『ドラえもん』のカラー原画たっぷりの画集が登場! 「100年ドラえもん」の特典別巻『ドラ絵もん』をご紹介します。
今ある最高の技術によって、ドラえもんが誕生する22世紀の未来まで、『ドラえもん』のコミックスを届けたいという想いからスタートした、てんとう虫コミックス『ドラえもん』豪華愛蔵版 全45巻セット「100年ドラえもん」のプロジェクト。
「100年ドラえもん」には特典別巻が3冊付いています。
ひとつは完全索引巻『引くえもん』、
ひとつは『ドラえもん』第0巻の100年ドラえもん仕様、
そして、画集巻『ドラ絵もん』です。
先日、『引くえもん』については、詳しくお話を伺いました。
果たして、画集巻『ドラ絵もん』には、どんなこだわりが詰まっているのでしょうか?
ドラえもんルーム編集長の徳山さんに伺います。 (聞き手:佐藤譲)
『ドラえもん』のカラー原画が満載!!
――そもそも『ドラえもん』のカラー原画が集まった本は目新しい気がします。
徳山:
「はい、『ドラえもん』のカラー原画は藤子・F・不二雄大全集や、様々な本に収録されていますが、『ドラえもん』のみで集めた本は実は初めてです。」
――『ドラ絵もん』とは、一体、どんなコンセプトの本なのでしょうか?
徳山:
「藤子・F・不二雄先生が描いた絵をじっくりと眺められる本を作りたい、という想いで制作中です」
ーーたしかに、『ドラえもん』はストーリーだけじゃなく、印象に残る絵がたくさんありますよね。
徳山:
「『ドラ絵もん』では、F先生がカラーで描かれた絵をセレクトして、一冊の画集にしています。モノクロの絵でも、とっても伝わる情報は多いのですが、カラーだとさらにたくさんの意図が伝わってきます」
ーー詳しく伺っていきます。
こちらは制作中の『ドラ絵もん』より。印刷した一部を、写真に撮りました。
初出カラー扉絵を掲載する意味
ーー『ドラ絵もん』は全96ページで、新書判サイズ(てんとう虫コミックスと同じサイズ)の本になる予定です。その多くを、「初出カラー扉絵」に割いています。一体、「初出カラー扉絵」とはどういうことでしょうか?
徳山:
「扉絵というのは、連載時の一番最初のページで、タイトルと作者名が入っているページです。単行本になるときにも、そのまま使用するケースがほとんどです。
まんが雑誌を読んでいると、たまに目にすることがあると思うんですが、その扉絵がカラーになっていることがありますよね」
ーーたしかに、雑誌の巻頭や、真ん中あたりでカラーであることって、ありますね。
徳山:
「『ドラえもん』でも、扉絵がカラーで描かれた作品がたくさんあるんです。扉絵だけでなく、オールカラーで描かれた作品も多数あります」
ーー連載時にカラーで描かれたものが、単行本に収録される際に、モノクロで印刷されるんですね。
徳山:
「たとえば、てんとう虫コミックス第5巻に「ひらりマント」というエピソードがあります。この扉絵の原画はカラーで描かれていました」
ーー色鮮やかですね!
徳山:
「ひらりマントって、こういう色合い描かれていたんだ、とじっくりと鑑賞できるのが『ドラ絵もん』です。
ちなみに、この絵を見て、何か、気付きませんか?」
ーーえ?
長年の変化を辿れる
ーードラえもんのシッポが青いですね!
徳山:
「そうなんです。ある時期までは、F先生は、ドラえもんのシッポを青く描かれていました。
昨年、『ドラえもん』第0巻を刊行したときに、表紙をご覧になった方々が驚かれたのが、シッポの青さでした」
ーー赤いシッポのドラえもんを見慣れているので、とても新鮮です。
徳山:
「ドラえもんは長い時間をかけて、工夫をされてきた作品です。カラー原画を見る良さって、こうした変化に気付けることなんです。
青いシッポ以外にも、ドラえもんの手・足の色が塗られている絵や、のび太の服の変化など、様々な変化に気付けます」
ーー『ドラ絵もん』を通して、『ドラえもん』の魅力に気づけるんですね。
徳山:
「本当は、同じ服を着てもらい続けるほうが、読み手の印象に定着するのでいいんですよね。でも、F先生は、そう描かなかった。カラー原画を見ると、色んな服をF先生がのび太くんに色んな服を着せているのが分かります」
原画だからこそ得られる気づき
ーーカラー扉絵だけでなく、カバーの原画もセレクトして収録されるんですよね。
徳山:
「『100年ドラえもん』には、カバーがありません。そこで、てんとう虫コミックス『ドラえもん』各巻のカバーイラストは、カラー口絵として、本文の前のページに、ちゃんと収録するようにしています。
それでもなお、『ドラ絵もん』でカバーの原画を載せることには理由があります。たとえば、てんとう虫コミックス第1巻の表紙でいうと」
ーーお馴染みのドラえもんですよね。
徳山:
「ところが実は、F先生が描かれた原画は、少し異なるんです」
ーー顔の立体感が出るように、影が入っていますね!
徳山:
「てんとう虫コミックス初期の巻のいくつかは、当時なんらかの判断で、今のようなパキッとした単純な色に置き換えられて印刷されています」
ーー原画を見ないと、気付かない違いですね。
徳山:
「この原画は、『ドラ絵もん』の表紙にも掲載しました。
また、カバーでいうと、おもて表紙は見ても、うら表紙をじっくりと見ることって、あまりなかったかもしれません。でも、F先生の原画を見ると、おもてとうらを同じ紙の上に描かれているのです。その1枚絵の魅力を伝えられないか、と思って、『ドラ絵もん』ではある工夫をしているので、是非楽しみにしていただきたいです」
ーーいろんな気づきが得られそうですね。
徳山:
「私たちの目の前には、F先生が描いた絵があって、いくらでも楽しめる。そういうガイドに『ドラ絵もん』がなればいいな、と思っています。
私たち編集部は、F先生の原画を間近で見させていただいているので、知っていることがある。それを、できる限り、皆さんに伝えたいな、と思っています。画集の解説は、『ドラ絵もん』の巻末に載せる予定ですので、楽しみにお待ちください」
ーー引き続き、編集作業をがんばってください!