
三日坊主を回避できた
1月も後半ですが、明けましておめでとうございます。
しのまゆこです。
昨年末に「物書きになる!」と宣言してから、年が明けて初投稿。これがnoteのエッセイ4作目となった。4作書けたということは、「三日坊主」を回避できたことになる。めでたい。
3作目はクリスマスに書いたのだが、これで終われば「三日坊主」になってしまうと、年始から人知れずヒヤヒヤしていた。
私は有名な作家でもなく、固定の読者さんはおろか、編集者や担当者がいるはずもなく、いると言えば今の所は、「まゆこさんが有名になったら、俺は早期退職して釣り三昧だぁ」と、吉田類の酒場放浪記を観ながらごきげんに晩酌をしている夫が、リビングにいる。
なので、「物書きになる宣言」が三日坊主になろうが、一日警察署長になろうが、特に誰にも迷惑はかけない。
ただ年末に大宣言したので年始から三日坊主だと大恥である。私本人は、かなりヒヤヒヤしていた。
そう、「三日坊主」は私のあるあるなのだ。
例えば、冷蔵庫には野菜を3回しか漬けたことがない糠床が眠っているし、家計簿は3ページで終わっており、昨年始めた太極拳の公民館講座も3度しか行ってない。
まだまだある。
3度ほど上に乗ってぶるぶると揺れてみた健康器具、3品作ったことのあるレシピ本、3回通ったきりのボルダリングは回数券を買わなくて本当に良かった。
思い出せば思い出すほど、書けば書くほど笑いが出てきた。
自分の過去の行いで1人で笑えるなんて、なんと安上がりなんだろう。エコだ。SDGsだ。
こうも三日坊主だと、職業「三日坊主」でもよさそうなものだ。まぁ、決して我が子に胸を張って言えるような職業ではない。
確か大学生の頃に開設したブログも、三日坊主だった気がする。学生時代、約20年前の青春時代のブログ。ふと思い出すと無性に懐かしくなった。なんだか少しむず痒いような照れ臭いような、、、あの頃の私はどんな事を綴ったのであろうか。
3日分の記録でもいいから読み返してみたくなり、昔のアカウントで検索をかけた。
ブログは出てきた。
「はじめまして~!!
特にドンナ日でもありませんが、ブログを始めることにしました。
筆武将・・・筆不精な私ですが、がんばります!更新できたらします!
自己紹介
出身:福岡(北九州の方)
現在地:広島(酒の町西条)
職業:現在は大学院生です
好きな卵:めんたいこ
好きな炭水化物:とんこつらーめん
好きな野菜:いも
このブログは私の好きなものについてUPしていくつもりです」
この1話で終わっていた。
あまりの恥ずかしさに、私は自宅のリビングで顔から火を噴いた。
1話で終わっている己の根性の恥に加え、痛すぎる内容の恥が追い風となり、爆風とともに顔面から大炎を出火した。
恥が恥に引火してもう火が止められない。
3日どころか1日だった。
三日坊主のほうがまだ3倍も働いている。
1日だ。
三日坊主ではなく一日消防署長だ。
代打で呼ばれた消防イベントで、アドリブですべった駆け出し芸人の一日消防署長だ。
こんな事なら地方の地下アイドルが、ミニスカ消防士コスプレで一日消防署長のタスキを掛けてくれた方が千倍良かったのに、とSNSも大炎上だ。
大炎を前にあわあわと口を開けて、私はしばらく動けなかった。誰かに助けて欲しかった。
正気に戻って鎮火せねば。。
まずは、そうだ、ここが自宅のリビングで良かった。1人で良かった。うっかりブログを見たのが、カフェなどではなく自宅で本当に良かった。夫や友人と一緒でなくて良かった。
三日坊主、そうだ、三日坊主の話を書いていたのだ。
三日坊主のことを思い出そう。
“ 三日坊主!! ”
私は三日坊主を呼んだ。
「邪魔だ!どいてろ!」
呆然とたたずむ一日消防署長を押しのけて、私の脳内に三日坊主たちが颯爽と現れた。そして消火ホースから勢いよく放水、鎮火した。
やっとの思いでブログを閉じ、私はへなへなとソファーにへたれ込んだ。
人は極度に恥ずかしい思いをすると、おかしな事になるようである。
落ちついて現場検証に入る。
ブログの日付を思い出してみた。
2006年、こんな大火事を起こしているとは、自分に何があったのだろう。
2006年といえば大学院生、修士課程2年の頃だ。
生物の研究室に所属していた私は、ちょうど修士論文に追われ、深夜まで研究室で実験と論文の執筆を繰り返していた。
実験、論文の検索、論文の執筆。
実験、失敗、実験、検索、執筆、失敗、実験、検索、、、、、
合間に、無意識で食って寝てシャワーを浴びたりはしていただろうが、キャンパスをハイヒールで歩くキラキラ眩い文系学部の女子達の背後を、睡眠不足とカップ麺で吹き出物の出来た顔に、ジーンズとトレーナーでヘルメットを被り、こそこそと原付バイクにまたがって家と学校を往復する日々だった。
気も狂える。
火事が起こるのもしょうがない。
私は今回の火事についてはお咎め無しとした。
さしづめ、深夜の実験の合間に頭が興奮し、ブログでも書いてみようとしたが、朝になって冷静になったのだろう。そして、結局ブログを続ける暇も熱意も無く、そのうち忘れてしまったのだろう。
とにかく、このブログが1話で終わっている事に関しては、二日酔いの朝くらい何も覚えていないが、どうせ私のことだ。まぁこんな所かと思う。
さてさて、三日坊主のエピソードを振り返っていたら、危うく20年前の火の不始末で大火傷を負うところだった。
だが、これまたエッセイのネタになってくれた偉業を讃えて、三日坊主にも一日消防署長にも感謝状を送りたい。
好奇心が旺盛でよく考えもせず色々なことに手を出すため、私は三日坊主になりがちだ。
そんな中、小学生からの書道やピアノは10年近く続き、大学時代の居酒屋アルバイトは同じ店で6年、胚培養士という仕事では同じクリニックで16年勤務した。
数えきれない三日坊主達を土台に、ハマった事はそれなりに楽しく長く続いている。
今回三日坊主を回避できたnoteのエッセイも、きっと長く続くに違いない。何より今、楽しく文章を執筆している。
こうやって振り返ってみるとたくさんの三日坊主達が私の人生を彩ってくれていた。
そのうちこの坊主達と、寺でも作ろうか。