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絵が好きじゃない自分なんて、好きじゃない
薬の副作用で創作意欲なんて無くなっちゃって、あんなに大好きだった絵も描かなくなってしまった。描きたいとすら思わなくなってしまった。
幼い頃からずっとお絵かきばかりしてきて、飽き性な私でもこれだけは、興味が無くなる日なんてこないと思ってた。
どれだけ大切にしてた気持ちも思い出も「生きる」ということを前に簡単に潰されてしまうらしい。私は薬がないと生きていけなくて、そのためにはこんなしょうもない趣味は捨てなきゃいけなかった。
お絵かき用のタブレット。
高かっただろうに、私のやりたいことならと親は簡単に買ってくれた。もう何年も壊れずにいてくれている。ずっとペン先を打ち付けていた画面は、もうYouTubeしか映していない。
美大に行きたくて、取り返しのつかない科目選択をした。
画塾に通うより前に美大には興味をなくしてしまった。
美術選択をするためだけにとった興味もない世界史の授業を聞き流して、もう何も目指してないのに意味もなく美術の授業を消化する日々だった。私、本当は理系が取りたかった。
過去の私が残した遺物は、今の私にとって全て要らないものだった。
部屋を整理していたら、美大のオーキャンでもらった書類をたくさん見つけた。捨てた。
イラストを見るのは今でも好きで、よくSNSで他人の絵を見る。美大生のアカウントを見るとときどき胸が苦しくなる。もう羨ましくなんてないのに。
美術館も未だに好きだけど、現役の美大生の作品展には行けなくなってしまった。もう私にあの未来は無いから。
お絵かきアプリを起動して過去に描いたものたちを見る。更新頻度はどんどん落ちている。
一日に何枚も描いていた日もあった。
休日朝から絵を描いて、気付いたら夜だったこともあった。
今はただ、早く一日が終わって欲しい。
私のせいじゃないのに。
私を殺したのは私じゃないのに。
本当に未練が無いのなら、描く気も無いのにお絵描きアプリを開いたり閉じたりなんてしない。
昔の絵を見てあの頃よりマシだなんて思わない。
過去の自分が憎くてしょうがない。羨ましくてしょうがない。
嬉しいも苦しいも全部絵にしていた。下手だったけど確かに生きていた。
今はもう、私の感情をどうにかして世界に繋ぎ止めるために、ただただキーボードを叩いている。
私のせいじゃないはずなのに、誰のせいでもないらしい。そんなことがあってたまるか。
未練が無いわけがない。
今だって、これを書いていてこんなにも泣きそうだ。
私が好きだったのは、絵が好きな自分だった。
今でもたまに絵を描く。下手クソだし、見るに堪えないけど。
ペンが進まない。アイデアが湧いてこない。何が楽しいのかわからない。
アプリの操作方法だけは、身体が覚えている。