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「底付き体験」を経て反発するのだ。[くま日誌]327号
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以前、地理人さんが何気なく仰っていたことにこんなことがありました。
「最初、自分で仕事をし始めて、収入が激減しました。その状態に慣れるために数ヶ月その様子を眺めていました。」
「結構、変わってる人だなぁ」とその時は思っていたのですが、何か自分の中に引っかかるものがずっとありまして、事あるごとにその発言を思い出してしまうんですよね。
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なんで地理人さんは、そんなことしたんだろう?
地理人さんに質問するチャンスもあったのですが、その時はあまり引っかかりがなく、少し時間が経過した今になって徐々に引っかかってくるものがありまして。
地理人さんも、自分で仕事をし始める前に収入が激減することは、分かっていたと思うんですよ。でも実際に預金残高が毎月減っていく様子を見て、感情が動かされたんだと思うんですよね。
ここからは完全に自分の妄想ですが、地理人さんはこの先が見通せぬところからくる焦りや不安といった感情が綯い交ぜになった「なんとも形容しがたい感情」を利用して反発しようとしたんじゃないですかね。
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アルコール依存症の治療は「底つき」体験から始まると言われます。
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<底つき体験とは>
底つき体験は、依存症などをこれまで否認してきた中で、強い逆境への直面を通じて、現実の受け入れを始める体験です。
まず否定する「否認」の状況があって、これに対して「底つき体験」があったことによって、受け入れの方に進んでいきます。
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いよいよこのような現実に直面したんだということは、強い危機感を生み、それが反発力となり、新しい現実を立ち上げることができるという側面もあるのではないかと思いました。
この辺りのリスクとリターンのバランスというのは、自分も答えが見えておらず日々思索しています。
しかしアルコール依存症における「底つき」体験というものを経て、次の現実を立ち上げていくというメタファーは、現状の延長線上にない未来を創ろうとしているすべての方にとって示唆に富む考え方ではないでしょうか。
■まとめ
・以前、地理人さんは、自身の収入が激減する様子を眺めていた。
・それはアルコール依存症における「底付き体験」と同じように、突きつけられた現実に正面から向き合い、受け入れ、そして反発する力に変えるためではなかっただろうか。
・私たちも、あえて自身を「底付き体験」に追い込むことで次のステージに進むことができるという、そんな側面もあるのではないだろうか。