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泣いて、味わって、笑って - 大木亜希子さん新作「マイ・ディア・キッチン」を読んで

「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」

という、なんとも強烈なタイトルで自身の体験を綴った本が映画化もされ、作家としてのキャリアを本格的に歩みだした大木亜希子さん。

その本のタイトル通り、彼女は元AKBグループの「アイドル」だったキャリアを持ちます。

この本は、「アイドル」という、言わば「idol = 崇拝の対象」である立場を期待されてきた人が、自分も目指したい「見られたい自分」の姿と現実の間での葛藤の「生身」の姿をあるがまま惜しげもなく語った作品、と感じております。

「アイドル」という、ある種のあこがれの対象の人でさえ、いや、憧れたり崇拝されたりすることを期待される立場だからこその、その苦しさや葛藤がある。そして、「詰んだ」苦しみから這い上がっていく自らの姿をも自身で文字にして世に出していく。

それは、ある種「見られたい自分」を自らぶっ壊し、本当の自分の心へと勇気をもって向かっていく姿をさらけ出したとも言える、だからこそ共感を生んだ作品だったと感じています。

そんな大木亜希子さんとは、ひょんなことから、僕の長年の親友でピアニストである永田ジョージとの縁で生まれました。

ここでは詳細は省きますが、彼のアレンジで、無職のハゲアタマが、元アイドルの作家の女性と、ジャズピアニストの演奏をバックにトークライブをするという、なんとも奇妙でオモシロイ機会を頂くこととなりました。

そのご縁で、彼女の作品「シナプス」も拝読させて頂いたのですが、その強烈な「魂を削り出す」ような、欲望や切なさのあるがままの心を引き込む文章に触れ、なんというまっすぐで切なく苦しく悩ましく、でも愛おしい"こころ”を描く方なのだろうと感銘を受けたのを、今でも新鮮に思い出します。

この作品も多くの方の共感を呼んだようで、でも一方で、その文章を拝読しながら、親友のジョージに
「この方は、すごいね。なんだか、自分のこころをえぐり出すような形で文字でこころを表しているような…。でもこれは…、きっとしんどい創作活動だったのでは。」
と、勝手ながら心配をしていた自分がおりました。
ハゲアタマの余計なお世話なのですが😅。


その彼女が書き上げた新作が、2025/2/12日に発売される「マイ・ディア・キッチン」です。


いやぁ、泣き上戸な自分ではありますが、作品中、なんども涙で文字がかすれながら、とてもホッコリと感じ入りながら、引き込まれるように、一気に拝読させていただきました。

本の帯にもありますが「人生が愛おしくなる、お料理エンタメ」。

料理という、誰かが、自分が、そして誰かが「生きる」ために行う、とってもベーシックながら、きわめて深い行為を通して、様々な「こころ」の変化を描いた、心暖まる作品でした。

人は、誰しも、理想とする自分がいて、でも、生まれ育ってきた環境により、時に「ありたい自分」すら見つからず苦しんだり、「見られたい自分」と自分とのギャップに葛藤したり、それに絶望したり、だからゆえに、周りとうまくいかず、ぶつかったり、傷つき泣いて孤独になったり…。

でも、泣いたって、食っていかなきゃ、生きてはいけない。

ただ、食えれば、生きてもいける。でも、「料理」は、ただ食べるという行為に実に様々な「こころ」を乗せることで、食べる人のこころそのものを彩っていける。
時に、泣いた人でも笑顔にする、魔法のようなチカラがある。

だからこそ、食はどこまでも奥が深く、それゆえオモシロイ。

この作品では、様々な背景の人物のこころが、いわば"味"のように鮮やかに描かれています。

寂しさを感じさせる味もあれば、切なさの味もあり、でも、どこか暖かさもあり。

誰しもがもつ、こころの葛藤と、それが故の愛おしさが、とっても味わい深く、でものめり込むような展開で描いてくれています。

これは、アイドルという「見られたい姿」を自らに課す生き方を経て、でも理想と現実のギャップに苦しみ「詰んだ」体験があった彼女だからこそ、そして、それまでの「見られたい姿」を捨て去り、乗り越えた体験があったからこそ生まれた、心暖まる作品なのだろうなぁ、とホッコリ心暖まる感じを持ちながら読了させて頂きました。

自分の心の奥底に潜む、時に「ありたい自分」とは違う顔をもった"こころ"を持つ自身に驚いたり絶望したり、「みられたい自分」になるべために、喜びたい方向に進まぬよう自ら"フタ"をしている自分の"こころ"の状態に苦しんだり、"こころ"は、誰しも思う通りにいかないものではないかと感じています。

この本は、そういった、自分のこころの"フタ"を捨て去り、自分の"こころ"が「心から」喜べる道へと、「みられたい自分」と決別して、"こころ"を生まれ変わらせていく、そんなストーリーのような気がしています。

自分ごとではありますが、得度という行為も、いわば、同じような体験を生んだ行為でありました。
奥底に眠る自分の"こころ"が進みたい方向へと、仮面としての自分を捨て去り、勇気を持って踏み出す行為。

得度してハゲアタマになるなんていう行為は、当然ながら日常では起こりにくいものですが、大木亜希子さんの「マイ・ディア・キッチン」は、日常のなかで、誰しもが、自分の"こころ"を解放してあげ、本来"こころ"が進みたい道へと脚を踏み出す勇気を与えてくれる、そんな作品なのではと感じております。

2025/2/12が発売日となります。

もう一度リンクを張ります(笑)。

よろしければ、お手にとってみて頂けたら、一ファンの自分としても嬉しく有り難いです。


今日もお付き合い頂き有難うございます。


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