遅死の日

去る2024年7月25日(木)、Spotify O-Eastにて開催された中畑大樹50祭でそれは発表された。
大樹ちゃんが50祭の締めの挨拶で「帰り道に何かあるかも」というようなことを言っていて、ステッカーでももらえるのか?などと思いながらツイッターを開いたところに飛び込んできた知らせ。

驚愕した。
野音でシロップである。
野音でsyrup16gを観れるのである。

あまりのビッグサプライズに50祭の記憶がふっとんだほどだった。

ずっと野音でシロップを観たかった。
遅死10.10とゴーストピクチャーズのDVDを繰り返し観て(ゴーピクは空気が重すぎてあまり繰り返しは観てないけど……)、野音でのシロップのライブに対する憧れを募らせてきた。

その後はオフィシャルの1次先行にいそいそと応募し、無事チケットを確保。
「まあ当たるっしょ」となめくさった態度で申し込んだが、それが大間違いだったことを後に知る。

1次先行の当落発表後、タイムラインにわらわらあふれる「落選」の報告。
どうやら今回かなり倍率高いらしい、ということにようやく気付く。

そもそも野音のチケットはどのアーティストでも売れやすいらしい。
確かに私も去年踊ってばかりの国の野音に行ったのは、「野音だから」という理由が大きい。
改修前の野音でライブを観てみたかったのだ。
が、改修は遅れ、こうしてシロップの野音も観れた。

そして日程。
3連休の初日という遠征のしやすさこの上なしなスケジュール。

さらに付け加えるなら、遅死10.10の再現というライブコンセプトは、最近はご無沙汰だけど当時聴いていたというオールドファンに刺さるものがあっただろうし、フジロックの中継などで新たにシロップに興味を持つ人も増えたのだと思う。

と、複数の要因が重なり、争奪戦と化した今回の野音。
私は運良くチケットを確保できたが、チケット詐欺まで現れる始末だった。

みんな観れたのかな? 観れてるといいな。
シロップファンって、シロップに対する情というか念というかが大きい人が多そうだから……。

今年のシロップはシロップ比で考えるとかなり活動が活発だった。

シンクロニシティ24で凛として時雨と対バンし、中畑大樹50祭ではPeridots、tacicaとともに大樹ちゃんのお誕生日をお祝いし(シロップが一番お祝い感ありませんでしたがね……)、フジロック、ライジングサンと20年ぶり(!)の夏フェス出演、LAD MUSICIAN30周年のショーで生演奏を披露。

全部よかった。
新曲祭りだった時雨との対バンも、「あなたと出会って30年ぐらい経つけど、ずっとファンです」という言葉を聞けた50祭も、あの鮮烈すぎるパープルムカデを聴けたフジロックも、トンデモセトリで度肝を抜かれたライジングも、熱狂と困惑が同時に押し寄せたLADのショーも、全部よかった。

でも今年はまだワンマンを観れてなかった。
ライブヘルシー福岡公演以来の478日ぶりのワンマン。
ワンマンということは、2時間ぶっ通しでシロップだけを観れるということ。
会場にいる人は全員syrup16gを観に来ているということ。
否が応でも期待が高まる。
11月2日を指折り待った。

10月後半、仕事に殺されそうになりながらも、天気予報のチェックだけは欠かさなかった。
誇張抜きで毎日5回ぐらいは天気予報サイトを見ていた。

最初は降水確率60%ぐらいだったのに、台風ができてから一気に雲行きが怪しくなり、見る度に降水確率が高くなっていた。
ああ、これはもう降るな、と覚悟を決めて、KIUのレインポンチョと野鳥の会のレインブーツを買ったのが31日(木)の朝。
(本当は30日の夜に注文するつもりだったけど寝落ちしてしまった)

