです。
食も結局「生きる」っていうことの根源だったりするので、生きるってことを大事にしてまして、
最終的には世界平和なのかな。すべての活動の源にあるのは。
ーー大きく出ましたね!
スレスレ駐車も世界平和。
ーーええっ!どこにつながってるんですか?それ。
スレスレ駐車で、「これってスレスレだよね」「いや、そうでもないよ」ってやってるときって絶対ケンカしないですよね。
そういうのを「楽しいね」って言っている状況って心に余裕がないとできないじゃないですか。楽しいって言えるのが平和な世界だなって。
ーー世界平和だったのかぁ。
食もそうですよね。食べてるときはみんな幸せだし。
どんなに苦しいときでも、おいしいもの食べたら「おいしい!」って言っちゃいますもんね。そういうことに関われたら幸せですよね。
ーーじゃあ、いろんな活動の根源は世界平和なんですね。
なんかやばい人みたいですね。(笑)
でも、誰かのために何かする方がモチベーションあがるじゃないですか。自分の私利私欲のために活動するよりも、この人を応援したい!という気持ちで活動して、結果として自分も食べさせてもらってるくらいの方がやる気出るっていうか。
すべての活動がそういうところに行きついちゃうと思うんですよね。
ーー確かに人に喜んでもらうことって一番幸せかもですね。
やりたいことを実現するために場が必要
ーー今後チャレンジしたいことはありますか?
やっぱり「場」が欲しいですね。間借りじゃなくて、自分の事務所を持ちたいです。
物販するときも、リアルなお店があってお客さんに説明した上で買ってもらえたら、お互いハッピーだと思います。それに、自分で出汁セットなどを売ってますけど、外部委託なのでちょっと値段が高くなってしまうんです。自社で作れるようになったらいいじゃないですか。将来はかつおぶし屋さんになりたいみたいなことを思ってたりします。
ーーじゃあ、結構大きな場所が必要っていうことですね。
製造エリアとオフィスエリアと物販エリアが必要ですよね。どんだけ借金したらいいんだろうね。
ーー場所はどこがいいんですか?
やっぱり都内がいいですよね。
一軒家をリノベーションできたらいいなと思うんですけどね。平屋の昔の建物とか。そういうところないかなぁと思ってるんです。
農家さんとのつながりもいっぱいあるので有機野菜も売りたいし、余ったら翌日お弁当にして売ったりできたらいいなと。
ーー人のつながりもたくさんあるから、やれることが多くて楽しみですよね。
山根さんのお弁当食べたいです!(笑)
人生の後半は自分で生きる
ーーそもそも、会社員を辞めて独立したのはどうしてですか?
いま45歳なんですけど、40歳になったときに人生80年としたら、折り返しにきちゃったと思って。このまま勤め人で定年になって、やってきたことを振り返ったときに、自分が起点となってやったぞっていうものがないかもしれないと思って。自分で何か作りたい、残したいと思って、独立しました。
ちょうどコロナも始まった時期で、世の中の状況や価値観も大きく変わるタイミングというのもあって、いまだ、動かなきゃ!と思って2020年に会社をつくりました。あの当時はみんな先行きの見えない不安な気持ちの人が多かったと思うのですが、僕はむしろチャンスが来たと思ってワクワクしていました。
デザインの仕事って、クライアントさんごとに自分の脳を切り替える必要があって、役者さんのようにいろんな世界を見られるんです。
そんなクセもあるのか、いま、いろいろなことを四方八方やっているのも、一度だけの人生、いろんなことを体験できたほうが面白いと思っているのかもしれません。
自分でまとめたいと言っておきながら、なんですけど。それが根本にあるからまとまらないのかな。
ーーなるほど。今後も肩書きに悩みつづけそうな感じですね。(笑)
でも、いろんな体験ができた方がいいっていうのは共感できます!
ところで、これでだいたい質問は終わったんですけど。
えっ、大丈夫ですか?これ、まとまりますか?僕が心配になっちゃいます(笑)
僕、ライターもやるんで、自分が書く側だったらどうやってまとめようか悩みますよ。
ーー山根さんもライターですもんね。私が書いちゃいますけどすいません(笑)
お忙しい中、お時間いただきありがとうございました!
山根さん自身も活動の場を自ら切り開いている方ですが、100人カイギを通じて地域や人とのつながりができて、世界がさらに広がるきっかけができたのかなと思いました。
ぜひ、地域に山根さんのお店ができて欲しいです。物件の情報などあれば、ぜひお声がけください!
聞き手:岩瀬 友理(目黒駅前100人カイギ サポートスタッフ)
文:岩瀬 友理(目黒駅前100人カイギ サポートスタッフ)
写真:Junko Honma (100人カイギ本部・諏訪湖100人カイギ キュレーター)
100人カイギ & stories ライター
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