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公園、肉

 随分以前、仕事の帰りに公園を散歩した。
 大きな公園で、ボートに乗れる池がある。池の周りを歩いていたら、じきに藤棚が現れた。ちょうど藤の季節だったからライトアップされていて、きれいなものだと大いに感心した。
 藤棚を抜けると、向こうの広場で十人ばかりの男女がダンスの練習をしていた。

 前に夏祭りで、ダンス教室の先生が生徒らを従えて踊るのを見たことがある。
 ダンス講師の割に小太りなおじさんだった。動きはキビキビしていたけれど、時折襟元をはだけて、酔ったようにクネクネする。それが甚だ気持ち悪い。みんなの祭りで見せるようなものではないと呆れたけれど、昔自分も祭りで割とひどいことをしたのを思い出したから、黙っておいた。

 公園の男女はみんなスラッとしていて、それが同じ動きをするので気持ちがいい。
 もっとも、あんまりじろじろ眺めて通報されてもつまらない。適当に眺めながら通り過ぎた。

 それからまた少し歩くと、猫が一匹現れた。三毛猫である。
 猫はこちらを見て一声「ニャァ」と云い、並んで歩き出した。随分人に馴れていて毛並みも良い。飼猫に違いない。
 結局、池を半周するぐらいの間ずっとついて来た。どこまで来るかと思っていたら、ある所で「ニャァ」と云って立ち止まった。そこまでが縄張りだったのだろう。
 見送られるような心持ちで公園を後にした。

 翌日はコンビニでフランクフルトを買って行った。
 猫は果たして、昨日出会した所で蝶を追って飛び跳ねていた。
 こちらに気づくとまた寄ってきたので、フランクフルトを少し千切って草の上に置いてやった。
 猫はくんくん匂いを嗅いでいたが、「ニャァ」と云ったぎり、見向きもしなくなった。どうやら好みでなかったらしい。
 自分は残りのフランクフルトを食べながら、「猫の食わない肉を食う俺」と思った。

 それぎりこの猫を見なくなって、じきに公園の散歩も止してしまった。


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百裕(ひゃく・ひろし)
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