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初心者ためのAggregated Blockchain解説
※この記事は、2024年8月23日に公開されたPolygon Labsによるブログ記事 "The Beginner's Guide to Aggregated Blockchains" を翻訳したものです。
初心者向けに技術的なことを深掘り!Aggregated Framework(アグリゲーテッド・フレームワーク)とは?なぜこれがユーザー、開発者、チェーンにとってWeb3体験をよりシンプルなものにするのか?
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ブロックチェーンのスケーリングのためのアプローチとして、”Aggregated(集約型)” のカテゴリーは全く新しいものです。それは、既存のいくつかの方法のうち優れた要素を取り入れて組み合わせています。「Aggregated blockchain(集約型ブロックチェーン)」とは、どのようなアプローチなのでしょうか?
私たちは、「接続されたチェーン間で、共有された流動性とステートへのアクセスを可能にする、水平方向にスケーラブルなマルチチェーンエコシステム」と定義しています。
集約型のアプローチは、独立した複数のチェーンを集約することで、スケーリングアーキテクチャに全く新しい方法で取り組んでいます。この方法については、この下にある記事の中で詳しく説明しています。
ユーザーにとってAggregated network(集約されたネットワーク)とは、ワンクリックで異なるチェーン間のトランザクションを可能にするものです。通常のインターネットでのオンライン体験のように、プロトコルのネットワークを体験することができます。
開発者やチェーンとってAggregated networkとは、他のブロックチェーンのユーザーベースや流動性にもアクセス可能になる仕組みです。開発者は共有リソースの取り合い、初期流動性の確保、ユーザーの獲得について心配する必要がなくなり、マーケットフィットに集中できるようになります。
チェーンは比類のないネットワーク効果を享受しながらも、それぞれの主権を維持することができます。
これはまだ始まりに過ぎません。Polygon Labs、Succinct Labs、Toposwareなどの貢献者による中立的な技術であるAggLayerの、最初のコンポーネントのいくつかは既に稼働しています。2024年4月、大手暗号資産取引所OKXは、彼らがPolygon CDKで開発したZK L2であるX LayerをAgg Layerのunified bridge(統合ブリッジ)に参加させることを発表しました。これにより、5000万人以上のユーザーがAggLayerのネットワーク効果と統合された流動性にアクセスできるようになります。さらに他のプロジェクトの参加についても発表をお待ちください。
ここから、初めての方向けにその仕組みと、なぜこれが過去15年間のブロックチェーン研究の進化である理由を説明します。
モノシリックチェーンとモジュラーチェーンの出会い
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現在のクリプト業界におけるスケーリング論争は、主に二つの面の只中にあります。
片一方では、モノシリック型(あるいは統合型の)アプローチにおいては、スケールの問題を「共有された流動性とステートへのアクセスのスケーリング」と定義して解決しようとしています。基本的にモノシリックチェーンでは、全てのdAppと流動性が単一の環境に存在します。統合型チェーンは、いわば世界のSolanaのようなもので、これらはコンセンサス、データ可用性、実行を担当するノード上で動作し、さらに決済レイヤーとしても機能します。
設計上、モノシリックチェーンはそのチェーン上に構築されたdAppsの相互運用性を実現することができますが、他チェーン間ではこれは実現できません。そのブロックスペースが流動性とステートを断片化するのであれば、集約により多くのブロックスペースを追加しても意味がないだろう、という仮説です。モノシリック派は、チェーン同士は統合されるべきだと主張します。
一方モジュラー派は、どんなモノシリックチェーンであろうと、Web3における将来的な需要に対応し切ることはできない、と主張します。
インターネット規模のクリプト環境がもし実現できたとしたら、確かにモノシリック型のシステムではその負荷を処理しきれないでしょう。
これは、現在モノシリックチェーンが成功に導いている設計そのものに一部起因しています:全てのデータを一箇所に抱え込むことは「State bloat(状態の肥大化)」につながり、並行実行やローカルでの手数料市場のための大量の最適化を行ったとしても、共有リソースを巡る競争は避けられないでしょう。
そのため、モジュラーチェーンにおいてはブロックチェーンのコンポーネントを分割します。機能的には、モジュール性により、より多くのチェーンがクリプトの実行レイヤーとして機能することになります。
それぞれのアプリケーションには、セキュリティ・レイテンシー・UXのための異なる要件が存在します。開発者たちは、それぞれのアプリケーションに最適化された実行環境を構築する必要があります。
モジュラー型アプローチを取ることで、state bloatと共有リソースを巡る競争の問題は解決されます。
I wrote this post to go deeper into what the Aggregated Blockchains Thesis means and to describe the Aggregation Layer in more detail.https://t.co/csj3vlnmcm
— Brendan Farmer (@_bfarmer) February 5, 2024
The scaling debate feels stuck between the monolithic and multi-chain/modular arguments.
