もしものもしも~もしも牡羊座がシンデレラだったら5~
第一王子「姫、明日もいらっしゃるのですよね?もし、また私と踊っても良いとお思いでしたら、あそこのテラスで待合ましょう。私はきっとあなたが来て下さると信じて待っていますね。」
そう言いながら、そっと牡羊(シンデレラ)の手を取り口づけする第一王子だった。
無言のまま、お辞儀をしてその場を離れる牡羊。
牡羊『え???なんで俺ってドキドキしてるわけ??いやいやいや!!!ないない!』
かぼちゃの馬車に乗って帰宅途中、ずっと自分の中のもやもやな気持ちと戦う事になった、牡羊だった。
牡羊「お、俺は・・・、たとえ体が女になったとしても、絶対魚ちゃんへの想いは失くさない!!!他の奴になんかうつつを抜かすもんか!」
決意も新たに舞踏会4日目に向かった牡羊。
第一王子が言っていたように、テラスに直行する牡羊。
牡羊「う~~、なんか緊張する~~。」
が、待てど暮らせど第一王子は来ない。
おひつじ「・・・。ちっ!いつまで待たなきゃんだよ??もう、見捨てようかな。」
牡羊が見限ってテラスから中に写ろうとしたその時。
第一王子「申し訳ございません!姫を待たせてしまったようですね!」
と、深々と牡羊にこうべをたれる第一王子。
ちょい、ドキッとしてしまった牡羊。
牡羊(シンデレラ)「そんな事ございませんわ。昨晩のお約束通り、テラスにお越しいただいて嬉しい限りですわ!」
跪き牡羊(シンデレラ)の手を取り口づけする第一王子。
下からの目線で、じっと自分を見つめて来る。
第一王子「あなたにお会いしたあの晩から、いつもあなたのコトばかり考えてしまっている自分がいます。」
牡羊『俺もそうだった・・・。初めて魚ちゃんを見たときから・・・ずっと、魚ちゃんのコトが気になってた。 今、魚ちゃんは何してるんだろ?とか他に好きな子とかいるのか、とか。
だから、同じ研究会になった時、俺は浮かれあがってた。・・・今、第一王子もそんな気持ちなんだろうか?』
それから後は、第一王子とひたすら一緒に踊り続けていた牡羊。
モブ女1「第一王子とずっと踊っているあの女性はどなたかしら?」
モブ男1「さぁ?お見かけした事のない女性ですね。ですが、王子が夢中になるのも分かるような、人を惹きつける魅力に溢れた方ですね!」
牡羊『俺が踊りやすいようにサポートしてくれるから、めっちゃ踊りやすいし楽しい!!』
第一王子と踊る事が楽しくて、つい時間を忘れていた牡羊だったが、11時半を告げる鐘が鳴った事に気が付いた。
牡羊(シンデレラ)「とても楽しい時間を過ごせて、ありがとうございます。わたくし、門限が0時となっておりますの。ですから、今日はお暇させていただきますね!本当に、今日は楽しく過ごせて感謝しておりますわ。」
第一王子は、牡羊の前にひざまずき手の甲にくちづけをした。
第一王子「もう、お別れなのですね!明日は舞踏会最終日。11時半から0時まで花火が打ち上げられます。ご両親にもお話をして、是非明日はわたしと一緒に花火を鑑賞いたしましょう!」
会釈をして、大急ぎで家に戻る牡羊(シンデレラ)。
帰りの馬車の中、珍しく一人、想いにふける牡羊。
牡羊「王子・・・。靴がなくても俺のコト見つけれるかなぁ・・・・。・・・って!!!違うから!これは浮気じゃない!!」
翌日、あまり気が入らぬまま家事をこなしていた牡羊。
姉1「昨日、第一王子を独占していた女って、誰なのかしら?」
姉2「あの、少し古臭いドレスからみて、左程裕福な家柄ではなさそうですよ。」
姉1「第一王子は無理かもしれませんが、どなたかいい方、姉2は見つけられたのですか?」
姉2「それがですね、お姉さま!わたくし、第二王子とお見知りおきになれましたの!どなたかのご推薦があったとかで、わたくしに興味を持っていただいたようですの!」
牡羊『お!カストルに情報流すように頼んでて良かった!ちゃんと、姉2のコト、第二王子に情報ながしてくれたんだ!
