12人の怒れる男 東京Aチーム レポ
東京Aチームばっかり観ました。毎日感想を書こうかなと思ったけど、仕事に気力を吸われ過ぎて無理だった。
ふせったーにぶん投げてた”熱いうちに打った鉄”こと初見感想を、モッタイナイ精神で冒頭にぶっこんでおきます。
後半に行くにつれ様子がおかしくなっていきます。
いつも通り、東拓海さんのことばっかり書いてます。
□公演詳細
ナイスコンプレックス プロデュース公演 第6弾
「12人の怒れる男」
東京公演
会場:赤坂RED/THEATER
日程:2021年8月12日(木)~15日(日)
キャスト:東京Aチーム
東拓海、篠原麟太郎、上杉祥三、藤原祐規、
山本誠大、松本寛也、桑野晃輔、濱仲太、
赤眞秀輝、室たつき、和泉宗兵、畑中智行、キムラ真
□初見感想
これまで観てきた中で一番面白かった。 何か去年は比較だのなんだの屁理屈こねてまどろっこしいこと言ってた気がするけど、もはや開き直りです。
ほんとにめちゃくちゃ面白くて、早く初日観たい!ってなった。去年までだって面白いと思って観てたのに、すごいな??
今回、色々と今までの公演と違うところがいくつかあった。
まず、台本。流石に観劇3年目にもなるとセリフ覚えてくるくらいなんだけど、今回かなりテコ入れされてた。現代に沿った表現がかなり増えてた。去年まではスマホとかなかったし、今回はあえて経済新聞を”取っている”って表現があったり。
眼鏡のくだりはコンタクトレンズへの言及が割としつこくて笑っちゃった。そこまで説明せんでもw
「眼鏡を掛けたまま寝ますか?」「望んでかけたまま寝る人はいないでしょう」っていう、寝落ち勢に配慮した言い回しにもちょっと笑った。
次に、エアコンと水飲み場の位置が変わってたな。エアコンが上手に、水飲み場が舞台奥から面に、ドアが下手奥の角に。反時計回りにぐるっと回転した感じ。それに伴いパネルの作りも結構変わってた気がする。窓の付き方とか。
関西弁バージョン初めて観たけど、すごくよい……。
これまでも大阪公演の円盤は買ってたんだけど、逃げちゃうというか避けちゃうというか。あんまりちゃんと見られてなかったんですよね。劇場っていう逃げられない閉鎖空間じゃないと、正面から受け止めきれない軟弱者です。
去年はアドリブもりもりだったコミカルなシーン(1号がキレるシーン、12号がゲームを提案するシーン等)は全部さらっと通り過ぎる。そのおかげでキャストも感情切らないで通せてるように思う。
アドリブは面白かったけど、なくしてみるとやっぱりこの戯曲のあるべき姿はこうだな、って感じた。あるべくしてちょっとした戯れがあるだけで。12号のシーンとか、12号が滑って空気が凍り付く場面じゃなかったんだな、あそこは。
東京Aは3,4,5,7,10,12が関西アクセント。半分が関西弁。しかもセリフ量が多い役が片っ端から関西弁。関西圏外の人は怖いとかあるんだろうか。私は例年よりも身の竦む感覚は少なかった。
上杉さん、桑野さんの関西弁いいわぁって思ってたら、お2人とも兵庫出身だった。結局生まれ育った土地の言葉が一番落ち着くのかもしれん。
今回、私の中で凝り固まってた12人の役作りとか解釈が崩れた感がすごい。12人では初めて見るキャストが多かったのもあるし、これまで見たことのある人たちもがっつり役を作り直してたのもあるし。
1号、2号、3号、5号、6号、12号が特にガラッと変わった。
1号2号のキャラクターが逆転してたのは印象的だった。2号さんがちょっと引っ込み思案な箱入りお坊っちゃんだった。山口さんみたいなサイコ坊ちゃんでも、登野城さんみたいな恐いもの知らずお坊ちゃんでもなかった。新しい坊ちゃん像。
3号さんが切れ散らかすおっさんのイメージから関西で割とよく見るタイプのおっさんのイメージに。関西出身の自分の感覚だと関西弁のニュアンスを通して、”怒り”の閾値が大幅に引きあがった感じがある。プロ野球見ながらヤジ飛ばしてるおっさんという感じ。あくまで関西出身者の感覚。
最後の最後、はける直前。破いた写真の欠片を一つ一つ、大事に大事に集めて手帳にしまい込む姿がすごく切なくて。「どうして」という感情よりも、「大切で帰ってきてほしい」っていう感情が伝わってきた。3号さんを突き動かす自身の正当化の裏にある悲しみの感情。後悔とかよりもただただ悲しくて恋しくてっていう。
このシーンで涙が出たのは今回が初めてだったかもしれない。
4号さん。今まで見た中で最も理性的。2020東京よっこいさんよりも理性的。足立さんのような苛烈な傲慢さもない。拓海くんのように皮肉屋なところもない。本当にロジカルで理性的。でも、そうだな、いうなれば普通の人。人を見下しているという印象が全然なかった。自分が真だと思っている事実をないがしろにする他の陪審員たちを嘲るわけでも煽るわけでもなく、何なら心の底から訴えかけてるような。
まだ一回しか観てないから実際にはそうではないかもしれない。でもそれくらい、クリーンで理性的な人だった。
5号のナイフのシーン。「なんで気付かなかったんだろう」「思い出したくなかったからじゃないですか?」の時の言葉の受け止め方がとても丁寧で素敵だった。言葉に詰まってて、涙をぬぐうような仕草もあって、この人にとってスラム育ちであるということはそれほどまでに重いものだったんだなと思った。
目が悪いので涙までは見えなかったけど、本当に泣いていたのでは。
6号さん。正義漢じゃない!!!
