勇気の箱
筒状の合金鋼の貯金箱に500円硬貨を入れる。
貯金箱には「30万円貯まる」と書かれている。
お金を入れた時の音の具合で、どれくらい貯まったのかなんとなくわかる。
もうすぐ、この貯金箱もいっぱいになる。
そうしたら・・・・。
新入社員として、勤め始めて3か月程。
やっと少しずつ仕事にも慣れ始めた頃の事。
休憩室に設置された自販機で飲み物を買うのが日課になっていた。
その日も自販機でいつもの飲み物を購入した。
丁度、それが最後の一本だったらしく、売り切れのランプがついた。
「あれれ?売り切れちゃった?」
背後から声がした。
あまりにもガッカリした感じだったので、自分が買ったばかりの飲料を譲ってあげた。
それから何度か顔を合わせる事があり、次第に親しくなっていった。
その頃から、自販機で必ずお札を使うようになった。
500円貯金をするためだ。
この貯金箱がいっぱいになったら、勇気を出して告白する、そう決めたから。
貯金箱がやっといっぱいになり、緊張な面持ちで自販機の前で待つ。
だがその日は会えず仕舞い。
せっかく勇気を出したのに、とガッカリしたが少しだけホッともした。
「明日こそ!」
だが、次の日も会えなかった。
そんな日が何日か続いた。
こんな事は今までなかった。
転勤の時期でもないし、そんな話もしていなかった。
どうしたのか心配になり、迷惑かもと考えながらも、以前に聞いていた部署を訪ねて見た。
「休暇を取ってイタリアに行ったようですよ」
そうなんだ、旅行だったのか。
ほっと胸をなでおろす。
「あちらで、結婚式を挙げるんですって、ステキですよね」
★★★★★★★★★
ペンタクルA(左側)
物質的成功やチャンスを得る、新たな一歩を踏み出す
ワンド3の逆位置(右側)
進みたいのに進めない、停滞、チャンスを逃す。
ペンタクルは金貨です。
その金貨を手に持っているところから、貯金箱を連想し、また新たな一歩という意味も含ませてみました。
主人公は、相手の事を全然分かっていなかったし、もっと早く言っていれば状況は変わっていたのかも?
このお話、主人公も相手の性別も不明にしています。
お好きなように想像してみてください_(._.)_
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