ギリギリで雨具も揃え、フル装備で家を出発した2日(土)。
なんと雨の影響で新幹線が大幅遅延。 

乗車してしばらくは止まることなく進んでいたけれど、熱海あたりから前の列車との間隔調整のためなのか頻繁に止まるようになり、東京がこんなに遠く感じたのは初めてだった。
乗っていることしかできないのがもどかしかった。
先行物販を買うつもりで家を出たため開演に遅れる心配はほとんどしていなかったけれど、いつ着くんだろう?という焦りはあった。

結局、普段なら1時間40分で着く東京-名古屋間に2時間半かかった。
東京駅に着き、霞ヶ関駅へ。

日比谷公園に着いたのが15時少し前。
すでに物販には長蛇の列ができていた。
最初は買えるだろうと高をくくっていたが、列の進みの遅いこと!!結局何も買えなかった!
まあでもリハ聴けたから何も問題ない!
物販は通販で全部買うから!

そうなのである。
野音は音出しが聴こえるのである。
リハでやってたのは、私が聴けた範囲では、負け犬、天才、センチメンタル。
センチメンタルはキーを間違えたのかやり直していた。

野音のリハはすごい。
ぼんやりした曖昧な音じゃなくて、全部きこえる。
syrup16gの演奏以外の何ものでもなくて、この時点でたかまってしまった。

結局リハの曲本番でやってなかったね。
シロップの優しさと自信を垣間見た。

16時過ぎには物販の購入を諦め、タリーズに避難。
お腹が空かないように、でも膨れすぎもしないように、ホットサンドとホットのハニーラテでしばし休憩。

tacicaファンの友人に、翌日のMVのみんな大好きなフェンス際のあのシーンのスクショを送りつけるなどして過ごした。

そして開場。
買ったばかりのレインポンチョと、ツイッターで見たキャップを装着し、いざ出陣。

チケットをもぎってもらい、「日比谷野外大音楽堂」と書かれたゲートをくぐっても、あまり現実味がなかった。
野音でシロップを観れるのか、と思うと、雲の上を歩いているかのようなふわふわした夢心地になった。

細い道を通り抜け、ステージが見える空間に辿り着くと見慣れた機材が目に飛び込んできて、ああ、本当に野音でシロップを観れるんだな、と思った。

それから自分の席でひたすらに開演を待った。
自席はCブロックの真ん中ぐらいで、大樹ちゃんとマキさんの中間あたりだった。

普段のライブは開演数分前までスマホを開いているけれど、あの大雨ではそうもいかない。
そうそうにスマホをポケットにしまい、ステージを眺めて過ごした。

しとしとと冷たい雨の降り注ぐ暗い空間において、ステージ上だけが煌々と照らされていた。
客入れのSEに流れていた曲も相まって、どこか厳かな雰囲気だった。

定刻通りに始まったのか、それともワンマンではよくある遅刻スタートなのかわからないが、照明が絞られ、ぬるっと3人が登場。
あ、もうそんな経ったんだ、と思いながら立ち上がる。
このとき、雨の中で拍手をすると水滴が顔に飛び散るということを知った。

1曲目はdelayedeadのオープニングナンバーのクロール。
重たい不穏なギターとずっしりくるドラム、地を這うようなベース。
1音目からシロップの音に引きずり込まれる。
あの場の雰囲気にこれ以上にないほど合致していた。

2曲目は五十嵐のシャウトが炸裂しまくる前頭葉。
イントロの咳払いをちゃんとしてくれて大満足。
大樹ちゃんのコーラスが良かったですねえ。
ソロがバチバチに決まっている…!!
あれ、ギター上手いな…と思い始める。

3曲目はHEAVEN。
デッドの短めの激し目の曲が続く。
この曲、良いよねえ…。
この曲のベース、すっごくかっこいいよねえ…。
Cメロ以降の展開が最高です。
「どっかの誰かがそれを踏む」あたり。

4曲目はもういいって。
この曲もかっこいいよねえ。
頭から4曲、デッドっぽい曲が続く。
ここまで04年の遅死と同じ曲順。
「no more no more no more no no no!(?)」のところ、確か大樹ちゃんが歌っていた。
あのかけ合い良かったな。
再現してくれるの嬉しかった。

