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Photo by
sayakamori
カブトムシ
独身の頃、住んでいたアパートの玄関前にカブトムシがいた。
もうカブトムシで喜ぶ年ではないし、あんまり虫に触りたくもないのでそのまま放っておいたら、翌日もまだそこにいた。さらにその翌日もいた。
死にかけているのではないか知らと思ったが、別段弱っているようでもない。普通にのそのそ動いている。きっと夜にはどこかへ行って、食事を済ませて戻って来るのだろうと得心した。
一番奥の角部屋だったから、人に見つかる心配はあんまりない。カブトムシには比較的安全な環境ではあるけれど、どうも何だか気になっていけない。
傘の先を近付けるとしがみついたので、そのまま隣の空地へ連れて行って放した。それでもう戻って来なかった。
子供の頃には、カブトムシもクワガタムシも何度か飼った。
友達と虫捕りにも行ったが、ああいうのは朝早くなければ捕れないから、一度も捕まえたことはない。これまで飼ったのは、全部町内のペットショップで買ったものである。
今考えるとそのペットショップがどこにあったかまるで覚えない。全体自分はどこであの虫を買ったのかと思ったら、何だか落ち着かない。
やっぱり子供の頃、友達がカナブンに糸を付けて飛ばしていた。それがどうも羨ましくて、自分もやってみたいと思うけれど、そんなに都合よくカナブンがいない。
いつかきっとやってやろうと思っていたら、ある時たまたま公園でカナブンを見つけた。緑色のやつだった。
早速捕まえて、家まで走って帰った。
母に、糸を出してくれるよう頼んだら、何に使うのかと云う。カナブンに付けて飛ばすと答えると、家の中で飛んだら嫌だからベランダでやりなさいと云われた。
それでベランダにカナブンを置いたら、糸を準備する間に飛んで逃げた。
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