滝川さんがあまりにも正義漢で、曲がったことは許せん!みたいな感じの人だったからビックリした。
7号さん。今までみた中で最もイキってる気がする。
これまで7号さんは2019年版井上さんが一番腹立つ!って思ってたけど、桑野さんも超腹立つ。しかも、これまでの7号さんたちの中で一番怒りの沸点が低くて、打たれ弱い……気がする。和泉さんの11号の圧がすごいのもある。
腹立つけど、やっぱり地元の不良を見守る気持ち。3号さん同様、演者、演出の意図とは異なる感じ方になってしまっている感が否めない。
12号さんの自分の意見を提示することに対する怯えが見えた。のらりくらりと回避するのではなく、明らかに拒絶していたように思う。あと、そもそも人と厳しく議論を交わすことにも苦手意識がある?
演出方針が変わったのか全体的に過度のコメディシーンが無くなり、12号の少しずれた発言も意識的に空気をなごませようとしているのが分かりやすかった。
1号さんは超強くなってた。こびへつらうことをしなくなった。
新任教師感が無くなってたし、去年の感想で(私が勝手に)ほざいていた生徒に舐められる1号さんの可能性も無くなってた。30代半ばくらいの落ち着きはあると思う。
で、ずっとイライラしてんの、この1号さん。ほんとに陪審員長やりたくないんだと思う。守衛さんに何か耳打ちされてあからさまにテンション下がってた気がする。
ヘラっとした愛想笑いもしなくて大人の作り笑顔なの。ぞっとするような綺麗な笑顔。見逃してるだけかもしれないけど、序盤も周りに同調して笑うっていうことをあんまりしてなかったような?うん、ずっと不機嫌。
静止のために何度か声は張るけどそれもこれまでより強い意思が音に行き渡ってる。
怒り方が若さゆえの癇癪じゃなくなってた。絶叫するでもなく、相手を強く突き放すような。周りも急に怒り始めてびっくりするんじゃなくて、ちょっとした恐れをもってたじろいでたように思う。声量以外の怒り出力が高い。
キレた後も宥められて機嫌を直すんじゃなくて、宥められて自分が折れないと話が進まない空気を読んで、苛立ち収まってないけど自分で自分の機嫌取ってる感じがめっちゃ大人。その後もずっとイライラ引きずってるのも結構目を引いた。
このシーンは観に行く前からずーっと気になってた。今年も爆発してごり押すのかなって。厳しい言い方をすると、その演技プランで3度目も通用すると思っているか否か、って。ここのシーンの如何によってはがっかりしてしまうかもっていう怖さがあった。楽しみにしていた以上に心配で怖かった。
まぁでも、杞憂でしたよ。一ファン如きが何を言おうと戯言に過ぎないんだけど、推しが成長してることに胸をなでおろし、本人の努力やそれに注ぐ熱意がある程度は報われていることに喜びを感じた。本人はこれが最善!正解!とは絶対思ってないだろうから”ある程度”。
11号さんの時計のシーンで12号さんにかける言葉もちょっとニュアンスが変わってた記憶がある。独り言ではなく、はき捨てていたような?さすがに記憶違いか。
10号さんの暴走シーンの1号さん。これまでガン無視拒絶だった1号さんがまさか胸倉掴みに行くとは思わなかった。大人になったと思ったけど、いや、大人になったからこそ我慢ならんかったんだろうか。
ちなみにここの4号さんはものすごく淡々としてたように思う。
1号から有罪無罪をカウントするシーン、2号を指して「1号から」って言っちゃって2号さんに窘められる。ここもキョトンとした演技じゃなくて、「あぁ、そうだった……」ってここまで荒れた場を整えるのにパワー使い切ってぼやっとしちゃってる感じ。芝居から1号さんの精神的疲労を感じる。
うーん、どのシーンをとっても今回の1号さんはすごい気が強い。
アメフトのシーン。ちょっとセリフが変わってたのもあるけど、全然雰囲気の違うお芝居だった。そこに来るまでの今までと全く違う1号さんを受けて、その心情をどう拾えばいいのか分からなくなった。これは、たぶんこれまで自分が何回も見てきたからこその難しさだったんだと思う。もともと個人的に役の真意とシナリオの意図を測りかねてるシーンでもあるし。でも逆にそういう意味では今回少しわかってきたような気もする。
分からないけど分かった分からないシーン。1号さんの心理迷路から抜け出せません。
前回まではロイヤル傍聴席の名残で上手の壁に向かって外を見ながらしゃべるシーンだったけど、今回は上手で客席側を向きながらしゃべってる。直前に窓閉めながらびっちゃびちゃになってる1号さんかわいい。
全員が3号さん見る時の1号の横顔のEラインが美しすぎた。あれ、拓海くんこんなに美人さんだったっけ……。
あと、ブリーチ後の色落ちが素晴らしくて照明に透ける髪が超かわいいチョコレート色。すごくかわいい。髪伸びて重めになってるのもかわいい。笑顔すっくなかったけど。
カテコの挨拶の音頭が1号さんだった。え、毎回1号さんなのかな?
