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君と遊ぶ誰もいない市街地

自分のお金で初めて買ったCDが何なのか、正直断言できない。
スピッツの作品であることは間違いないんだけど、ハヤブサか三日月ロックかフェスティバリーナのDVDかわからない。

わからないけど、とりあえず三日月ロックという体で話を進めたい。

ところで「アルバム」という形態は斜陽だそうだ。
配信サービスやサブスクが活発化したことでDJのような聴き方をする人が増え、好きな曲だけのつまみ食いが横行しているらしい。

私は、アルバムというものは最初から最後まで通して1つの作品だと思っている。
それを教えてくれたのがスピッツの三日月ロックなのだ。

スピッツとして10枚目のオリジナルアルバム。
前作ハヤブサで得た硬質な雄々しさをポップに昇華している。
きれいでかっこよくて切ない1枚。

この三日月ロック、何がすごいのか。
一言で表すと「曲順」である。
アルバムは曲のごった煮なんかではなく、懇切丁寧に並べられたものだとよくわかる。

順に見てみよう。

・夜を駆ける〜水色の街 
この2曲が散々語り尽くされてることは百も承知だけどやっぱりすごい。
フェードアウトがこんなに有効に使われてる曲ない。

そこからジャーンとコードだけを鳴らす水色の街。
水色の街って先行シングルなのに、夜を駆けるの後に存在するためだけの曲みたい。
それぐらいハマってる。

・さわって・変わって
1、2曲目で切ない雰囲気ができあがったところでこれ。
明るい。振れ幅。

・ローテク・ロマンティカ〜ハネモノ
ここ!ここ超大事!
ここに言及されてるのあんまり見たことないんだけど、夜を駆ける〜水色の街に勝るとも劣らない名繋ぎだよ。
ローテク・ロマンティカの3分30秒あたり、キュルルルル…って音がするの。

そこからハネモノのイントロ、あの虫の羽音みたいな音につながるの。
これいいよね…。
キュルルルル音が活かされてる。

・ガーベラ〜旅の途中
アルバムの終盤。
締めに入る頃。
ガーベラは真夜中が似合う曲。
部屋真っ暗にしてイヤホンでこの曲聴くのが本当に好き。
自分と曲以外何もない世界に浸れる。

続く旅の途中は夜明けを想起させる曲。
まだ明けきっていない夜と朝が混在するかわたれ時。
白く澄んだ早朝の匂いがする。
朝露の降りた清浄な空気を含んでる。

・けもの道
で、最後に完全に夜が明けると。
旅の途中ってアルバム最後の曲として全然問題ないと思う。
でも旅の途中で終わらずけもの道で締めることに意図を感じてしまうなあ。
三日月ロックって911の影響下で作られた作品じゃないですか。
だから最後に希望を示したかったのかなあって思ってる。

夜を駆けるで閉鎖的に始まり、けもの道で開放感を与えて終わる。
1枚で「夜」という特別な時間を旅できる。

私にとってとても大切で特別な1枚です。

気が向いたら他の曲とか細かいところも追記する。

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