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もしものもしも(もしも蟹が人魚姫だったら3)

王子(?)が毎朝来るという情報の元、明け方、その海岸に上がり人間になれる薬を飲んだ蟹・・・。

薬が効き始めると、強烈な痛みが全身に走り、あまりの痛さに気絶してしまった蟹であった。

蟹が人間になる様子を見届けていたモブ人魚3。
蟹が倒れている岩場に近づく人影に気が付いた。

モブ人魚3「やった!王子が来たみたいですよ!上手くやってくださいね!」
その場をそっと離れるモブ人魚3だった。

蟹『・・・・え??ここって??』
目が覚めた蟹は、思っていたよりも豪華なベッドに横たわっていた。

隣国姫「あ、目が覚めたのね!良かった!」
蟹の手を取り本当に心配していた感じで、とても喜んでくれているのが感じ取れた。
隣国姫「あなた、運が良かったわ!あの日、アルデシア王子があなたを見つけてくれなければ、海に飲まれて死んでいたかもしれないわ。」

アルデシア・・・王子、なんだ。あの人。
この人の話している事は理解できる。
なら、意思を伝えるのも声が出なくてもなんとかなる!!
身振り手振りで、感謝の気持ちを伝える蟹。

隣国姫「あなた、声が出せないの?」
大きく肯く蟹。
隣国姫「そうだったの!海辺で衣服を纏わぬ姿のあなたを王子が連れて来た時、私、あなたを物の怪なのかと思いましたの。」

小さく首をかしげる蟹。
隣国姫「人を喰らうという、人魚の化身!なんて思ってしまったのです。許してくださいね!こんな可愛らしい方をそういう目で見てしまって!」

蟹『す、鋭い!けど、人を食べたりしないです!というか、この人とても素直というか・・・・』

隣国姫「私、クリノスって言います。あなたにお名前あったほうが便利だと思うので、私が付けてさしあげてもよろしいですか?」
大きく肯く蟹
クリノス「アンナ、というのはどうでしょう?す、少し平凡過ぎますか?」
満面の笑みを浮かべ、クリノスの手をとり、ほおずりする蟹。
クリノス「気に入っていただけたのね!嬉しいわ!」

とそこへ、部屋の扉をノックする音が。
侍女がドアを開け、アルデシア王子からの伝言を受け、クリノスに伝える。

アルデシア「クリノスさま、侍女の遣いがあり、海岸に辿り着いた少女が目を覚ましたとのご報告をいただきました。面会させていただいても、よろしいでしょうか?」
クリノス「アルデシア王子、来てくださったんですね!どうぞ、アンナにご面会くださいまし。」

蟹のいるベッドに近づくアルデシア。
クリノス「あなたを見つけてくれた王子ですよ、アンナ。」
アルデシア王子「気が付いて良かった!あなたを見つけたとき、何故か私はどこかであなたを見た事があるような気がしたのです。もしや、私と同じ船に乗っていたのではないですか?」

蟹『私のコト・・・覚えていてくれたんだ!!!やった~~!!!最初は見かけだけで、半魚人となんか結婚したくなくて、王子と結ばれよう!って思ったケド。美形なだけじゃない、心まで清い!尊い!!』
ぶんぶん、頭を縦に振る蟹。
クリノス「アルデシア王子、どうやら、アンナは声を出す事が出来ないようなのです。」
アルデシア「おぉ、それは・・・。いろいろ大変な思いをしてきたのでしょうね。沈没したあの船に乗っていた人は、ほとんど助からなかったのに、こうやって、沈没から数日たってこの場所に流れ着いたのも何かの縁、なのかもしれませんね。」

あの嵐の日、アルデシアが必死に救命船で乗客を脱出させていたのだが、その救命船もほとんどが荒波に飲まれ沈んで行ったらしかった。
蟹『王子、自分を顧みず乗客達を助けようとしたのに・・・報われなかったんだ・・・』

蟹『王子、あなた優しすぎる・・・。仮にも一国の王子でしょ?庶民のために、自分を犠牲にしてまで助けようとするなんて!!・・・・。なんか・・・・魚ちゃんみたいな雰囲気なのよね・・・・。』

夜も暮れ、一人、部屋でベッドに横たわり考える蟹。
蟹『てか、王子と結ばれなきゃ泡となって消える条件で人間になったわけだし・・・。そこはなんとしても譲れない!・・・・クリノスもいい人だし・・・裏切って王子を横取りとか・・・・ないわ~~てか、それやったら人間的にアウト!って気がする』

コンコン。
ドアをノックする音が。
クリノス「アンナ、まだ起きていましたか?」
蟹(アンナ)『答えようが・・・・』
どうしよう?と考えていると、ドアが開いた。

クリノス「ごめんなさい、勝手に入って来てしまいました!」
クリノスは手に小さなベルを持っていた。
クリノス「アンナとのお話方法を、イロイロ考えていましたの。で、このベルを使ってみたらと思いましたのよ!1回ベルをならせば、「OK」の合図。2回なら「少し待って!」という感じで。」

クリノスは、小さなベルを蟹に渡した。
クリノス「それと、アンナがイヤでなかったら、元気になって動けるようになったら私の侍女になってもらえませんか?」
なんで、見ず知らずの人間(元人魚)を侍女に??
首を傾ける蟹。

クリノス「なんの面識もないのに、と思われましたよね?」

クリノスの口から語られたのは想像だにしなかった、クリノスが王位継承権1位を持つこの国ムトンと、ピスケス王国王位継承権3位のアルデシア王子の婚姻による陰謀、策略が跋扈する世界だった。
蟹『ええ??・・・人魚姫ってそんな話だったっけ???てか、王子はクリノスとなんとしても結婚しなきゃ、なんだ‥‥。そこ、失敗すると、ムトン国のピスケス王国侵略が始まるの??』

蟹『でも、でもでもでも!!!自分も泡となって消えたくない!なんとしても、王子と結ばれなくては!!考えなきゃ!!!!絶対打開策はあるハズ!』

クリノス「この国のどこに王子を陥れようとする人物が隠れ潜んでいるとも分からない状況なのです。私は、なんとしても平和裏にこの事態を解決したい!全く素性がわからぬあなたですが、私、直感しましたの!あなたも、王子を愛しているのですよね?」

蟹(アンナ)は大きく肯いた!!
蟹(アンナ)『な、なんか、勝手に事態は私の都合の良い方向へ??でも、王子のコト、なんとしても守る策は必要ね!』

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