カテコで感極まるキムラさんにもらい泣きする。また見られて幸せです。来年も観たいです。キムラさんの熱意のおかげでこの素晴らしい演劇にまた出逢えました。
1号さんの役作りがここまで変化して、いろんな感情を見つけられるようになってきたのに、未だに無罪に鞍替えする決定的なきっかけが何だったのかを見極められないでいる。わからない……1号さんが分からない……。私の国語力、もしくは共感力のなさが問題なのか……。君の軸はどこにある。
ということで、ここまでがゲネプロ見た段階の感想でした。
□通して観た雑感
今回は、”怒り”の前後がはっきり見えた気がした。怒りって別の感情から派生するものじゃないですか。その"別の感情→怒り"の助走から踏切りまでが印象的なシーンが多かった。
まぁ、観るの3年目でキャラ考察の域に入ってきたから、っていうのもなくはない。
で、全ての感情の行先は”泣く”に繋がるのはよく聞く話だけど、そこまで怒りが到達している人が結構多かったように思う。3号はもちろん、他の人も。
1号さんもそっち方向にプラン練ってたっぽいんだけど、ちょっと観てて心がザワザワしました。感情の流れを理解したうえでも千秋楽くらい上手くハマってないとあんまり好きじゃなかった。たぶんそれは、私の中にある「上手く纏まった均整の取れた怒り」から外れてるからなのかなって。良いとか悪いではなく、苦手。
これはシンプルに私が強すぎる感情を理解できないからだと思う。共感力は高い方だけど、自分から生成される感情は低ければ低いほど良いと思って生きてるからね……。強い感情の出力方法が理解できない。このレポを読んでくれてる人、嘘だと思うでしょ?ほんとなんですよこれが。いつも反響音だけで頑張ってる。
あと、純粋にコントロール外れそうなものを見ると不安になる。実際にはしっかり稽古して考えてやってるはずなんだけど、なんか漠然と怖くて。大型犬がリード引きちぎる勢いで暴れまわってたら怖いでしょ、それですよ、たぶん。犬は好きだけど。
そんなこんなで、めちゃめちゃチャレンジングな演技プランだと思った。うーん、自分自身を試金石にする日が来るとは。
・2号
10号にぶつけられた紙コップを大事に取っておいて、飴ちゃんの代わりに突っ返すの、見てる方もすっきりする。
これまで雷の化身2号くんばっかり見てたので(怒ると雷落ちる系)、しょぼしょぼ怒ってる2号くんは新鮮だった。
これ、私がチャー研から入った人間だからなんだけど、どうしてもパパの面影を引きずっちゃってたんですよ。実際は全然パパじゃないし、思い出すような芝居もほとんどないんだけど、シーン関係なくふっとパパの姿が脳裏をよぎることがあってな……。チャー研が脳の襞に刻み込まれ過ぎてる。
ちなみに数少ないパパを思い出すシーンは、老人の歩く速さの検証するときに足踏み鳴らすとこです。パパがああいう仕草をしてたかは覚えてないけど、何故か毎回思い出してた。
「正確に言いますと」
公演によって微妙にタイムが違う。43秒と38秒だった気がする。
「お母さん小っちゃかったんですかね」「…何の話でしたっけ?」
一回ほんとに脱線しかけてた回があってめっちゃ好きだった。ほぼ全員からツッコミ受けてて新喜劇みたいになってた。
「根に持つタイプだ」「シーッ」
可愛い。小っちゃいものクラブは今年も健在(片方178cm)。
たぶんどこかの回で「有罪」と「無罪」を言い間違えてて勝手にヒヤッとした。
・3号
めちゃめちゃ父親とか祖父を思い出しました。同郷の方言パワー凄い。あんな父ちゃん嫌だ。
でも、だからこそだなぁ、なんかすごい切なくなってしまった。毎年見てて話の展開が分かり切ってるし、なんか自分の父親とも重ねちゃって悲しくなるというか。いや、うちのお父さん別にそんなタイプじゃないんだけど。やっぱり方言パワーだなぁ。
笑いながら怒るっていうバランスがほんとにすごかった。笑いの部分だけ切り取ると、普通に笑ってて楽しそうなのがすごくてすごいし、そこから怒りに転じても違和感がないというか。ちゃんと奥底に怒りが継続してるのが分かるという。
また引き合いに出すんだけど、この手法吉本新喜劇で馴染みがあって好きなんだ。と、思ってYouTubeに上がってる2010年前後の新喜劇の映像見てたら面白すぎて時間溶けた。情操教育にがっつり組み込まれてたから鉄板ネタ全部で笑う。「お邪魔しますか?」「いや、訊かれても」
閑話休題。
ここまで急激な芝居の変化の中にナチュラルな心情が見えるのってスゴ技ですよね。3号は序盤からずっと怒りが継続している人物だけど、観てる時にこんなにもストレスを感じなかったのは初めてだった。”怒り”って自分に向かってなくてもストレス掛かるじゃないですか。それが毎年きつかったんだけど(醍醐味でもあるけど)、今年は強い気持ちのまま最後まで集中して観られた。上杉さんの芝居の緩急が自分に合ってたんだろうな。
「ファーーー!!」
めっちゃ好き。目線を遠くにやって脱力してるのがコミカル。
「ないわあ!」
これ、めちゃめちゃ方言ポイントなんですけど、「ない↑わあ」じゃなくて「ないわ↑あ」なのがすごい懐かしくてな。「い」じゃなくて、「わ」にアクセント。
4号の意見に乗りかかりまくってる姿があまりにも滑稽で、切ないんだ。なんだろうなぁ、今までの3号さんには感じなかった種類の感情なんだ。
美味しいコーヒー出して、ニコニコ相槌打ちながら一緒にお話しして、幸せに過ごしててもらいたい気持ちなんだ。年代的に親が重なるからかなぁ。息子28歳だもんね。そっかぁ。
「色気を振りまいてたとしょう!」
「しょう!=しよう」は関西の表現だったなぁ、と見ていて思い出した。兵庫だけじゃなくて広く関西の表現だよね?
3号さんの心境は未だに上手く受け取れてない。頻繁に言ってる1号さんの考えが分からない、というのとは違って、断片的に理解出来るんだけど、どうにも同じところまでメンタルを持っていけない。子を持つ親、子に見放された親の気持ち、一番想像するのが難しい。
悲しいとか悔しいとか怒りとか、名前が付いた情動じゃないんだろうな、とは思う。3号さんの気持ちに入り込める日がいつか来るのだろうか。
・4号
三重弁ズルいですね。敬語なのもあるけど、なんかやっぱりテイストが違うんだよなぁ。さすが近畿二府四県からハブられるだけはある。
「番号順に座るのは理にかなっていますよ」
6号さんに向ける目線が鋭い。すっごい細い針で突かれる感じ。
感情とか意思が面じゃなくて、線で直角に刺さってくるんだよなぁ。もちろん終盤はその限りではないけど。
事実確認をする4号さんがあまりにも立て板に水。よどみがなさすぎる。あの勢いの中にどうやって抑揚つけてる???
あの猛攻の中に一瞬星くんを見出してしまったので、チャー研由来のバグは根深い。
「少年と証人の証言に」「少年の部屋が正面に」
今年もやってまいりました、みんな大好き役者観客泣かせのこのセリフ。毎回、妙に集中して聞いちゃう。
「素晴らしき…」
この世界!!
