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【布クロス装のひみつ】「100年ドラえもん」のこだわりを訊きます。

 てんとう虫コミックス『ドラえもん』豪華愛蔵版 全45巻セット「100年ドラえもん」の制作現場から情報をお届けしています。「印刷編」「インキ編」「紙編」に引き続き、「100年ドラえもん」のブックデザインを担当する名久井直子さんにお話を伺っていきます。
 今回のテーマは「布クロス装」です!  (聞き手:佐藤譲)

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「強い」シルクスクリーン印刷

ーー「100年ドラえもん」の見本を、特別に触らせていただきました。表紙には、藤子・F・不二雄先生が描かれたドラえもんの絵が、美しく映えますね。どこか布と一体になっているような感じもして。

名久井:
 22世紀まで、なるべく長持ちするように、シルクスクリーン印刷を提案しました。
 シルクスクリーン印刷は、「印刷編」でご紹介した孔版印刷の一種です。版に孔(あな)を開けて、そこからインキを擦りつけるんです。版の素材にシルク(絹)を使っていたことから、シルクスクリーン印刷と呼ばれています。


ーーシルクスクリーン印刷の特徴って、どういうところなのでしょうか?

名久井:
 インキをしっかりと乗せやすい技術で、「強い印刷」であることです。厚めに刷れば、表の凸凹が分かるくらいにインクが乗る印刷方式です。
 シルクスクリーン印刷は、Tシャツの絵柄のプリントにも使用されているものがありますよ。


ーーイラストや写真が印刷されたTシャツってありますもんね。

名久井:
 写真がフルカラー印刷されているのは、大半はインクジェット印刷だと思います。インクジェット印刷のものは、長く着ていると、洗濯で印刷が薄れることも。シルクスクリーン印刷は、取れにくいのが特徴です。たとえば、生活の中でも、リモコンの表面や、電子基板にもシルクスクリーン印刷は使われていたりします。


ーーシルクスクリーン印刷は「強い」というイメージが湧いてきました! Tシャツでいえば、たとえ首がよれてきても、柄はしっかりと残っていますよね。

名久井:
 ですので、「100年ドラえもん」の外側は、長持ちするように、シルクスクリーン印刷にしています。

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シルクスクリーン印刷が伝われば、と思い、制作中の現場で、写真を撮影しました。

何度も手に取れる布クロス装

ーー「100年ドラえもん」の見本を触らせてもらった際、手にしたときの柔らかさが印象的でした。

名久井:
 布選びも、「どんな布ならば、印刷が綺麗に乗るか」をひとつひとつテストしました。


ーー布生地を見つけるところから始まったんですね。普段、布クロスのブックデザインをされるときはどうされているんですか?

名久井:
 普段は、すでに見本としてある布クロスから選びます。ですが、あまり使われない素材なので、見本はふんだんにあるとは言えません。
「100年ドラえもん」では、印刷適性と風合いを兼ね備える布を探して、「かつらぎ」という布にたどり着きました。

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ーー布クロス装でシルクスクリーン印刷することはよくあるんですか?

名久井:
 あまり無いと思います。「100年ドラえもん」はとっても珍しい本です。


ーー長持ちするように「強い」シルクスクリーン印刷でつくられた布クロスだからこそ、手に取りやすくなりますね。

名久井:
 この布クロスには、防汚加工と撥水処理が施されています。まんがを読んでいると、つい、お茶をこぼしちゃうことって、あると思います。撥水処理がされているので、水をはじきやすいんです。


ーーそんな加工があるなんて、初めて聞きました。

名久井:
 本ではあまり聞かないですよね。テーブルクロスやカバンなどで用いられる技術です。
「100年ドラえもん」は高級そうな本だから、「気軽に触っちゃ駄目だ」と思ってほしくないです。何度も手に取って、『ドラえもん』を読んでもらいたいです。
 もちろん、人間にはどうしても手垢があるので、毎日なでていたら、経年劣化はしていくと思います。それは、愛された証拠だと思います


ーー長く愛されるよう、目に見えない加工を施しているんですね。
 次回は、本好きの方々が注目している「天金」について教えていただきます!

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ドラえもんルームより

 布クロス装の本って、あまり見かけなくなりましたよね。昔は詩集や、ちょっと立派な小説に布クロスが使われていた記憶があります。
 布クロス装のまんがって、ほとんどありません。昔、大流行した『のらくろ』の単行本が布クロス装でした。絶版になったため、今では、『のらくろ』を読んだことがある人は、少なくなったかもしれませんね。
 撥水処理・防汚加工については、こだわっています。「100年ドラえもん」では布クロスを一度、防水液にしっかりとつけて、生地の中まで浸透させています。汚れにも強い布クロス装になりました。
 貴重で強い布クロス装の「100年ドラえもん」。是非、楽しみにしていてくださいね。