ここでMCだったかな?
大樹ちゃん開口一番「よく来た!よく来たねぇ」。
「こんなバンド観に来なければこんなことも(雨に打たれること)なかったのにね」みたいなことを言ってた、はず。

シロップ好きじゃなかったらこんな経験もできなかったんですからね。
晴れたらそれが一番だったけど、シロップがライブするなら雨だろうが雪だろうが大した問題ではないですからね。

雨の中ごめん、雨の中ありがとう、みたいなことを何度も言ってくれた。

それはこっちのセリフだよ、とずっと思っていた。
思わず涙ぐんでしまった。

無駄話をすることもなく、曲へ移行。
5曲目は翌日。
イントロのギター、いつもと入りが違った?
一瞬あれ?って思ったんだけど。
そして、え、もう翌日やるの!?と思った。
いつもライブ終盤のイメージにやるイメージだから、こんなに早くやると思わなかった。

どしゃ降りの中、ステージ全体がパアーっと照らされて、本当に美しかった。
この曲はどんなときでも美しい曲だな、と思った。

ステージ全体が明るくなって、五十嵐がSGを弾いている姿をようやく確認。
舞台上に置いてあったときから、SGだよな…?とは思ってたけど、照明があまり明るくなかったから確信を持ちきれずにいた。

野音でSG弾いてほしいなって思ってたから嬉しかった。

6曲目生活。
あとからセトリを見返すと若干浮いている生活。
チャラーンチャラーンチャラーンとコードを弾いてから始まった。
本当に失礼なことを申し上げるのですが、ソロがうますぎてびっくりした。
五十嵐のソロをあんなに安心して観てられるなんて…………。
相当準備してきてくれたんだなあと嬉しかった。

7曲目真空。
3連続、え、もうこの曲やるの!?枠である。
翌日→生活→真空なんて終盤の流れをもうやってしまうの!?
「ロックンロール!!」が聴けて最高だった!
大樹ちゃんの「ロックンロール!!」大好き!!
「crash T.V. with the bat of steel」のところ、04年の野音と同じように「delay delay delayedead」に変えてましたね。
嬉しかった。

8曲目でBreezing。
やってくれると思わなかった!!
嬉しかった!!
コーラスワークが見事でした!!

9曲目エビセン。
あーーーーこの曲もやってくれるのか……。
嬉しい………。
ベースが絶品だった。
ギターがSGっぽくない柔らかい音になっていた。
他の曲に比べてギターの主張が押さえられているからリズム隊が光りますね。
ピンクのモワモワが背面の壁に映されていて、脳みそみたいなどと思っていた。
この曲の湿っぽい感じが雨の野音にすごく合ってた。

10曲目明日を落としても。
イントロのギターでどうしようもなくなって口を覆う。
このライブが発表されたときから野音で明日を落としてもをやるであろうことは予想できていたのに。
雨のなか響く明日を落としてもは、特別なものがあった。
ソロが2回ともうまかった。
今までで一番印象に残った明日を落としてものソロだった。
ソロ弾いてくれるの嬉しい。

MC
「つらいのはこっちだよって感じですよね」
「でもちょっと小降りになってきた?」
「前出てみればわかるんじゃない?」←ちょっと意地悪で「tacicaの中畑さん」っぽさを感じた

11曲目はdelaidbackから赤いカラス。
この曲めちゃくちゃ良いんですよね……………。
大好き…………。

12曲目はI Hate Music。
この曲もやってくれるとは!!
嬉しい予想外だった。
赤いカラスとのつなぎがめちゃくちゃ良かった。
あそこ相当準備してくれたんだろうな……。
またやってほしい。