全然関係ないのに、毎回すばせかが脳裏をよぎる。
チェーン掛けるだけで面白いタイプのブローカー。ふっきーさんのコミカル路線のお芝居好き。なのにシリアスなシーンも当たり前に背負えて、声が良くて歌って踊れるイケメンなんだよ。完璧か??
千秋楽だけ9号の発言権ぶんどり事件の時に舌打ちしてた気がする。意図的にやったのか鳴っちゃっただけなのかはわからん。治安が悪くて好き。
・5号
吉本さんの4号ばっかり見てきたから新鮮。ナイフのシーンってあんなにかっこよかったんだね……。(吉本さんごめん)
関西弁だけど何だか丸っこい感じでかわいい。愛媛だそうで。
10号の偏見に一番反発してるけど、それ以外の人からスラムの話が出てきても不快感を表してたのが印象的だった。4号の「あのあたりで女の悲鳴なんて珍しいものじゃない」っていうセリフとか。
10号の考えも4号の考えも元をたどれば同じく偏見でしかないんだけど、世間一般に受け入れられている偏見って糾弾されないんだね。当事者に与えるダメージは大差ないと思うけど。
5号さんは怒りを笑いで誤魔化そうとしてたのがすごく印象的だった。誰かをっていうより自分自身を。今は昔とは違うという趣旨の9号のセリフで感極まって涙ながらに頭を下げるところから見ても、スラムに居た頃の自分を今の自分から切り捨ててしまいたかったのかな。
自分が受けた傷を忘れてなかったことにするか、傷跡として受け入れるか。5号さんはその辺割り切れてなくて不安定な人物だと思う。
ナイフの刺し傷のくだりで、周りをグルグル歩きながら考えてる。忘れたかった記憶の中にある情景と重ね合わせようとする姿が印象的だった。
で、ナイフの実演。かっこいい。ガッていっててかっこいい。
・6号
6号さんも滝川さんばっかり見てきたから新鮮どころの騒ぎじゃなかった。初見の時は正義漢じゃないぞ!とびっくりしたけど、別に本質は変わってなかったのかも。
自分の正義は内に持ってるけど、表に出すのはためらってるような。声を荒げた後に、笑って自分に集まった視線から逃げようとしてるのがすごい普通の人って感じする。
一回だけガム食うなって1号さんに怒られてた。何故あの回だけガムを飲み込むのが遅かったのかは分からない。
動きがちょいちょいジャック・スパロウを思い出す。芝居がかった緩い動きというか。アレはカッコいい人の動きだよ……。
台詞回しも独特だなぁって感じた。少したどたどしいというか、うーん、頭の中で言葉を作りながら話しているというか。初めの8号を説得するシーンが顕著だから6号自身の緊張によるものなのかもしれない。
あと、何かを間違えないようにしている印象も少しあったり。頭の中にある漠然とした考えを言語化するのに苦慮してる様子。
全体的に静かで、怒ってても声を張るわけじゃないんだけど、空気がピリッとする。
「一人だけ風邪引いてるくせにね」「ね」
「ね」ってはっきり言ってるわけじゃないんだけど、肩竦めながら目で2号に同意してるところがとても可愛かった。
・7号
過去一キャンキャン吠えるタイプの7号さんだった。キレ散らかしておる。関西弁素晴らしい。やっぱり私にも関西のテンポ感が刻まれていることを再認識した。我が強いから人のセリフ食ったツッコミが多いんだけど、タイミングがいちいち的確。
初見感想でも書いたけど、こういう爆速会話って関西圏外の人からしたらどう感じるんだろうな。
「メルヘン坊やは黙っとけ!」
「俺はここに居てる」
「ガキがやったの知ってたから!」
重要セリフかと言われたらそんなことないんだけど、耳に残ってるセリフ群。
「……なんやねん、でしょうねって」
スンッてキレてるのがめちゃめちゃよい。直前の間が天才。桑野さんの7号さんは怒りがヒートアップする流れがすごい滑らかで気付いたらキレてる。ていうか、ずっと高い位置で苛立ちを継続してるの凄い。
6号とにらみ合ったときの空気感がすごく好き。一瞬だけバチッと火花が散って、そこからスッと視線切るところがくどくないのがとても良い。そりゃ、数秒かけて睨み合えば対立感は煽れるけど、ありきたりといえばそう。実際に8号と4号、11号と7号で近しい構図は出てくるわけだし。
てか、よく考えたら対立してる相手と1秒以上目線合わせ続けるのって、現実的ではない行動だよな。芝居の世界だから別に行動が現実的である必要はないけども。
序盤からチラ見えする7号さんの脆さの片鱗だと思ってる。大人の対応で争いを避けたともいえるけど、私には逃げたようにも見えた。
「疑問があるから、有罪に」
11号さんとのやり取り、二人の身長差も相まって今までで一番痛々しいシーンに仕上がっていた。本意を晒すことへの怯え以外にも生物の本能的な恐怖も感じてそう。というか、私が客席で怯えてた。
声が震えてて虚勢も張れてない。建前と虚勢で生きてる大人にとって、その内側に踏み込まれるのは自分の柔らかいとこに手を掛けられてる気分になるよね。生殺与奪の権を他人に握らせるな……。(鬼滅は今だに履修してない)
・8号
実は今のところ濱仲さん以外の8号さんを見ていなかったりする。
去年は表に出てくる熱量が高い8号さんだったけど、今回は人間臭さがより強くなってた。序盤は話し合いを始めるためにかなり苦心してる。
2019年版の時は完全無欠!孤高!のイメージで、それはそれで12人の中で際立っていたけど、今回は理論の解像度にムラが見えることで駆け引きのハラハラが高まっている気がする。一つ一つのトピックをひねり出すときも懸命に粗を探して目を泳がしてる。観てる側が”そんな行き当たりばったりで大丈夫か??”と思うくらい綱渡り。
冷静に事件の考察ができるようになったのって何人かが議論に乗ってきてからかな。そう思うと序盤の8号さんのしんどさヤバいな。
「見てくださいよ」「めったにないことですよ」
ここ二人、同じ目線の高さで睨み合ってるのがすごく好き。ド面センターなのも相まって迫力がある。
結構身長差あるはずなんだけどなぜか同じくらいの身長に見える。
「たぶんね(probably)」
煽り力が高い。
「そんなことを平気で言えるあなたに同情します」
8号さんはこの辺りのシーンが一番怒ってた気がする。特にこのセリフが好きだった。呆れてものも言えなくなってる感じ。
・9号
証人の老人の気持ちを代弁して、それを「自分を見ているようだ」だと言ったということは、8号に続いて無罪に票を投じたのもそういう気持ちがあったんだろうな。自分が生きた痕跡を残したいというささやかな願いか。
もちろんそのあとしっかり議論に参加して、”無罪”を自分の見解として落とし込んでいたけども。
「どうもありがとう。私らはそういうことを忘れますんでね」
個人的もうワンテンポ間が欲しかった。
このセリフが出てくるのが9号ならではだと思う。若い他の陪審員には認めることがむずかしかったのでは。ド正論の指摘を受けて居心地が悪くなるのは割と多くの人に当てはまる反応だと思う。長く地道に生きてきた人で、ある程度人生を諦観しているからこそ、素直に受け止めて謝意を述べられたのかも。
「あんなってどんなです?誰の頭がなんです?」
穏やかな声なんだけど、プッツン来てるのがバレバレな感じがとても好き。あと、言葉としての響きも好き。誰の頭がなんです???
