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北の記憶①〜真夜中の墓地

私の仕事は、少しばかり特殊で、人様の話を聞く事が多い仕事です。
具体的に何をしてるかは、後の講釈にして、本題に・・・
尚、私が書き残す話は、全て許可を得ております。
但し、聞いたお話なので、綺麗にオチが付くモノではありません。

では、始めましょう。

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北海道で大学生から研究生までを過ごした時の話の1つです。

その頃、矢張り心霊現象や怪異体験などが騒がれていて、
北海道でも、お昼のローカル番組で毎週特集が組まれるなど、
全国的に「こわいものブーム」でした。

その日、
私の部屋には、最近車を買ってやたらとドライブに誘うHと
私とHが所属する剣道部のマネージャーSが来ていて、
3人で駄弁っていました。
すると、付けっ放しのTVからローカルのワイドショーが始まりました。
「今日は、Jさん、Kさんの日だっけ?」
有名になった姉妹占い師のコーナーが始まりました。
「これ(姉妹占い師のコーナー)でさ、
●●●墓地が取り上げられたんだ、絶対、面白半分で行っちゃいけない、
って言ってたぞ」
Hは、半ば真面目な口調で言いました。
「私、旭川に生まれてもう20年ですけど、行った事ないんですよね・・・」
Sがポツリと言いました。
「まぢ!?」
私とHはその言葉に反応しました。

「ええ?お二人して何ですか、もう、
Jさん、Kさんも行ってはいけないって言う位だから・・・」
Sは、私とHが遠方から来て、自分が地元ということ、
それなのに、有名スポットに行った事がない
それが、少し恥ずかしい気持ちになったとみえて、
ムキになって返して来ました。
「マネージャーが行った事ないとは、意外だな・・・」
Hは、しげしげとSを見ました。
「何ですか、Hさんだって行った事ないんでしょ、」
二人の視線が私に向きます。
「あ、俺は明るい時間に、一度行ったよ・・・」
「おおぉ」
二人の視線が「どんなところ?」と私に催促します。
「何も、特別な物はないし、何にも起きなかったし、
萎びた、寂れたところだよ」
「・・・」
HとSは、分かり易くガックシという感じでした。
そんな彼等を見て、つい
「んじゃあ、行く?」
と言ってしまいました。
その時、二人はどう思ったのか後で聞いたのですが、
Hは、
私くんが行こうと言うから安全だろう、話のネタに心霊スポットは良い!
Sは、
私さんが行くなら大丈夫だろう、男二人いれば女一人守ってくれるだろう
と、軽い気持ちで
「やったあ」
と喜んだそうです。
どうせなら、暗くなってからが良いということで、
私が以前行った時の話して時間を潰しました。

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私が行ったのは、1年程前の夏の昼間、
四輪部の先輩の「タイムアタック」に同乗した時の事でした。
「あ、●●まで来たな・・・お前、心霊スポットとか興味あるか?」
先輩は、煙草に火を点け話だしました。
「そうっすね・・・」
私も、無いですとは言い辛く話を合わせて返事をしました。
「じゃあ、昼間だけど」
そう言ってカーブでタイヤを鳴らし、そこへ向かいました。
「はい、ここー」
「へえっ?」
「お前は、内地(北海道外)だから知らねえだろうが、
結構、有名で怖い所よー」
山深い道路沿いにイキナリ白い看板があり、
「●●●殉難烈士慰霊碑建立」
の文字が書かれていました。
「ここが、●●●墓地だー」
ああ、大学の噂話で聞いた事あるなあ、位には知っていました。
「この道入って行くんだけど、窓閉めとけよ、
何か入って来ると嫌だからな・・・」
私は「●●●殉難烈士慰霊碑建立」の文字を見ながら、
慌てて窓を閉めました。
「この道は良いんだけど、ほら、あれ・・・」
そう言うと車を直線に近い本道から左に曲がる道の入口に停め、
「ここよぉ、ここ。この先がヤバいんだぜー」
と先輩が加え煙草のまま言いました。
「何がヤバいんですか?」
「この先に、仏像があるんだけど、
間違ったお参りしたら、呪われるんだって・・・
去年のヤツ、大学やめちゃったけどさぁ、
(車)2台で来てさ、間違ったお参りして
帰りの道で、2台のハズが3台になって、パニくったって話だ」
「・・・へえ、その3台目つうのは、何だったんすか?」
「謎の車のまま、いつの間にか消えてたんだと、
1台目と2台目の間にいつの間にか、間違いなくいたんだと、
だから、怖いんで、この道は曲がらねえこった」
タイヤを鳴らして本道を進みました。
突き当りは、墓地の様でした。
車がバック等しなくても良い様に、
道が出口(来た道)へと繋がっていました。
「ここですか、噂の●●●墓地は・・・」
「そ、俺は呪われたくないから降りないけど」
「いい、降りないんっすか?」
「だって、呪われたら嫌じゃん」
「じゃあ、俺も降りないっす」
「なんでえ、ビビりやがって」
「先輩が降りるんなら、降りますよ!」
「だから、俺は降りないって」
という会話をして、帰りました。
ただ、道中誰とも会わなかったし、誰もいなかったし、
白い看板が妙に印象に残りました。