13曲目はIn My Hurts Again。
レミゼの曲を入れてくれたの嬉しい。
レミゼの曲たくさんやってほしい。

14曲目は変拍子。
変拍子大好き……………。
この重たいギターとベース、最高。
「冷めているのではなくて あきらめているのでもない
分かりあえた日々が 眩し過ぎて見れないだけ」
すごい歌詞だよね………。
2サビ以降の少し明るくなる展開も大好きです。

15曲目は光なき窓。
ああ、本当に初期っぽい曲だな、と思いながら聴いていた。
この曲のギターとドラム、好き。

「光なき窓」というタイトルなのに、光を集めたかのような曲。

現地でライブ聴いているときはこれで終わりという感覚がなく、マキリンがはけるのが見えて、え、五十嵐弾き語りタイム?と思ったぐらいだった。
まあでも思い返せばdelaidbackのラストナンバーだから納得の位置ではある。

と、ここまでがリアルタイムの感想。

翌朝ツイッターを見て泣く。

数時間してさらに泣く。

こんなん映画じゃん………。
syrup16gというバンド………。

光なき窓って、あの五十嵐が「そばにいてくれ」「愛されたいに理由はない」って歌ってることにどうしようもなくグッと来てしまうんですよね。

3人がはけ、しばしアンコールを待つ。
スタッフさんがステージ上をトンボみたいな器具で排水していた。
あんなびしょ濡れのステージでライブをしてくれたメンバー3人はもちろん、スタッフさんも普段のライブにはない苦労がたくさんあったと思う。
本当に頭が下がる思いだった。

本編が終わってアンコール1曲目は、まずマキさんだけ登場して始まったみんな大好きsonic disorder。
シロップファンはみんなソニックに殺された経験があるのでね(個人の見解)。
ソニックのイントロなんてなんぼあってもいいですからね、という気持ちで観ていた。
五十嵐が登場したとき、マキさんをキラキラーってやってた。スーパーベーシスト。

17曲目は神のカルマ。
オイを言わせてもらうという得難い体験をした。
アイドル?

18曲目落堕。
とりあえず落堕やっときゃなんか良い感じで終わる、という書き込みを以前ネットで見て笑っちゃったけど、実際落堕をやられると問答無用で血湧き肉踊っちゃうからすごい。
しかも今日の落堕は黒音みたいなハンドマイクだった。
フリースタイル五十嵐!ガラ悪かった!
寝不足だって言ってんのって大声で叫んだよ〜!
アウトロのソロが最近よく登場するあのフレーズと違った気がする。

19曲目クーデター〜空をなくす。
ヤッターーーーーー!!!!!!地球の自転に酔った!!!!!
アンコール終了。
そういえばアンコールは黒のテレキャスだった。
やっぱりこのライブ用にSG使ってくれたんだね。

20曲目はReborn。
ゴーストピクチャーズに収録されている「野音の最後は決まってますから」というMCから、今日も最後はRebornかなと思っていた。

Rebornの前に五十嵐が、「ずっと野音でやりたかった。20年間生きていてよかった、僕もあなたも。来年また会いましょう」ということを言ってくれた。
五十嵐の「また来年」が一番うれしい。
また来年と言ってくれる限り、いくらでも待てる。

多分、ライブの効力が切れ出すと、いつ新譜出してくれるの、だの、次いつライブやるの、だのわめき散らすと思う。
新譜出してほしいのも(新曲たちいつレコーディングしてくれるのでしょうか……)、ライブやってほしいのも(きこえるかいとこれで終わりも……)本当ではある。
野音を観て、こんなにかっこいいバンドが年に数回しかライブやらないのもったいなさすぎると思ったし。

でも、惚れた弱みだと思って、いきなりお知らせがある日をふんわり待ってます。

Rebornが終わって、3人が前に出てきて挨拶してくれた。
そんなシーンを観れるなんて思ってなかった。
泣きそうになった。


今年はシロップをたくさん観れてとても幸せでした。
いろんな場所に連れていって、最高の景色を観せてくれてありがとう!
来年を楽しみにしています!
ずっと大好きです。


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