「眼鏡のせいですかー!!!」
優勝してるおじいちゃん。
・10号
今年も取り返しのつかない人だった……。今回初めて生で関西弁バージョンを見たので、よりダメな関西の男だった。引っかかってはいけない。
芝居がかった感じとか気取った感じが去年よりもマイルドで、逆にDQN度が上がった感じがする。去年から役作りを変えたからなのか、関西弁だからなのかはちょっと分からないけど。
「ここに居るんはみんな立派な大人や。善悪の判断くらいできる」
この後の言動との認識齟齬が凄くてパンチが強いセリフだと思う。一言目で他の陪審員が同意するそぶりを見せるけど、その後続いた偏見からくる発言に一斉に眉を顰める。舌の根も乾かぬうちにとはまさにこのことですね……。
3号もそういうシーンいくつかあるけど、10号は”自分の常識は世界の常識”と思い込み切っているところがなんとも言えず救いがない。
3号さんは自分で言う通り癇癪持ちでカッとなりやすい人だけど、我に返るシーンも同じくらい描かれてる。反面10号さんはそういうシーンが一切ない。カッとなってその思考に陥っているわけではないから。常に正気だし、仮面を被ろうともしない。
初めは勢いに押されていた他の陪審員たちが議論が進むにつれ、10号の発言に反応しなくなっていくのもちょっと怖いよね。自分自身がそうでないとは言い切れないので、明日は我が身感がある。
「なぁ、聞いてくれ!」
初めは罵るような調子だったのが徐々にトーンダウン。4号に声をかける時には蚊の鳴くような縋るような声色に。8号に絡みに行ったあたりから戸惑いが見え始めてたかな。
確か2019年版では7号が胸倉掴みに行ってて、2020年版ではわざとらしく肩をぶつけてたと思うんだけど、今回は1号さんがブチ切れ要員に。このアクションって10号さんにとってはこれまで受けたことのなかった”否定”なのかもしれない。”拒絶”は散々されてそうではあるけど。
私だけが感じているニュアンスかもしれないけど”拒絶”よりも”否定”の方が攻撃力高いと思います。
「合理的疑問はあると思う。有罪」
去年は全員に投げてるように感じてたけど、今年ははっきりと3号に向けたセリフだなって理解した。直前に3号が意見を催促してるもんな、そりゃそうだ。
・11号
これまで葬儀屋とかマークツーパイセンみたいな存在感のあるキャラしか観たことが無かったから、序盤11号さんの気配が12人の中に紛れてることにまず驚いてしまった。役者ってすごい。
「黙って最後まで話を聞きなさい」
とか思ってたらここですよ。これより前に陪審員たちを諫めるシーンも気圧されるけど、このシーンは対象が7号一人だけということもあって恐怖すら感じる。
移民としてままならない環境で生きていくために柔らかく丁寧に振舞っているだけで、本来はかなり熱量が高い人なんだと思う。作中でもトップクラスの真摯で実直な人物のように感じた。
11号の言葉ってナイコン版だと完全に片言だけど、原作は外国語訛りの強い英語って感じなんだろうか。ちなみに、インド訛りの英語は恐ろしく聞き取りが難しかった。ていうか、何にも聞き取れんかった。
片言の日本語で分かりやすいのは、助詞抜けと活用ミス。11号さんは助詞抜け。これまで3人の11号さんを見て来たけど、外国語アクセントがバリバリ残った片言は見たことがないので、見てみたくもある。聞き取りが難しい、という点では演劇向きではないのかもしれないけど。
・12号
眼鏡って面白いアイテムだよね。付けてても外してても似たような意味を持たせられる。付けていない状態を”盲目”とも、つけている状態を”色眼鏡”とも。人間にとって”眼鏡”は認知を左右する不自然な装飾品なんだろうな。
12人では前者的な演出か、もしくは目を覗かれることを嫌がって、自分の意見を言う時は眼鏡で隠している演技か。畑中12号さんは水を向けられたときに逡巡してから焦って眼鏡を掛けることが多かったから、そういう印象が強かった。
「刺しっぱなし―!言うんも具合悪いやろ」
「7時までがんばろ★」
「無罪です」
かわいい。
いや、「無罪です」は可愛いシーンではないと思うけど、やっぱり可愛いんだ。8号のセリフをかなり食ってるのも好き。
「風来てます?」「全然来ない!」「え」
コントかな?