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「途中を曲っちゃイケないんだな」
Hは、何度もソレを口にして、ハンドルを捌きました。
時間は、23時頃で私達3人は、
●●●墓地へHの自慢の車で向かっていました。
「わー、わー、私怖くなって来ました・・・」
Sが後の席で、独りゴトの様に話します。
「何だよー、そんな事言うなよー俺まで怖くなって来て
ハンドル捌きミスっちゃうだろ!」
Hは、訝し気にSの発言を制止ました。
「だあって、後ろの席、独りなんですよ・・・」
Sは負けずに言い返します。
「そんなんだったら、行くのやめる?」
仕方なく私が切り出すと
「えええ」
「もうここまで来ちゃってるのに」
等と、二人に反論され、何だかんだで行きたいんだなあと思っていると、
暗い車外に、見覚えのある風景が現れました。
「おっ、見た事ある風景が見えて来た、もうすぐのハズ」
そう言うと、HもSも黙ってしまいました。
「ええっと、白い看板があるんだよなぁ・・・あれぇ・・・」
暫く走ったのですが、入口にあった白い看板が見当たりません。
そうして行く内に、見覚えのない場所まで来てしまいました。
「あれえ?白い看板なんだけどなぁ・・・途中なかったよなぁ」
夜でも十分見える位の白さだったのに、と思っていると、
「あれじゃねえ、神様か何かが、行くなって隠しちゃったんじゃね」
と今まで無言だったHが言いました。
「そうですねぇ、行った事のある私さんが見つけられないなんて・・・」
SはHに続けて言いました。
真夜中に路上の車、怖さも手伝って夜の闇が深い感じもし始めました。
「おっし、帰ろ・・・次のタイミングで明るい時間に来よう」
そう言って、帰る様に促しました。
HはUターンして、帰路に付きました。

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「何か残念ですね・・・」
Sが切り出すと、Hが
「帰りにこのまま走ってて、その白い看板を、万が一見つけたら、
行ってみようぜ、」
と言ったか言い切る前に、白い看板を見つけました。
Sが
「わっ、白い看板、ええー、あるのー?」
Hも
「マネージャー、見つけるんじゃないよー」
真夜中の道沿いに、ポツンと
「●●●殉難烈士慰霊碑建立」
の文字が書いてある看板が、
この世と、別世界を分けるかのように建っていました。
「何で行き道で見落とした?」
私は奇妙でなりませんでした。
こんなに白い看板を見落とすなんてあるだろうか?
看板の近くに停まったまま、暫くこの奇妙な出来事の話をしていました。
「よし、言ったんだから行こう」
Hが言いました。
「じゃあ行こう、その前に確認な」
●●●墓地への道は直進で途中曲っちゃいけない、
窓は閉める、
一番頂上に行ってUターンして戻る、
HとSと、やっちゃ駄目な事を言い合って、ゆっくりと
頂上への道を進みました。
何となく、夜の闇が深い感じが増している様に思えました。
それで、二人の緊張を和らげようと、
「この道の途中に曲がり道があって、」
と話し始めた途端、
四角い道一杯の何かが迫って来て、車ごとその四角にぶつかりました。
Hが
「何だあ、アクセルが、進まない、アクセルが、」
と叫んだと思ったら、
私も四角に飲み込まれ、息が出来なくなりました。
バタバタと暴れたんだと思います。
急に息が出来ないのでモガいている私に気が付いたHは、
「私くん、私くん」
と、私を揺さぶります。
「キャーッ、キャーッ」
後の席でSが騒ぎます。

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この後、数分意識をなくしてしまい、
後から、Hに聞いた所によると、
急に、車が前に進まなくなった。
アクセルをべた踏みしても進まない。
ギアをチェンジしても同じ事、
車内でSの声が響いていて、その声が車外へ出て行かない感じがした。
私は、苦しそうにモガいて、何度も呼び掛けると
謎の呪文みたいな事を、何の事か分からないままだったが、
ずっと口にしていた。
私が白目を剥いた時に、微かに「バック」と聞き取れたので、
今までの前に進む動作を、後ろに行く事に変えた。
すると、始めは思い通りの動きをしなかった車だが、
ズボッ
と抜けたのを体感したと同時に、バック出来る様になった。
そのタイミング位から、急に呼吸が滅茶苦茶新鮮になり、
下の道路まで来れた。
と言う事でした。
Sが可成り取り乱していましたが、私が気が付いてからは
落ち着いたそうです。
取り敢えず、私の部屋に戻りました。
3人とも、何が何だかという状態でしたが、
帰り着いたのが、明け方だったのもあり、
「やっぱり、面白気分でああいう所に行っちゃ駄目だ」
と至極真面なことを言い合う程度で、その朝は解散しました、
勿論二度と、●●●墓地に近寄る事はありませんでした。
ただ、Hが帰って寝た時、
人生初めての金縛りに合い、
その最中、ずっと耳元っで、●●語で喋り掛けられたと
言って来たので、対抗手段を教え、
それで、一応治まったそうです。

書けるのはここまでです。
何故、行きは無かった看板が、帰りはあったのか?
道一杯の四角は何だったのか?
何の為にHに喋り掛けたのか?
何にも答えがありません。
実際の不思議な話は、オチなんていうものがある方が少ないのです。

どっとはらい。

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