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幽霊って信じてる?
わたくしは信じてない!
わたくしは幽霊に対して、所謂怖い話に出てくるような不気味な怖さというのを抱いていない。少なくとも、お話として楽しく怖がることはあれど、現実だったらどうしようとまで思うことはない。
幽霊を信じていないそこの君たち、なんで幽霊は怖くないと思う?
わたくしはね、こう思う。
幽霊の怖さっていうのは、人間側からの干渉が難しく人間が支配することの出来ない数少ないものであることだったり、不確かな存在に対する現実味の無さや不気味さだったりだと思うんですけど、そもそも幽霊を信じていない人にとってそんな怖さはない。だって幽霊っていないから。
そうすると、だいたいこんな反論が出てくる。
「いるかもしれないじゃん」
いねぇから。
というのは置いといて、居たら居たで怖くはない。
幽霊って不確かだから怖いのであって、居たらそれはもう"確か"になってしまうんです。確かなものに対する恐怖の感情って、それ目の前にヒグマがいる時の恐怖とほとんど変わらなくないですか?
明確に存在していて、人間に害をなす生物(あるいは概念)。そこに怪談話のような底知れぬ怖さというものはない。ただただ私たちはこれから起こるであろう苦痛や絶望に対して恐怖しているだけである。
そういうわけで、とにかく私は幽霊特有の怖さというものを感じることはあまりない。全く無いわけではないが、怖いと思うのはあくまでお話の中に限る。創作物とは本当か嘘かわからないからそこに不確かさが生まれて怖く感じるのであって、それが「実話」として語られれば、幽霊を信じていない私にとってはただのホラ話になってしまう。そうして例えその話が本当であったとしても、それはそれでまた「確か」なことに対する恐怖でしかなくなってしまうのだ。
わたくしはホラーがかなり好きなのですが、幽霊が怖くない以上怖いと思えるホラー作品が限られてくる。その上いわゆるジャンプスケアと呼ばれるような音や演出で脅かしてくる系のホラーがかなり苦手だ。タイマーの音で飛び上がるほどビックリするのだから、無理に決まっている。
ホラー好きといっても語れるような話は何もなく、ゲームも映画も対して見ない身としてはそもそも作品に触れる機会自体が少ないのだが、その少ない機会の中で比較的手に取るものといえばホラーである、という程度だ。ジャンプスケアを避ける以上映像での演出がある作品自体が向かず、ただ「怖い話」に耳を傾けるのが一番心地良く思える。いっときは毎晩怖い話を流しなが寝ていたくらいだ。じっとりしたホラーには安心感がある。孤独感や後悔、疑問と不気味の中で、負の感情だけが共有されているのは居心地が良い。まあ、普通に毎晩金縛りに遭ってましたけど。
幽霊のホラーだって別に怖いものは怖いのだけど、そういうのは大抵幽霊だと思われるものの正体が明らかにならずに終わる。それが不確かさに対する恐怖だ。
「これって幽霊かも〜!?」までは怖いけれど、「幽霊でした〜!!」になった途端今までの恐怖が急激に冷めていく。幽霊に肩を触られただの、ドアスコープ越しに幽霊がだの、「嘘をつくなよ」と思ってしまうし、それが本当なら尚の事、幽霊というよりかは現象として怖いだけだなという気持ちになる。
幽霊よりも人間が怖いの極地にいる。ただのありきたりな言い回しに乗っかってる訳ではなく、わたくしは心の底から人間のほうが怖いと思っている。いや、"ほうが"とかじゃない。比較とか無しに人間"が"怖いと思っている。
人間って怖すぎる。夜道が苦手だと言うと友人からよく意外だと言われるが、別に幽霊のことなんてこれっぽっちも考えてはない。頭にあるのは常に、歩いてくる人間が犯罪者である可能性についてだけだ。
ホラーだって人怖ばかりを好んでいる。本当に怖いのは人間だから。起こり得るが確実ではなく、人間の悪意やら勘違いやらに起因した偶然かつ完全な嘘とも言い切れない、そういう怖さを食べて生きている。
人間のことが怖くて仕方ないし、それでいて人間のことが好きでたまらない。
わたくしが死んで幽霊になっても、怖がらないでくれたら嬉しいな。