わざわざ椅子の上に立って、来ない風を待つ12号さんと困惑の目を向ける周りのメンバーが可愛い。1号の椅子の上に立っているので、毎回1号に怒られる。
毎年何号が一番自分に似ているかを考えるけど、今年は12号かも。
一番裁判の内容に興味がない人物で、有罪無罪もなんとなく周りに合わせて、はっきりと自分の意見を持たない。自分の意見には力がないと思っている、もしくは力のある意見を持ちたくない。終盤は”吹っ切れた”からか、その限りではない。
丸っと自分に似てるわけではないんだけど、他の誰よりも自分を重ねるシーンが多かった。去年までの12号さんはそう感じなかったので、畑中さんの持つ何かが刺さったんだと思う。
・1号さん
クソ長くなったので最後に持ってきて誤魔化す作戦。
5回ともかなり演技が違ってた。千秋楽が一番好きだったな。怒り方もアメフトのくだりも。相手の出方が変わったから自然と変化したっていうより、自発的に色々チャレンジしてる感じ。
今回の1号さん、めちゃめちゃ神経質じゃないです?ルールとか筋道から外れるのが嫌っていうだけじゃなくて、誰かが誰かの話の腰を折ること自体も嫌がってるというか。思考的な意味で潔癖っぽい。整っているものが好き?本が順番に並んでないと落ち着かない、でたらめな音階が苦手、一貫性のない発言が嫌いとかそういうタイプのような。
大きい声にも刃が出たナイフにもものすごい嫌そうな顔してる。分かりやすく身を引いてドン引きした顔してる。
ずっとイライラしてて程よくそれを隠さない。結構大きくため息を吐くことが多い。深呼吸的なやつじゃなくて、割と意思のあるため息。吐き出し感が強いやつ。
怒った後とかイライラしてる時とか右手で口元を拭う仕草をよくしてたんだけど、これは拓海くんのもともとの癖を役に生かしたのか、新たに作りだした癖なのか。
考え事してる時も結構手を口元に持っていってたような気がする。
で、初見感想にも書いてるけど、めちゃくちゃ大人なんですよね、今回。これは役作りの方向性に拠るのか、拓海くんのレベルが上がったことに拠るものなのか。どっちもかな。見えなかったものが見えるようになったのかもしれないし、出来なかったことが出来るようになったのかもしれない。
誰かに同調する感じがほとんどない。とにかく首を縦に振らない。「うんうん」っていう動きをほとんどしないの、ホントに!
去年は万遍なく振りまいてた愛想笑いを殆どせず、割とずっとシリアスな顔してる。で、たまに作り笑いしてる。出し惜しんでるからこそ、要所要所で出てくる笑顔の意味が印象に残った。
”愛想笑い”って相手を近づけない笑いで、”作り笑い”は拒絶する笑いだなって、見てて思った。どっちも防御寄りの行動だけど、”作り笑い”からは、より強い意志を感じる。たぶん辞書的な意味はそんなに変わらないと思うけど。
去年までの1号さんは”愛想笑い”で人と距離取ろうとしてた感じだったけど、今年の1号さんは”作り笑い”というATフィールド展開してた。
陪審員を数え終わった後、1号さんに何か耳打ちする守衛さん。これって去年まではたぶんなかったと思うんだけど、どうだったかな。
その時の作り笑いがすごい。守衛居なくなった瞬間スッと笑顔消えてムスッとしてるのがとても好き。
投票用紙作ってるのを10号に茶化されておこ。急に野球の話し始めた7号におこ。とりあえずこの二人とは全く反りが合わないんだと思う。この二人に対してイライラしてるシーンほんとに多かった。
裁判を始めようとするとき「ではみなさん」と言いつつピンポイントに8号に声かけてた。その流れのせいか「そこの~」のニュアンスがかなり違って聞こえた。
去年はここまで露骨にやってなかったよね。もう少し呼びかけ範囲が広かった気がする。で、「そこの~」で対象絞ってた感じだった。
もうこの辺の話してる時点で声が疲れてるし、ニコニコもしてない。投票前の説明であんなに声疲れてるの、初見の時ちょっとびっくりした。全然違うーって。
「無罪だと思われる方」「どうも」「有罪が11、無罪が1」
8号が手を上げてないのに気づいてから先のテンションが結構淡々としてた。というより、抑揚が一瞬消えるというか。でも不服そうなのは伝わってきた。去年はもっと分かりやすくトーン落してたからね。今回の方が好き。
無罪で挙手した8号を信じられないものを見るような顔してた。嫌悪とかではなく、訝し気な、というか。
8号さんのお涙頂戴メロドラマの時もずっと考え込んでる。他の人に同調して笑ってない。この辺見てると今回の1号さんって結構公正な人間のような気がしてくる。台本上も目立って有罪を推す発言はしてないし、やっぱりこの人よく分かんねぇ。
12号さんに厳しい1号さん。12号さんはテンションとか集中力に結構ムラあるし、1号さん的には対子供に一番近いのかも。
「ではあなたから。…そうですね」
鼻で笑いよったでこの男。神経質にプラスして陰険かもしれない。
ここまで露骨だったのは千秋楽だけかな、死ぬほど性格悪そうで最高に面白かった。今回は7号さんが小柄だから見下しの角度がえげつない。
その後の2号への振り方もかなり強気。2号さんが圧に屈しててかわいそう。
4号の発言を遮った10号に憎々しげな顔を向ける。その後申し訳なさそうに4号にアイコンタクト投げて、それに4号が片手上げて応えてるのめちゃめちゃ良いなって思った。
