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「あの話なんだっけ?」というモヤモヤに答えますーー『引くえもん』が叶える新体験について、ご紹介します。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』豪華愛蔵版 全45巻セット「100年ドラえもん」の特典として付く『引くえもん』。これまでの取材記事で、ドラえもんルームの本気度がじわじわと伝わってきたでしょうか?
3回目の今回は、「ひみつ道具名索引」と「サブタイトル索引」について伺います。 (聞き手:佐藤譲)
これまでにない『ドラえもん』体験を叶える。
ーーお待ちかねの「ひみつ道具名索引」です!
徳山:
「ひみつ道具名索引」も、「登場キャラクター索引」と同様に、絵を付けています。
「ひみつ道具名索引」の最初の見開きです。
ーーこれまた細かく眺めたくなる本ですね。
徳山:
そうでしょう? 名称不明の道具もあるので、「この絵!」と探すことができるようにしています。
ーー「悪魔のパスポート」って、二回、登場するんですね。
「ひみつ道具名索引」の「あ」の項目内の「悪魔のパスポート」より。
徳山:
実は、45巻のある一コマに、登場するんですよね。
ーー文字だけの索引と違って、絵があると、ずっとめくっていたい気持ちになります。
徳山:
『ドラえもん』はまんがだからこそ、文字だけでなく、絵で覚えている人も多いと思います。まんがの索引をつくろうとしている以上、やらなきゃいけないことかな、と思っていました。
パラパラとめくっているうちに、新しい気づきが生まれることもありますよね。名前を勘違いしていて、別の発見があったり。
ーー用事があるときじゃなくても、眺めていたら面白いですよね。
徳山:
索引として活用してもらうだけでなく、読み物として、読んでもらいたいです。時間があるときにパラパラめくってもらうと、「このひみつ道具、すごく面白かった記憶がある!」という感情が湧いてきたり。そこから読んでもらえるんじゃないか。
これって、今までにない『ドラえもん』体験ではないか、と思います。
「あいあいパラソル」で始まり、「悪口べに」へ
ーーひみつ道具をあいうえお順で引けるのは楽しみです。
徳山:
我々も作ってみて分かったことがあります。名称が付いているひみつ道具を、あいうえお順にすると、「あいあいパラソル」に始まり、「悪口べに」で終わるんです。
「ひみつ道具名索引」の「あ」の項目の最初は「あいあいパラソル」。
ーーなんと。笑
徳山:
愛から始まり、ワルで終わる。その偶然に、感動しました。
ーー名称が不明なものはどうしているんでしょうか?
徳山:
名称が不明のひみつ道具は、できるだけ客観的な仮の名前を付けて、巻数順に並べています。
「あの話なんだったっけ?」という疑問に答えます。
ーー「ひみつ道具名索引」を活用すると、どんな引き方が可能になるのでしょうか?
秋山:たとえば、「タイムマシンが使われたお話で、もう一度読みたいエピソードがあったなぁ。なんというお話だったかな?」という疑問に答えることができます。
ーー割とオーソドックスですね。
秋山:
ところが、そう簡単なものではないんです。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』のエピソードは短編作品の集まりで、短編ならではの特徴として、F先生は様々な省略をしているんです。
ーーたしかに、てんとう虫コミックス『ドラえもん』は、ひとつひとつのお話のページ数が少ない分、密度が濃いイメージがあります。
秋山:
お話の中で、ドラえもんやのび太くんたちがタイムマシンを使っていたとしても、絵としては描かれていない、ということもあるんです。
つまり、「ひみつ道具名索引」は、「この話の流れであれば、必ず、タイムマシンも使っただろう」というものも数え上げているんです。
あくまで、ぼくらの想像なんですけれどね。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』27巻の「恋するドラえもん」より。セリフにも、コマの中にも「タイムマシン」は登場しません。
ーーたしかに、お話の中ではきっと使われていますもんね。
徳山:
そこまで数え上げることで、「タイムマシンが使われたお話で、もう一度読みたいエピソードがあったなぁ。なんというお話だったかな?」という疑問に答えることができます。必ず、「ひみつ道具名索引」によって、目当てのエピソードにたどり着けるはずです。
F先生が描いたものは、すべて引くことができる!
ーーお話に登場するひみつ道具は、描かれていなくても索引で引けるようにする。そして、描かれているひみつ道具も引けるわけですよね。
秋山:
もちろんです。ただ、数え方の境目が難しいものもあります。何をするひみつ道具か分からないけれど、お話に出てくるひみつ道具があるんです。
たとえば、18巻に「百苦タイマー」というエピソードがあります。
ーーラストがゾッとするお話ですよね。
秋山:
このお話の冒頭に、ドラえもんがひみつ道具を整理しているコマがあるんです。
これらも索引で引けるようにしています。形として出てくるので。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』18巻「百苦タイマー」の一コマより。
ーーえっ、ここもですか!?
徳山:
識別可能な道具がまずあるんですよ。「ウマタケ」や、「きせかえカメラ」のように。「ひみつ道具名索引」で「きせかえカメラ」を引いたら、ちゃんと、「百苦タイマー」にもたどり着きます。
ーーたしかに、そんな検索をしたい読者の方もきっといますよね。
徳山:
たとえば、カバーの絵もそうです。F先生はカバーや口絵にもひみつ道具を描かれました。それらをすべて数え上げています。そして、「何ページにありますよ」という情報を、すべて索引にまとめています。
我々も意識の中でひみつ道具だ、と認識していなかったものも、「よくよく見ると、これもひみつ道具だ」という気づきがあります。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』18巻カバー。ドラえもんが手にしているのは? 名称は出てきませんが、きっと、ひみつ道具ですよね。
サブタイトル索引について
ーー最後に、サブタイトル索引についてもお聞きしたいと思います。
徳山:
サブタイトル索引では、いつ描かれたか、を確認することができます。
「サブタイトル索引」の「の」の項目より。タイトル、何巻、何ページ、そして、初出情報が分かります。「のび太の恐竜」は、「週刊少年サンデー増刊」で1975年9月5日号に掲載されたことが分かります。
徳山:
これまでのてんとう虫コミックスには掲載されていない情報なので、新しい気づきがあるのではないか、と思っています。
「サブタイトル索引」の「か」の項目より。
徳山:
たとえば、ガラパ星は「小学三年生」「小学四年生」「小学五年生」で同時掲載だったということが分かります。
あとは「あの日あの時あのダルマ」のような珍しくのび太がエリを正す話、あるいは「ツチノコ見つけた!」のような将来について考える話などが、「小学六年生」の3月号に描かれたものだったということも分かります。学習雑誌の卒業生を意識して、F先生がわざわざそういうお話を描いていたんです。
『藤子・F・不二雄 大全集』を刊行するときに初出リストというものを作りました。そのリストのおかげです。
ーー『引くえもん』の制作はいつまで続くのでしょうか?
徳山:
実は、まだ終わりが見えていません。発売日は12月1日ですので、そこからの逆算で動いています。まだまだ、ずっと佳境が続きます。笑
皆さんのお手元に「100年ドラえもん」とともに『引くえもん』が届く日を楽しみに頑張ります。
ーー本日はどうもありがとうございました!
©藤子プロ・小学館