あとは、第一王子と姉1が結ばれるように段取り出来れば・・・・。』
そう思いつつも、胸の奥がチクりとしたような気がした牡羊だった。
舞踏会5日目。
とうとう正念場が訪れた。
牡羊としては、第一王子に会う前にカストルと話がしたかった。
カストル「リリィ、やったじゃないですか!今、城内ではあなたが何者なのかという話で盛り上がってますよ!」
と、城に着いた途端カストルが寄ってきて、牡羊に話しかけて来た。
牡羊(シンデレラ)「なんか目立っちゃってるのは、まずいんだよw」
カストル「どういう事でしょう?」
牡羊(シンデレラ)「以前話したように、お家再建計画で、姉達を出来れば王族もしくは裕福な貴族と結婚させたいんだ。
だから、私が目立つ必要なかったのに!」
カストル「ご自分が王族に嫁ぐ選択はないのですか?」
牡羊「ない!!自分には心に決めた人がいる!」
牡羊(シンデレラ)の断言に目を丸くするカストルだったが。
カストル「ふふっ・・・。では、第一王子に姉1さんの事、アピールし続けてくださいね!そこさえクリア出来たら、あとは私がなんとかしましょう!」
牡羊(シンデレラ)「うぉ!!カストル、なんていいやつ!!!」
思わずカストルに抱き着く牡羊だった。
その日はさすがに最終日という事で、人も多く、牡羊(シンデレラ)も多くの人と踊った。
踊った相手には、必ず名前を告げた。
牡羊(シンデレラ)「〇〇領の姉1と申します!そろそろ婚姻相手を探しています。どなたかご縁がありそうな方をご紹介していただけませんか?」
イイ感じの反応が得られた感じがあったので、そろそろ帰ろうと思ったその時。
いきなり、左手を掴まれた。
振り返ると・・・。
第一王子「やっとお会い出来ましたね!あなたと今日はずっと一緒に居たかったのに、それが許されぬ御身を嘆いておりました。ですが、今ここで出会えたのは運命なのでしょう!もうすぐ、フィナーレの花火が始まります!この花火を最後まで共に見た者同士は結ばれる、といういいつたえがあるのです。」
牡羊(シンデレラ)「お会いできて光栄ですわ、第一王子!ですが、わたくし、門限を伸ばしてもらえる許可をいただけませんでしたの・・・。」
第一王子「それでしたら、城にお止まりなさい。明日の朝、私がご両親にご挨拶に伺いましょう!」
牡羊『うっわ~~、どうしよ?って、花火が上がり始めた!城に泊まるとか、魔法がばれちゃうだろがw』
そっと、牡羊の肩を抱いて花火を見つめる第一王子。
しかも、思ったよりもその力は強かった!!!!
牡羊『なに???こいつ、軟弱そうに見えて意外と力強いなwど、どうしよう!!!このままでは魔法が溶けてしまう!!!!』
そして、24時を告げる鐘が鳴り始める。
牡羊『やばい!!!』
花火がフィナーレに向けて盛大に打ち上げられる。
一刻の猶予もなかった。
ほぼ5m近い階段を降りきるのも、ドレス姿の自分では下の階についた途端に魔法が切れるかも、だった。
考える暇はなかった。
停車場で、魔法が解けたねずみ達も回収しなくては!とも思った。
全身の力を込め、第一王子を振り切って走り出した牡羊。
第一王子「お待ちください!」
牡羊を追いかける第一王子。
だが、普段鍛えていた牡羊は速かった!
そして
牡羊「下は植木もあるし、クッションになるだろ!」
階段なんぞには行かず、停車場に一番近いバルコニーを探し、そこから一直線に停車場を目指して飛び降りた!!!
ぽきっ!!!
