頭で考えずに、手を動かして感じたら見えてきたこと
今年はハスカップ狩りをやめてお客さんを入れなかったので、黙々と収穫する日々が続いた
ハスカップは皮がとても薄くて潰れやすい。少しでも力を入れるとツユが出てしまう
くるくるっとひねってひと粒ずつ実を外し、
体温であたたまらないうちにすぐに籠へ入れる。そんな作業をひたすら続ける
収穫期間が短い上に、実が完熟してから採り始めるので、少しでも採り遅れるとポロポロと地面に落ちてしまう。落ちてしまっては、もう食べられないからスピード勝負だ
そうして毎日、ひたすら手を動かすことで、ちょっとずつわかってきたことがある
これ、たのしい
だんだん手が動きを覚えて、考えなくても動かせるようになる
どんどんスピードが早くなって、集中力があがる
そうして自分の体にあったリズムやペースを見つけると、ずっと続けられる
疲れるのと同時に体が喜んでるのを感じる
朝、目が覚めて天気がいいとわくわくする
手作業や手仕事は、体に作業が馴染んでからがおもしろいとは聞いていたが、頭で考えたことと、手を動かして感じることはこんなにも違うんだ
お日さまに向かって「おかあさん、これ、たのしいね」と心のなかでつぶやく
収穫時期になると毎日朝4時に起きて、朝日とともに採り始めていたという、夫のおかあさん
病気で亡くなった後、数年前に収穫作業を私が引き継ぐときに見つけたノートには、1日の収穫量や出荷量が几帳面に記録してあった
あの小さい実をひとつずつ、たったひとりで日に20kgも収穫、選別していたと知り、なんと働きもので頑張り屋なんだろうと驚いたのを覚えている。自分には無理だとも。
だけど今、遠くに見ていたおかあさんのことが
近くで見ることで、少しずつわかってきた気がする
出荷して金銭的な対価を得るだけじゃなく、はたらくよろこびがあること。ハスカップの実がまるで我が子のように、かわいらしく思えること
「たわわに実ったハスカップの木を眺めると、うれしいね。体のリズムにのって実を採るのって、たのしいね。熊よけ用のラジオの声も聞こえなくなるくらい、おもしろいね。採る前に雨風で落ちてしまった実を見つけると、かわいそうでかなしいね」
心のなかでそんな会話をすることができて、ほんとによかった。
すっかり実をとられて枝と葉っぱだけになったハスカップの木が増えていく。
さあ、短いハスカップ収穫期間が終わってしまう。また、来年会えますように。
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