んだけど、ここ別に連動してる動きじゃなかったかもって千秋楽観てて思ったりなどした。それぞれが10号の行動に辟易してるだけのような。千秋楽は絶妙に奥行きが見えない席だったので、何とも。
「そうだ忘れてました」
急に気弱な感じを演出してくる。ちょっとわざとらしすぎて笑ってしまったのは申し訳なかった。
10号さんじゃないけど、この辺だいぶ頭混乱してるよね、1号さん。3号暴走、10号暴走ときてキャパ超えてる感はある。
直前の息子に想いを馳せる3号さんに遠慮がちに声掛けに行くところ、3号の視界から外れた瞬間に笑顔が消え去る。この辺り、3号さんへの諦めが見えてちょっと切なくなる。
げきおこぷんぷん1号さん。
ほんとに毎回怒り方が違ったんだけど、怒りが「泣く」にまで昇華されていたのが今回の特徴だと思う。どんな感情も最終的には「泣く」になる。ただ、「泣く」は感情ではない。
怒り方が子供っぽいなって思う回は、その先の泣き方が幼かったからそう思ったのかも。駄々をこねるみたいな。うまく言えない。
これ、拓海くんが泣く姿を見すぎて私の脳が麻痺してる可能性もある。元々ジブリみたいな泣き方する男だからな……。その年代にしては達観してるだけで、別に感情表現とか仕草が大人っぽいわけではないし。
大人が急に子供みたいな怒り方し始めてドン引きしてた人たちが、泣いてると気づいたらちょっと焦り始めてて。この状況をリアルだなぁと感じた自分自身になんかモヤっとした。
椅子に上がったのは千秋楽が最初で最後でした。足踏み鳴らしたりして、やってることはガキなのにちゃんと大人で居る。あのバランス悪くて妙な感じは拓海くんっぽいなぁと思う。大人でもなく子供でもなく、大人でもあり子供でもある。あの、ほめてます。大丈夫です。
ゲネと楽の芝居が好きでした。
去年みたいに周りに宥められてもそう簡単に怒り収まりそうになくて、頑張って頑張って飲み込んだのに、結局流れぶった切る10号さん。大体お前のせいやぞ。
このまま放っておいて怒り切れれば、逆に落ち着けたんじゃないかな。怒りの頂点で無理やり周りに宥められて、自分でも怒りを抑えようとしたけど、結局10号の振る舞いで怒りぶり返してる。
「あんたが1番」って言われて怒り抑えるところも、輪から外れて気持ちを整えようとしてるところもめちゃくちゃしんどそう。”東拓海”ではなく、”陪審員1号”が。
でかい怒りってどうにかして発散しないと引きずるよね、そういう意味では5号さんも序盤結構しんどそう。とりあえず10号さんのせい。
上手の窓際とか椅子で気持ちを落ち着けようとする1号さん。漫画とかだったら「フシュー…フシュー…」みたいな擬音語書いてありそうなくらい沸騰してる。
「僕にどうしろって言うんですか」
脱力して諦めてる感じが好き。こそっとするんじゃなくて、諦めが入って声のトーンが落ちてるのがよい。
「自分じゃ気づかない人ばっか(りだ)」
一周回って元のセリフに帰ってきた感。あそこの隙間通るの狭そうだなって毎回思ってた。
吐き捨てるパターンと、ポロっと零れるパターンがあった。どっちも直後に笑顔で取り繕うんだけど、「あら、私何か言っちゃったかしら。えー、全然分かんなーい★」みたいな回もあった。ぶりっこしてんじゃねぇ。
千秋楽はそこまで過剰にはやってなくて、サラーっといい笑顔貼り付けて12号躱してた。これは確信犯。
あの後どういう風にやり取りしたのか気になったけど、上手に人が多いシーンなので隠れまくって見えませんでした。残念。
千秋楽以外は無駄ににこやかに会話して、その後顔引きつらせながら席へ戻っていきます。
「全員一致で有罪です!」「ありがとうございます」
サイコロのくだりで12号さんに乗る1号さんの行動の意味がよく分かった。なんか去年はアドリブ大会だったから意識してなかった。一言お礼を添えるところがよい。
2号の「のど飴いりますか」に乗っかる1号と8号も同じ空気だったし、一応みんな大人としてのメンツ保ちながら議論してるんだなって思うシーンだった。
「殺してやる」で飛んできた守衛に見取り図突き返して、追いだした後の顔がヤバい。めちゃくちゃ3号睨み付けてる。直前まで守衛さんにニコニコしてるからギャップが酷い。
4号チェーンにマジ笑いする東拓海。
投票用紙準備する12号を丁寧に窘めすぎたせいで「おじいちゃん扱いされてる??」って言われて普通に場が沸いた回めっちゃ好きだった。拓海くんアレは素で笑ってたよね。こっちも数少ない無邪気な表情でした。
「あ、僕か」
疲労困憊1号さん。
今更だけど一人称”僕”。
アメフトの話の時にもジャケット脱いでた。これもしかしたら途中の一回だけだったかもしれない。私は一回しか気づかなかったし、それ以降はやってなかった。
ここの台詞回し随分変わったなぁって思った。台本自体に修正入って語尾が自然になったのもあるけど、1号さんに見えてる景色が全然違った気がする。
千秋楽の芝居が一番しっくりきた。8号さんのリアクションも含めてすっと入ってきた。話の流れで逆転するだろうと思って聞いてた8号さんにあっさりコールド負けを告げる柔らかい表情した1号さんがなんか新鮮だった。
とはいえ、調べてもアメフトのルールが全然分かんなかったので、コールドゲームの勝敗がどういう感じで決まるの分かってない。そのせいもあってここ本当に毎回頭悩ましてる。コールドでそのクォーターがノーカンになって負けたとか???