I argue that neither approach…
しかし同時に、モジュラー型は、統合型の重要な価値を引き継がず、断片化をもたらしてしまいます。
どれだけの流動性とブロックスペースがそのマルチチェーンエコシステムに追加されたとしても、それは断片化されてしまうのです。そして、結局面倒なブリッジや出金に遅延を発生させてしまう暗号経済的なセキュリティを要してしまい、エコシステムが拡大しにくい要因を作り出してしまいます。
ここで登場するのが、両者の長所を統合したAggregated(集約型)のアプローチです:モジュラーなマルチチェーンアプローチで、決済はイーサリアム上で行われますが、同時に全ての接続されたチェーン間で流動性とステートの共有を可能にし、集約型ネットワークに統合された感覚をもたらすことができます。
ユーザー目線では、まるでシングルチェーンを使っているような体験で、複数チェーン間を行き来することができます。
AggLayerの暗号技術的安全性
AggLayerは、初めての集約型ブロックチェーンネットワークです。接続された全てのチェーンからの証明を受け取り、チェーンの状態が一貫していることを検証し、その証明を集約し、イーサリアムに決済する、という信頼性の高い中立的なサービスです。
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これが何を意味するかというと、開発者はユーザーに取って最高のユーザエクスペリエンスを提供でき、またマルチチェーン環境の中で成長することができます。何を構築するにしろ主権を維持しつつ、他のブロックチェーンの相互運用性も実現することが可能です。
したがって、AggLayerが統一性を提供する一方で、開発者はPolygonCDKのようなモジュラーツールキットを使用して独自にチェーンを作成・カスタマイズした後すぐにAggLayerの流動性にプラグインすることができるようになります。Polygon CDKはモジュール性を、AggLayerはモノシリックチェーンの統合された体験を提供するのです。
基本的にAggLayerは、異なる実行環境をもつ異なるチェーンが、イーサリアムよりも低いレイテンシーで安全に相互運用できるようになる、シンプルで暗号技術的に強化されたサービスとなります。AggLayerは、チェーンの二重決済や無効なブロックの提出がない場合に限り、イーサリアム上で決済が行われることを暗号技術的に保証します。
これについて詳しく見ていきます。
AggLayerは2つのことを可能にします:
資産の代替可能性:L1資産がロックされている統一ブリッジを使用するためのチェーンの安全性を提供
低レイテンシーでの相互作用:チェーン同士がイーサリアムよりも低いレイテンシーで調整または操作できます。
この二つの特徴により、複数チェーン間で流動性の共有を可能にします。
まずは1点目、「資産の代替可能性」
イーサリアムの観点から見ると、AggLayerは単一のロールアップのように見えるでしょう。これは多くの協力な意味があります。
現在、チェーンを跨いだ取引を実行したいL2エコシステムのユーザーには二つの選択肢があります。一つ目は、資産をイーサリアムに引き出し、別のL2にブリッジする方法。このやり方は煩雑であり、しかもOptimistic proofの場合は7日間の遅延が発生します。二つ目は、サードパーティのブリッジングサービスを使用し、宛先のチェーンで合成トークンを発行うる方法です。
これに対し、AggLayerは第三の方法を提案します。
AggLayerにおいては、全ての接続されたチェーンがunified bridge(既に稼働しています)を共有するため、AggLayerは資産の代替可能性を可能にします。全ての独立したチェーンにおけるL1ネイティブアセットが、同一のブリッジにエスクローされることを意味します。
将来的に、Polygon zkEVMのユーザーがX LayerのユーザーにPOLを送りたい場合、X Layerにラップされたり、ローカルな合成バージョンではなく、ネイティブのPOLを送るようになる、ということです。
ネイティブトークンはこのunified bridgeを移動することで、他のどのチェーンにおいてもネイティブトークンとして使用することができます。
Building a unified environment for value and liquidity.