牡羊「えええぇ???絶対割れない靴じゃなかったっけ??・・・・。ヒールのかかとが折れた・・。それは、あり??」
と思いながら、折れたヒール部分は見捨てた牡羊だった。
牡羊「ん?ヒールないほうが走りやすいかも?」
猛ダッシュで、馬車の馬役をやっていたねずみ達を見つけた。
牡羊「ねずこ~~、ねずじろ~~、家帰るぞ!かぼちゃ!置き去りにしてごめんよ!」
エプロンのポケットに2匹を回収し、猛ダッシュで家に走り出す牡羊。
牡羊「馬車なんかには追い付かせないぜ!!!」
日頃の体強化の特訓のせいなのか、自分の住処まで戻って来るのには、馬車よりも3倍速かった。
舞踏会最終日を堪能した両親と姉達が戻ってくる頃には、すっかり普段使いの自分に戻っていた。
舞踏会終了の翌々日、お城から使いの者がやってきた。
使いの者「このたびの舞踏会にて、第一王子のお気に召した女性をさがしておる。この、ヒールのかかとに見覚えはないか?」
と、使いの者が差し出したのは、牡羊が残して行った折れた靴のかかとだった。
牡羊「そ・・・それは!!!姉1の靴のかかとです!今、証拠の靴を持ってきますね!!!」
地下の洗濯室からガラスの靴を持ってきた牡羊。
使いの者「おお!この靴とぴったりと合うではないか!」
そんなこんなで、姉1は無事第一王子に嫁ぎ、同時に姉2も第二王子に嫁いだ。
領地は優遇され、生活も潤い始めた。
ゴミ問題も、すっきりと解消で、城もピカピカ。
新しい下働きも増え、料理人も雇えるくらいにまで、家は立て直された。
牡羊(シンデレラ)「私、もうここには必要のない存在ですよね?てか、無駄飯食いのいらない人ですよね?お父様、お母さま。」
父「な、何を言ってる!お前も、どこか良い所に嫁がせるから、私を信じて待って居なさい!」
義母「そうですよ!第三王子にはまだ、お相手が見つかっていないとか!姉達があなたを第三王子に嫁がせるよう頑張っているのですよ!」
牡羊(シンデレラ)「姉達が努力しても、さすがに第三王子と当家との縁談は他の貴族が許さないでしょう。
それに、第三王子は引きこもりで、人に会いたがらないと聞いております。もし縁談が上手く行ったとしても、私は、第三王子に合う事もなく生涯を閉じるかもしれません。私は、そんな方との縁談はイヤです!お父様やお母さまのお役に立てず、申し訳なく思っています。でも、私はずっと耐えてた。そろそろこの家から解放してください!!」
そう言いながら、猛ダッシュで家を飛び出た牡羊。
父「り、リリィ!!!」
義母「って、早くあの子を捕まえるのよ!大事な金づるなんだから!!!」
と、使用人に指図する義母。
が、誰も牡羊(シンデレラ)に追いつけなかった。
牡羊「まぁ、あいつらなら俺に追いつく事はないだろな~」
と思いつつも爆走する牡羊の前に一台の馬車がすれ違う。
と、馬車から顔を出す人物が。
カストル「おぉ~~~い!」
牡羊(シンデレラ)「おお???」
カストル「丁度、お前の家に行くところだったんだけど?どした?」
牡羊(シンデレラ)「俺、家、出たんだわ。もうあそこには戻らない!」
カストル「で、どこに行くのさ?」
牡羊(シンデレラ)「とりあえず城下町?かな??」
カストル「wwwそれ、場所とか分かってる?」
牡羊(シンデレラ)「いや、全然w通りすがりの人に聞けばいいかな~~~って。」
カストル「君の猛ダッシュでは、人に会う前に通り過ぎてしまうよ?まぁ、馬車に乗りなよ。城下町まで連れて行ってあげるよ。」
馬車の中で、牡羊は次にどうしたいのか、全く計画がないままに家を飛び出した事をカストルに話した。
カストル「そんな事だろうとは思ったよ。城下町にいる私の友達の所に行こう。あそこなら、3人で暮らせるくらいの広さもあるだろうし、なんとかなるさ。」
牡羊(シンデレラ)「3人?って??」
カストル「私と、君と、私の友人と、の3人だけど?」
牡羊の手を取るカストル。
その右手中指には王家の紋章が刻まれた指輪が!
牡羊(シンデレラ)「・・・・。今まで気が付かなかったけれど、それって、王家の紋章の指輪?」
カストル「!やっと、気づいてくれたんだ!」
牡羊(シンデレラ)「ええええ?なら、カストルが?!」
牡羊「俺の王子!???」
カストル「そ、そ、俺が第三王子(笑)ね!」
と言いながら、何故か顔が牡羊に近寄ってくる。
牡羊『こ、これは!!!!』
や、やばいって!!!
これって・・・・・・。
あ、抵抗しきれない・・・。
なんでだ??