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【紙のひみつ】「100年ドラえもん」のこだわりを訊きます。

こんにちは! ドラえもんルームです。

今ある最高の技術によって、
ドラえもんが誕生する22世紀の未来まで、
『ドラえもん』のコミックスを届けたい
という想いからスタートした、
てんとう虫コミックス『ドラえもん』豪華愛蔵版 全45巻セット「100年ドラえもん」のプロジェクト。

その制作現場から情報をお届けしていきます。
「印刷編」「インキ編」に引き続き、「100年ドラえもん」のブックデザインを担当する名久井直子さんにお話を伺っていきます。
今回のテーマは「紙」です! (聞き手:佐藤譲)


時が経っても白い紙

ーー今回は、「紙」について伺いたいと思います。古本屋さんや図書館で、古い本を手にすると、紙の色が赤茶けたものや、くすんだものに出会うことがあります。あるいは、自分の家の本棚にある本も、だんだんと色が変わってきます。

名久井:
 紙って、時が経てば経つほど、どうしても酸化するものなのですよね。本が歳を重ねたからこそ出る味なので、私は好きですが。


ーー名久井さんが『本づくりの匠たち』で取材をされていた、東京修復保存センターの回が印象的でした。

名久井:
 紙資料を修復するペーパー・コンサバターの方々が集っている施設ですね。古文書や絵図、アート作品、古くなった図書、などなどを日々修復をされています。


ーーその回で、酸性紙の問題が取り上げられていましたよね。19世紀半ばからヨーロッパで大量に製造された酸性紙は、50年〜100年経つと、紙が酸化して崩れてしまう、と。

名久井:
 紙の酸化は、紙でできた本にまつわる大きなテーマです。「100年ドラえもん」でも真剣に考えました。

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ーー「100年ドラえもん」の紙を決める際は、何が決め手だったのでしょうか?

名久井:
 小学館の資材担当の方に、様々な紙を用意していただいて、まず紫外線照射でテストをしました。酸化したら一体どうなるか、を見るためです。
 そして、一番成績が良かった紙を選びました。その紙は、候補として実験を行った複数種類の用紙の中で最も退色の度合いが少なく、いちばん白さを保っていました


ーー「100年ドラえもん」のコンセプトに沿った紙ですね。なんという名前なのでしょうか?

名久井:
「オペラクリアマックス」という名前です。この、時が経っても白い紙を見つけたとき、より良いものでより長く残したいと願う「100年ドラえもん」にぴったりだと思いました。
 もちろん、本はそれぞれの家の中での保存状態なので、100年後にみんながみんな、どの本も同じ状態かというと異なるとは思います。でも、標準的に持っていたら、持ちは良いものになっています。

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「100年ドラえもん」の紙は、ふんわりおにぎり

ーー「100年ドラえもん」の束見本をお借りしたのですが、持ってみるとイメージよりも軽いことにビックリしました。

名久井:
 オペラクリアマックスという紙は、空気をよく含んでいるんですよね。


ーー紙が空気を含むってどういうことでしょうか?

名久井:
 たとえば、ファッション系の雑誌って、重さがあるじゃないですか。印刷で綺麗に色を出すためには、よりツルツルの紙の方が色は乗るんですね。そして、紙をツルツルにするためには、いっぱい潰さなきゃいけなくて。


ーー紙を製造するときに潰す、とは?

名久井:
 おにぎりで考えると分かりやすいかもしれません。
 たとえば、同じご飯の量でおにぎりを握っても、ふんわりしたおにぎりと、ぎゅぎゅっと握ったおにぎりでは大きさが異なりますよね? その、ぎゅぎゅっとしたおにぎりのほうが、ファッション雑誌などに使われている紙。一方、「100年ドラえもん」に使われている紙は、ふんわりつくられた紙なんです。
 だから、手に持っても、軽いんですよね。

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ーー保存版の本って、どうしても重さがあるイメージだったので、手に取った瞬間、ビックリしました。

名久井:
 軽いから、のびちゃんみたいに寝転がって読めますよね。
 「100年ドラえもん」はコレクティブな側面もありますが、よくある保存用ではなくて、手に取って読んで欲しいと思っています。
 たとえば、本を纏っている布クロスには、実は、防汚加工や撥水処理を施しています。お茶をこぼしちゃっても、水を弾くんです。本では珍しい試みです。高級そうな本だから、触っちゃ駄目だと思ってほしくなくて

ーー それでは、次回は、こだわりの「布クロス」について伺いたいと思います!

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ドラえもんルームより

 「100年ドラえもん」の紙を探すのは、様々な試験をして、時間がかかりました。保存性に優れた中性抄紙である「オペラクリアマックス」に出会ったときに、その読みやすさと、そして、ページをめくるときのしなやかさに驚きました。また、サタンブラックインキとの相性がすごく良くて運命を感じました。
 軽さの話が登場したので、参考までに、てんとう虫コミックス『ドラえもん』1巻、藤子・F・不二雄大全集『ドラえもん』1巻、「100年ドラえもん」1巻の大きさ・重さをはかってみました。

・てんとう虫コミックス『ドラえもん』1巻:全192P・新書判並製・130g
・藤子・F・不二雄大全集『ドラえもん』1巻:全768P・A5判並製・1000g
・「100年ドラえもん」1巻:全192P・新書判ハードカバー・240g

 イメージが湧けば幸いです! 次回の布クロス編もお楽しみに。

©藤子プロ・小学館