— Polygon | Aggregated (@0xPolygon) April 23, 2024
Clip from @CoinDeskPodcast, "The Protocol" pic.twitter.com/nzl6Tt2brZ
そして2点目、「低レイテンシーでの相互作用」
AggLayerはクロスチェーントランザクションを可能にするために、イーサリアム上でプルーフが検証されることを各チェーンに強制しません。
イーサリアムよりも低いクロスチェーンレイテンシーは、上で概説したAggLayerの基本的なセキュリティによって可能になります。(この仕組みについては、Polygon Labsの共同創設者Brendan Farmerの投稿をご覧ください。)しかしこのレイテンシーを達成するには、共有シーケンサーのような調整メカニズムの開発が必要です。これは基本的に、チェーン間の調整を可能にし、高速で原子的トランザクションを可能にするマーケットプレイスを意味します。
そして最も良いのは、これが画一的な要件ではない、ということです。AggLayerの一部には低レイテンシーを経験する箇所もあり、一部ではそれほど密接には統合されていなくとも安全に相互運用される箇所も出てくるはずです。
AggLayerにおいては、全てのチェーンが常に同期された状態を持つわけではない代わりに、参入障壁を極限まで下げることを目指しています。ここではチェーン同士がペアとして接続されていたり、サブセット間で非同期的な相互作用を行ったりします。
これらは全て、まだ構築中のものです。Polygon Labsのコア開発者が構築しているAggLayerのコンポーネントは、チェーン間の調整を担当するわけではなく、それを行うための安全性を保証することに責任を持っていることにはご留意ください。
開発者・ユーザーにとってのAggLayer
How do the AggLayer and Polygon CDK affect dev workflows? pic.twitter.com/8kRwA0Awl4
— Polygon | Aggregated (@0xPolygon) April 21, 2024
根本的な設計として、AggLayerは論理的に分離された新しいチェーンという形でキャパシティを追加することが可能です。
これは集約型アプローチの非常に価値がある、重要な特性です。これにより、開発者たちが可能な限り最高のUXを構築できるようになることを目指しています。
例えばWeb3ゲームを想像してください。Web3ゲーム、高スループットで安全を最優先するDeFiプロトコルと共有リソースの取り合いをすることは、どう考えても理に適っていません。
その代わりに、ゲーム開発者はPolygonCDKを使用して、論理的に分離された実行環境の構築をすることを選び、AggLayerに接続することを選ぶことができます。こうすることで、開発者はゲーム用チェーンのNFTが集約されたネットワーク内の他の場所にあるDeFiマーケットプレイスの流動性にもアクセスすることができます。
同様に、DeFi重視のチェーンは、統合型チェーンの落とし穴を心配することなく、人が多く集まるゲームエコシステムが存在するチェーンのユーザーにアクセスすることができます。このとき、ゲームのチェーンと共有リソースを取り合う必要はありません。
従って、それぞれの独立したネットワークが垂直方向にスケールを続けながら、接続されたネットワーク全体も水平方向にスケールすることができます。
ユーザーにとってはこれは多いに便利なUXです:統合型チェーンを使用しているような感覚で、モジュラーなマルチチェーンネットワークを使用することができるのです。
それはまるで、今私たちが使用しているインターネットと同じぐらい自然なものになるでしょう。
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