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真似るとあそびは隣り合わせ
「ケータイちょうだい、おかいもの(ごっこ)にもっていくから。」
そう涙を流す娘の姿が二、三日続いた。
その場で夫がアトリエから小さな収納箱と外国通貨を持って娘に「おみせやさん、やらない?」と声を掛けた。
彼が収納ケースに紙幣やコインを分けて入れ、店のレジ前のような環境を作り出そうとしている姿を追うように、私は急いで電卓とバスケットを取りに行った。そこにキャッシャーと買い物かごがあれば、より本物らしいあそびになるのではないのかなと咄嗟に思いつき、娘のあそびの環境を調整しながら整えた。
こども時代にこどもでいれることを私と夫は全力でサポートする。
「は〜い、これください。」「あい、ぴっぴっ。」
「ちょっとまってくださいね〜。」「ダーンくんもおかいものする?」
ハイトーンで軽快な声のやりとりの下、お買いものごっこと称したおままごとをたのしんだ。
気が付くと娘のイライラも天井の上の方へと消え去ったようだ。
電子機器に大人が日常的に触れていて、こどもだけ触れないことをこどもが不自然に思う。
それでも、こどもから遠ざけておきたい物や環境なのであれば私たちがひと手間かけて工夫すればいい。
こどもは大人の生活シーンをよく見ていて、それを真似るようにあそびに代える。
私たちの生活シーンを真似ようと、我が家でも娘が電子機器を欲しがる姿を見せた。
ならば、真似てほしいと思う生活を送ることがあそびの環境づくりの近道だ。
電子機器を取り上げたり、排除するように「だめ」を突きつけることは、こどもの世界からすれば到底理解に苦しむだろうし、余計に執着し出すきっかけになるかもしれない。
ものづくり、土いじり、洗濯干し、犬たちの世話、料理、掃き掃除、読書、対話、皿洗い、ヨガをする…身体と心と頭をよく動かしながら一日を送ろう。
その様子を見ながらこどもが真似たい、自分もやってみたいと主張した時こそ、成長の種が発芽する大チャンス。どんどん真似てもらって、思う存分参加してもらえることだらけなんだから。
時間がかかってもいい、うまくやれなくてもいい。家が汚れても大丈夫。
身近な大人のやることを真似て、身体と心を動かしながら取り組むことで、こどもは真剣そのものの顔を見せるし、時に少々危険なことにも対峙し、命燃やすようにあそびきる。日が暮れる頃、それはそれはもう身体はよく疲れているから、月の光の下では自然と眠たそうだ。
「今」を生きるこども時代にしか築けない生きる力がある。
こども時代をどうか思いっきり謳歌してほしい。そんな特別な限りある時間が私にもあったことを思い出しながら。よし、今日もせっせこよく働こう。