12星座もしもシリーズ24(射手の悩み編)

寮前グランドの雪の中、射手が獅子につぶやいた。
射手「俺、学校辞めようと思うんだ。」
獅子「・・・・・そっか・・」

射手「・・・・。」
獅子「理由聞いてもいいか?」

射手「ん・・」
いいとも悪いともとれるような曖昧な返事をして、黙りこくる射手。

獅子「無理して、話さなくてもいい」
むくっと起き上がる獅子。

射手「つ、つ・・・つまらなくなった!何もかも!!」
突然大声で告げる射手。

驚く獅子。
射手「自分の存在意義自体が分からない。自分がどこへ行こうとしているのか分からない。この学校で勉強していて、その先に何がある?」
堰を切ったかのように、一気に吐き出すように言葉を連ねる射手。

射手の言葉の意味するところは、獅子には分からなかった。
でも、云わんとする気持ちはなんとなく分かった気がした。
獅子「俺、あまり難しい事はわからん。射手は、俺と違っていろんな事をこなせるし、俺なんかよりずっと頭もいい。」

射手「そんな事、ない・・」
獅子「俺、器用じゃないし、ほとんどの事でお前に負けてると思う、悔しいけれど(苦笑)でも、俺がお前にたった一つだけ、勝ってると思えるのは・・・・」

射手「・・・・・」
獅子「やり続ける事、かな。お前が、ここまで出来たから、これはもう分かった、と終わらせた事を俺はその先まで続けれる。お前が知りえなかった、その先にある物を俺は知る事が、手に入れる事が出来る。」

そんないい感じを突然ぶち壊す声が!!

牡羊「ひゃっほ~~」
双子「ズルいぞ!!」

突然上から牡羊と双子が!!
牡羊は体を大の字に広げ、双子はなんと一回転をして雪中に落ちて来た!

双子の1回転を見て、俄然燃える射手!!
射手「俺も1回転やってやる!!」

その姿を見て・・・
獅子『お前に必要だったのは、強敵と書いて『友』と読む!だったのか(苦笑)まぁ、人生に一点の悔いなし!なんて、俺らにはまだ早いわ』
そう言いながら、双子、牡羊とじゃれ合う射手を眺める獅子だった。

冬場の天候は変わりやすい。
日も落ち、辺りもすっかり暗くなってきた。
先ほどから、深々と降っていた雪が急に細かな粒となり、風も横殴りになって来た。

牡羊「う、うわぁ!これ、やばい奴だ!」
双子「早く戻った方が良さげ!」

射手「し、獅子!!」
獅子「ど、どうした??」
射手「俺ら、退路を確保してなかったわ・・・」

獅子「牡羊、双子、1階で出入りする場所、確保してきたか?」
牡羊「俺たち、獅子と射手がグランドで遊んでるの見て、混じりたくて来ただけだし。」
双子「まぁ、そんなに慌てなくても大丈夫なんじゃね?天秤か水瓶、寮にいるでしょ?」

獅子「誰かスマホ持ってるか?」
射手「雪にダイブするってのに、そんなの持って来るかよw」
牡羊「だね~~」
双子「うむw」

双子「あそこの窓、天秤じゃね?灯りついてるからいるよね?」
牡羊「おおおお~~~~い!!!!!天秤!!!!!!聞こえるかぁ???」
他の3人も一斉に声をあげ、天秤を呼ぶ!


部屋でイヤホンをして勉強中な天秤。
今日やっているのは、英会話だ。
イヤホンから流れて来る大音量の英語
「Write as a strong enemy and read with a friend」

微かに、どこかで自分を呼んでいる声がした気がしたが
天秤「ふっ。邪念か?俺を惑わす悪霊たちめ!迷わず成仏しろ!」
と、心の中で十字を切る天秤。
一心不乱に勉強を続ける天秤が、外の双子達の声に気が付く事はなかった。


獅子「うっわ、やべぇ!寒くてもよおしてきた・・」
射手「お、俺も・・・・」
青ざめる二人。

ちょうどその頃、学園から寮へ続く渡り廊下を歩く人影が!

牡羊「誰か、学校からこっちに来るぞ!」
双子「あの窓に行こう!」

ほぼほぼホワイトアウトに近い状態ながら、寮の明かりを頼りに雪の中を移動する4人。
獅子「牡羊、俺の肩に乗れ!」
牡羊「了解!」

さすがの牡羊でも、深い雪の中をひょいひょいとは移動できない。
が、それでもそんなに時間がかからずに獅子の背中に乗った。
獅子「今から、あの窓にお前を投げる!」
牡羊「了解!」
牡羊の腰をつかみ、全力で窓に向かって投げる!!

獅子「ゲイ・ボルグ発動!!」
全力で牡羊を投げる獅子!

窓まで真っ直ぐに飛んでいく牡羊。
窓手前で着地し、窓を叩く!

牡羊「こ、ここを開けてくれ!!!!」
窓を叩く牡羊に・・・

水瓶「ん?どったの?」
外から、クレセント錠を指さす牡羊。
水瓶「開けれって事?なんでそんなとこにいるん?」
と、訝し気に想いながらも窓を開ける水瓶。

窓を開けたと同時に風と雪が入って来る!

真っ先に廊下に飛び込んできた牡羊。
双子、射手、獅子と次々窓から入って来る。

猛ダッシュで、どうやらトイレ方面に向かったようだ。

獅子、ちらりと水瓶を見て
獅子「助かったぜーーー!」

と言いながら、大急ぎで廊下を走って去って行った。

後に残されたのは、水瓶と彼らの体から落ちた大量の雪だった・・・。


渡り廊下に突然残された水瓶。
周囲の様子を見る・・・。

かなりの広範囲で雪が落ちている・・・

水瓶「見てない事にしちゃ、ダメかな?・・・・」
といいつつ、掃除用具を持ってきて、必死に雪を集めて窓の外に捨てて行く。

数回、窓から雪を捨てる。
だんだんと窓下に残っていた雪解け水が凍り始め、その上に窓から入り込んだ雪がうっすらと積もっていた。

窓から雪を捨てようと、窓に近づいた水瓶だったが・・・
窓下の廊下はつるつるだった。

滑って、激しく転ぶ水瓶!
軽く後頭部を打ったらしく、少しぼぉーっとする。
水瓶「いった~~」
直ぐに立ち上がろうとするが・・・・

「めりめりめり・・・」
窓下の氷に全身が囚われていた!!

水瓶「え??ふ、服は脱げばよさげだけど・・・・」
頭を持ち上げようとするが、どうやら髪も廊下の氷にくっついてしまったようだ。
水瓶「んんん~~、さすがの俺も、後頭部全禿げは嫌かも・・・。てか、その前に痛すぎww」

なんとか、無理やり氷から剥がした右手でスマホをポケットから取り出す。
水瓶「出てくれ!天秤!」




天秤「ん?そろそろ風呂行かなくちゃ、だな」

廊下に出る天秤。
が、
天秤「なんじゃこりゃ!!!」
グランドに面した窓が全開に!

慌てて窓を閉める天秤。
廊下は雪だらけだった・・・。

天秤「ったく!!!誰か滑って転んだら不味いだろ!」

せっせと雪を片付ける天秤。

が、やはり窓下は凍っていて・・・

天秤「う、動けん!!!だ、誰か助けて!!!」
パンツのポケットのスマホが鳴っているが、手が氷にくっついていて出られない天秤だった。




氷に囚われてしまった、水瓶と天秤!
果たして、二人は無事救われるのか?

次回、多分誰にも分らぬ展開が君を待っている!!かもね(笑)


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