分からねぇのが怖ぇ
話題の奴、見ました。
結論から言えば怖い。
見る前からホラーだとわかっていたから多少ましだったけど、これを3日間にわたって、何の説明も無しに見せられたら、よりすっごい怖かっただろうな。
これを見て改めて思ったのは、やっぱり「わからない恐怖」が一番面白いし怖いってことだった。
そもそもが怖がりの自分はあんまりホラーには詳しくなく、むしろ疎いくらいなのだけど、他人を怖がらせることは非常に好きだ。(最悪。)そういう意味では、自分は怖さというものにはかなり興味がある。
前述のとおり、自分は最も人の恐怖を掻き立てるものは「わからない」という概念だと思ってる。
これは昔見たホラー映画の「来る」がものすごく影響している。
この映画は小説が原作で、その題名は「ぼぎわんが、来る」だった。
映画化にあたって、「来る」にタイトルが変わり、脚本もかなり変わったのだけど、この見せ方が非常に良かった。
原作ではぼぎわんと呼称されていたその存在が、映画ではその名づけがほとんどされていない。あくまで「あれ」というような呼び方をされていた。
(後半でぼぎわん呼びされてたような気もしてきたけど定かではない)
名づけという行為は、人間がある概念を理解するために最初に行う行為だ。存在はその名前に縛られる。「○○は○○だ」というような分類、定義がされると、その存在はその定義の範疇を超えることができなくなる。その名前で理解された存在は、いつしか対策されるようになり、矮小化、または神格化されるようになる。
その行為が「来る」では排除されていた。そのため、その「何か」の恐ろしさは底が見えず、またどうすればいいのかも終始わからないような状態だった。それを理解することができないのだから、対策のしようもない。
こういう、人の理解を大きく逸脱するものを人は根源的に恐れている。
だからこそ、人は判らないものを判ろうとする。わからないということ自体が怖いから。
それを踏まえて今回見た「このテープ持ってないですか?」を考えると、そういう形の怖さをこれでもかと見せつけてきたように思う。
特に第2夜はマジで怖かった。
視聴者投稿のビデオは、明らかにおかしいことはよくわかるが、何がおかしいのかまではこちらにはどうしてもわからないようになっている。
23時間目にもう一回呼びかけてみるけど、多分来ないと思う。
多分わかるように作ってはないし、論理もないと思う。
だけど、人間はそれを理解しようとする。だからその不気味で気味の悪いビデオを凝視してしまう。しかし最終的に分かるのは、何もわからないということだけ。
ただただ、何か良くないことが、ゆっくりと大きくなっていくのだけをずっと感じさせてくる。
まぁ、第3夜に関してはもはやわからなさ過ぎて恐怖の範疇を超えてしまっていた感じはあるけど…。
こういう、「よくわからないから怖い」みたいなのは、youtubeのショート系のホラー動画で結構見かけるきもする。
一般人の投稿やレポに見せかけたタイプというか。
見たやつで特に秀逸だなと思ったのは以下のショート。
現実感があるうえで、おかしいことだけは判るという。
こういうのってやりすぎると陳腐になるから、このくらいが一番怖い気がする。
こういうタイプのホラーでTRPGをやりたいなとずっと思ってはいる。
ただどうしても難しいのは、自分が知っている中でホラーのTRPGはクトゥルフ神話だけなのだが、改めてクトゥルフはホラーかといわれると割とそうでもないという…。
神話生物が体系化されてしまっているからしょうがないといえばしょうがない。誰もガチホラーとしてクトゥルフ神話をやろうと思ってないだろうし、本当のホラーシナリオにするなら現実にもっと寄せないとだめなんだと思う。
もうCoCのシステムだけ拝借した現実シナリオとかにするしかないんだろうな。それをするのはあまりにも自分の書いたTRPGシナリオに自信がありすぎる気もするけど。
いつの間にか「このテープ持ってないですか?」の話から完全に逸脱してた。
所謂怪異や化け物が出てくるような作品ではないけど、ずっと胃の底が押し上げられてるような、じっとりとした嫌さを感じ続けたい人は是非見てほしい。
ちなみにこれを見た後に夕暮れの街に繰り出したんですが、いつもと世界の見え方が違って滅茶苦茶怖かった。
ホラーが現実に侵食してるような感覚を得るのは久々かもしれない。
夜、すっと寝られない気がする。