【『僕のヒーローアカデミア』を読んで】
脚本家もすなる国語講師が全力で読書感想文で作品愛をぶちまける
(という企画。
最終話に際しておもいがあふれやまぬ過ぎ)
わたしが1年半と少しの間、
最も愛してきた物語は徹頭徹尾
【特別な力はなくとも、
誰もが誰かのヒーローたり得る】
という人類讃歌だったと思っている
『僕のヒーローアカデミア』作品概要
週刊少年ジャンプで10年に渡って連載され
今週2024年8月5日にその幕を降ろした
堀越耕平作『僕のヒーローアカデミア』
(通称ヒロアカ)は
人々が超人的能力を
ごく普通に有するようになった時代にあって
まったくの無個性として生まれた中学3年生の少年が憧れの人から力を授かり
屈指のヒーロー養成校で仲間と切磋琢磨し
(特に因縁の深い幼馴染と)
ぶつかり合いながらプロヒーローを目指して
学生生活を送る
その陰で巨悪は蠢いていて
少年たちは否応なく戦いに巻き込まれ
各々の意志で仲間と支え合いながら
戦いに赴いていく
そういう作品だ
きっかけ
観始めたきっかけは大きく2つある
推しの舞台俳優だった方が
お仕事の軸を声優に移され
ご出演されていた作品であったから
それが賢プロダクションご所属の
北田理道さんである
https://www.kenproduction.co.jp/talent/107
ご本人X https://x.com/RIDOW
演劇の巨人・つかこうへいの劇団で
直接薫陶を受けていた最終時期の
役者さんのお一人であると思う
わたしは彼の「ロマンス」や
「飛龍伝」でのお芝居も
随分と好んでいて何度も劇場に足を運んでいた
(ヒット作だと映画『ボヘミアン・ラプソディ』で
リーダー ブライアン・メイの吹替えを
なさっていたので北田さんのお芝居に
接したことがある方は実は多いと思う)
しかし
アニメは現在7期の2クール目という超長寿番組で(作中ではまさに最終決戦の
最終局面を迎えんとしている)
本誌話数は430で終え、
アニメも6期開始時点で114話を超えていて
正直腰が重すぎた
※ちなみに北田さんは第1話から
シンリンカムイという
プロヒーロー役でご出演であるし
他にも主人公のクラス委員長・飯田天哉の兄の、
プロヒーロー・インゲニウム/飯田天晴役と
隣のクラス1年B組の委員長・骨抜柔造役と
兼ね役多数で、舞台を拝見していた身としては
一粒で3度おいしい作品である
もうひとつ、ある塾で最も切れ者だなと思っていた理系の中でも難関専攻の東大院生と
女子中学生のヒロアカ談議を小耳に挟んだから
この2人が熱を入れて話すとは??と
※実はこの時、北田さんご出演作なことは
完全に念頭から消えている
過年のコロナ禍であった余波だと思うが
映像を観る耐性がやや高まっていなかったら
決して本誌連載には追いつけはしなかった
そんなこんなで2023年末
呪術廻戦や鬼滅の刃を観終えた弾みでようやく
ヒロアカの蓋を開ける覚悟を決めたのだった
この時わたしはアニメ6期のおしまいに追いついて2023年年末には人生で初めて
ジャンプ本誌を定点的に購入し始めた
30も半ばを過ぎてそういう作品に出逢って
月曜日を心待ちにする人生の時間があったことは
大きな幸いだったと思っている
(大人げないとは思っているが
そういう感傷は犬にでも喰わせろ感
いいものはいいのだ)
§
ヒロアカのことに話を戻す
この作品が何を手渡してくれているのか
そのことをこの1年近く考えている
ただの勧善懲悪ではなくて
ただ正義が正しいわけでもなくて
悪にも理屈も感情もきちんとあって
そもそも冒頭から
このご時世にかなり取り扱いにくいのでは
というくらい過激ないじめのシーンがある
綺麗ごとだけじゃない描写と
綺麗ごとを貫ききる物語の芯が
何よりも好きだと思う
そこに打たれてアニメ2話のクライマックスで
既に泣いたのがわたしである
主人公・緑谷出久(通称デク)から放たれていた
「"個性"がなくてもヒーローは出来ますか?!」
に対して物語の軸へと誘うガイドであり
師となっていくNo.1ヒーロー・
オールマイトからの応えが、
これがこの物語の結論だということに
作者の人へのあたたかさに奮えて震えた
曰く、「君はヒーローになれる」
このセリフで
"この物語はすべての人を受けとめるんだ"と
その心意気に感じ入って
どうしようもなく涙が出たことを覚えている
これは赦しの物語であり希望の物語なんだな と
あれから何度このシーンを読んでも観ても
胸が熱くなって泣けてしまう自分がいる
我々読者は、超人的な異能”個性”を持てるほど
生物として種としての進化に辿り着けてはいない
主人公・デクと同じ”無個性”="木偶の坊"なのである
デクに齎された福音は過たず
我々読者にとっても福音となる
そのことをアニメ2話、
漫画1話で遺憾なく発揮する
堀越耕平という作家の素晴らしさに打ち震えて
ここまで作品を愛してきたように思う
そして作者からの包容力ある示しは
最終話で見事に再度我々に手渡されたと感じている
最終話というものは賛否両論様々で
何なら論われやすいものであると思う
(先年の『鬼滅の刃』もなかなかだった)
打ち切られたり、そうでなくても
自分の描くキャラクター像や作品観との齟齬
というのは許容しがたいものであるから
しかしこのヒロアカ不満が随分少ない
少なくとも早4日経つがいまだ目にしていない
ファンは最終話に歓喜して
ますます熱を上げているくらいの印象である
本誌終了と劇場版公開間近の頃、
NEWS ZEROでインタビューがあった
他のところでもヒロアカは
ずっと小さいことを描いているんです
というニュアンスの発言になるほどとなっていた
”これは隣人に手を差し伸べる物語”であって
ゆえに”誰もがヒーローになれる物語”なのだ
誰も置いていかないスーパーヒーローじゃない、
特別な力を持てないことを悲観する必要もない
そんなものがなくても
誰かに寄り添おうと手を差し伸べられたら
それだけで世界は少し、
だけど確かにやさしくなれる
そんなことを教えてくれた気がしている
主題歌分析は改めてしたいと思いつつ
7期第2クールのED「六等星」のタイトルが
ひとつの解なのだろうなとぼんやり考えていた
万能なたった1人=一等星の力によってではなくて
六等星のようなささやかさで
互いが互いを照らし続けあたため続けることが
世界をすくう
そんな物語が
この愛しくもクソったれな現代を
すくいうるのかもと希望を抱けている
巨星はいつか落ちて亡ぶわけよ
だから永久機関にはなりえない
わたしはこれから先の未来
世界平和に一歩近づくためと本気で信じて
『僕のヒーローアカデミア』を全力で
薦めてまわって生きるし
ヒロアカ仕込み以前から教育業の行動指針だった
「傷つけ傷つくことをおそれず
他人の人生に踏み込む」は
「余計なお節介はヒーローの本質」と一緒だ!
と感涙に咽びそうだったので
これからも続けていく所存であるし
より貫いて生きていきたい所存である次第
次はキャラクター考察か主題歌考察か
とにかく続く。笑
『僕のヒーローアカデミア』とは(粗い総括)
作者から
全人類に贈られた
やさしい福音であったとおもう
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