「関係ないか!」
急に幼くなる。ここの笑顔はどういう表情なのか、判断が難しい。
エアコンが動いて喜ぶところ、初日はすごい嬉しそうでニコニコしてたけど、2日目は安堵の笑顔って感じだった。ニコニコしてると1号というより”東拓海”って感じするから2日目の方が好き。ゲネはもっと笑顔少なくてそれはそれで好き。
これじゃ、まるで私が"東拓海"を好きじゃないみたいだね???そんなことないです。
椅子に乗ってる12号を窘める時は笑顔だったり作り笑顔だったり。ゲネの普通に迷惑そうにしてたのも好き。
「シーッ」
可愛い。
ジャケット脱いだのは5号のナイフ実演の後だった。どうして今まで気づかなかったんだ。その後の7号と11号のやり取りに気を取られてたのかな。
ただ、何度か見てると7号と11号のくだりが終わった後の時あるし、裁決の直後だった時もあった。はっきりとここで脱ぐ!とは決まってないのかな。あの辺フリーで動ける時間短いもんなぁ。
10号さんにブチ切れる1号さん。胸倉掴んで強く睨みつけた後、力いっぱい突き放す。わざわざ自分からアクションするほど腹に据えかねることだったんだろうな。後ろ向いた時に、ちょっと右肩下がってるのが拓海くん特有の姿勢って感じがする。
一回だけ胸倉掴むんじゃなくて、手元の紙グシャって握りつぶしてから10号を睨みつけてる回もあった。イライラして紙グシャグシャにしちゃうのも、これはこれで結構沸点ギリギリだなぁ感がある。
ただ、「お前もこうしてやる」っていう安い脅しみたいにも見えて勝手に面白くなってしまった。たぶんそんなバトル漫画の噛ませキャラみたいな意図はないと思われる。
「眼鏡の跡か分かるかい!」「確かにあった!確かに鼻をこうやって弄ってました!」
絶妙に会話噛み合ってなくて毎回ジワジワ来てた。
11人で3号を見つめるシーンで足組んでた時があって、ちょっと意外だった。千秋楽はやってなかったし、毎回やってたわけじゃなかった?
他は4号、10号がよく足組んでるんだけど、1号さんの振る舞いの選択肢にも”足組み”が含まれてるとは思ってなかったんだよね。私が去年までの1号さん引きずってるから余計にそう感じたのかもしれない。今年の1号さんは大人しかったり人の顔色伺ったり下手に出たりしないから、当然と言えば当然かも。
足組んでる時は必然的に身体が後ろに倒れるから、ちょっと顎上げて見下ろす姿勢になってて個人的にとても刺さった。前から何度も言ってるけど、顎引いて見上げるよりこっちの方が好きなんですよ。不遜な感じがして。
足組むほかにも椅子の足かけ部分に足かけてる時多い。基本長い脚が邪魔そう。
上手にいる3号を見る時の横顔が恐ろしく綺麗。なにあれ。衝撃的な美人だった。素晴らしい。今後も拓海くんの右側の顔を推していきたいです。もちろん左側も大事にしてほしい。
ここまで書いて今更だけど、髪型がマジで天才だった。かなり思い切ってかき上げてて、残ってる髪の形と流し方も色っぽくて優勝。12人以降も似た髪型してる時あるけど、12人の時のヘアセットが一番美だった。間違いなく今年一番の美人だった。(まだ9月)
「評決に達しました」
あの3号の独白後の静まり返ってる(BGMは流れてる)ところで、ただ一人動き出して守衛を呼びに行く1号さんがなんか好き。ちゃんと手元の紙に評決の結果を紙に書いてから席を立つところも。決を採るたびに几帳面にメモをとってるから当たり前といえばそうなんだけど、最後まで通ってていいなぁって。
あと、全然演出でもないと思うんだけど退出するときに1号さんが使った投票用紙をまとめてゴミ箱に捨てるところ好きなんだ。あのシーン色んな動きの音が聞こえるから、ガサって紙の落ちる音にまで意味を見いだせる気がして。
音には流れを切る力があるじゃないですか、作中演出では扉の音みたいな。だから、意識が向いちゃうとその小さい音だけで1号さんの中の何かが区切りがついたのかな、と深読みできる。
深読み大好き。行間は読んでなんぼ。沈黙にも意味を見出しがち。死に間は敵。
千秋楽のカテコ、一回目入ってきた時から目が潤んでて、唇噛みしめてて。二回目は完全に泣いてたね。キムラさんが言葉に詰まりながらお話してくださってる時も鼻スンスンしてて、なんかもう、「あああー……」でした。全然前向けてないよ。泣かないで。すごく楽しかったよ。
ハイキューのカテコで泣いてる時は、長い公演期間を経て梟を始めカンパニーの人たちといい関係を築けたことによる達成感だと思ってたんだけど(たぶんそういうキャストは多い)、そういうことじゃなかったのかもしれないなぁ。いや、ハイキューの頃はそうだったのかも。でも、間違いなくコロナ以降の拓海くんは”演劇”そのものに対して涙してるような。ハイキュー的に言うと”演劇にハマった”っていう感じ?役作りの精度もその辺りからすごい上がったように感じる。
なんかちょっとうまく表現できてない気がする。伝わりますか、伝わってないかもしれない。
えーと、演劇が好きで、演劇をしたくて、演劇をやり切れたことへの感謝とか喜びなのかなぁって。誰と演ったからとか、そういうんじゃなくて、いやでもこの座組で作り上げたことに対する達成感とかはあって、、、えっと!!!人生の中で一番言葉に迷ってる!!今!!
演劇というものがそれだけ拓海くんの中で大きな存在だということを改めて感じました。大阪公演でハイになってたのも含めて。そして、私はそれがとても素敵なことだと思いました。応援してる人が何かにひたむきであるという事実は大変喜ばしいことです。その”何か”が演劇であることも私にとってはとても嬉しいことでした。
機械翻訳みたいな文章しか書けなくなったので私はもうだめかもしれない。
はじきょのバクステで崇人くんが「拓海の木兎は泥臭い。地に足がついてる。俺はそれがめっちゃ好き」って言ってたのをふと思い出した。あれは拓海くんの本質を突いた言葉だったな、とか。
そういえば私は千秋楽でスッとしてる拓海くんは見たことないな。泣くかおどけるかのどちらかしか見たことがない気がする。極端すぎる。
□まとめ
今年の12人も楽しかったです。
冷静になると2時間の演目で途中休憩暗転無しって観る側も結構ハード。最後の暗転の時に客席中から居住まい正す衣擦れの音がするのちょっとシュールで面白い。身体バキバキになるもんね。分かる。
会場はやっぱりこれくらいのサイズが良いなぁ。去年は不測の事態とはいえ、やっぱりちょっと広かった。小劇場って贅沢だ。
来年も観たいし、拓海くんに出てほしいし、別の役にも挑戦してほしい。