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JTCな非SaaSのIT企業にとってのカスタマーサクセスとは

このnoteは、『CS HACK Advent Calendar 2024』13日目の投稿です。
JTCとは、Japanese Traditional Companyの頭文字で、日本の歴史ある伝統的企業…つまり変化を好まない、古きものを変えにくく新しいものをとにかく受け入れにくいといった性質を持つ企業のことを指し、私はこのJTCに所属しています。


自己紹介

私は、いわゆるSIerと呼ばれるIT企業に所属し、長らくは企業様向けITシステムの構築や運用を行うシステムエンジニア、プロジェクトマネージャでした。その後、新規事業のマーケティング・プロモーションの立ち上げ等を行い、2021年からはカスタマーサクセスを駆使した事業拡大・事業継続をミッションとするチームの責任者をしています。
 住まいは神奈川県逗子市。横浜からちょっと離れた、三浦半島という、海と緑、低い山に囲まれたエリアに住んでいます。子育てと仕事の両輪で走ってきた日々もあっという間に過ぎ、気づけば二人とも成人し家を離れました。

なぜSIerなのにカスタマーサクセス?!

私の所属する事業部門では、2021年4月にカスタマーサクセス推進グループが設立されましたが、その時の目的は「サービスビジネスの拡大に欠かせないカスタマーサクセスを社内に先駆けて実践する」というもの。人口減少社会や”所有から利用”という市場の変化を考えると、いつまでも売り切り・人員リンク・フルカスタマイズ・・・というビジネスだけでは存在できない。急にサービス事業がシステム開発事業を逆転する、ということはないけれど、着実に時代が変わっていくことを見据えて組織ができました。

2024年の現在地は・・・

2024年も終盤に差し掛かった今、2021年当初から比べると、社内外ともに「カスタマーサクセスって何だっけ?」という人は随分減ったような気がしており、用語としてはある程度浸透したようにみえます。しかし未だ社内においてはCSというロールも専門部隊も存在してはいない状態。なお、別の非SaaS大手IT企業では、カスタマーサクセスの浸透と実践を強力に進めるための専門組織を設立し、育成に関するプログラムの整備や、カスタマーサクセスを人事考課制度に組み込む動きが出てきている会社もあります。

某メーカR系のIT企業。IPAに準拠しスキルセットを定義

さらに、日本独自のカスタマーサクセスを形作ることを目的に日本カスタマーサクセス協会が設立されており、非SaaS企業もSaaS企業もともに手をたずさえて、日本の商慣行にふさわしいカスタマーサクセスを形作ろう、という動きも加速しているようです。
日本カスタマーサクセス協会は、元Sansanの山田ひさのりさんを代表理事とし、カスタマーサクセス界隈のキーパーソンが理事として参画してスタートしています。

今何に苦戦している??

進んでいるのか、いないのか。進捗通りなのかそうではないのか・・・? 非SaaSのIT企業・SIerはカスタマーサクセスの実践に苦戦している、というふうに言われます。では、一体何に苦戦しているのだろう・・・

経営陣もカスタマーサクセスとは何かということへの理解は高まっているし、「新しいことは実はあまりなくて、すでにやっている人はやっているよね」という方もいます。
SaaSに限らず、ソフトウエアパッケージのカスタマイズ案件や大規模なシステム開発案件においても、カスタマーサクセスの既視感というのはやはり強いのかも、とも思います。しかし・・・

  • 機能紹介と導入スケジュール紹介、わからないこと・ご質問あったらいつでも聞いてね、以上!という言いたいことだけ言って終わる提案スタイル

  • 安く早く環境を提供することだけに注力しすぎて、お客さまに必要な体験を届けられず結果PoCで終わってしまうというPoC(※)貧乏

  • 当初立てた強気な数値目標をコントロールすることなく、ひたすらプリセールス活動に溺れ、正しい顧客像を見失う

※PoC:Proof Of Comcept 。顧客課題や解決策を仮説立案し、そのサービスを使うと解決できるのかどうかを検証するというもの

このような状態の新規事業が、わりと多く存在しているのも事実。この症状は、顧客理解を十分できない状態、顧客理解のために時間をさくことができない状態が続いた結果、発生するものと思います。

それに対する処方箋はシンプルに、当たり前かもしれないですが「顧客理解」から。例えば・・・下記のようなことを、事業チームに変わって私のチームがやって見せたり、たたき台となるシナリオや資料を作って実践してあげたりします。

  • お客さまに現場業務についていかにたくさんお話をしていただくかに専念し、聞けた課題に確実に製品価値を当てはめる提案シナリオ・提案ステップを実践

  • 製品ありきではなく、課題ありきで対話を深めていき、複数商材をまたがったソリューションの提案につなげる

  • ベンダ側主体の環境構築用タスクリストではなく、顧客主語でその体験を作り込みながらPoCゴールに誘導するシナリオを整備

これから

カスタマーサクセスのエッセンスがあちこちに含まれているな、と感じながら、もはやカスタマーサクセスという言葉を使わなくても、あるいは使わないほうが、現場は行動しやすくなるのではないか、とも思います。

ある一定のルールや型が存在するなら、迷わずにそこを目指しその型に従い行動すれば良いでしょう。でも、ルールや型は何も無いところからはうまれず、たくさんの経験/知見の中から共通項を探し出して初めて型ができてくるはず。
型を作ったあとの世界。そこには憧れもありますが、その前にまずは、まだまだどんどんカスタマーサクセスを実践しユースケースを増やしていかなきゃ、と思います。トライ&エラーは続きます!

欧米流を学び続けながらも自分の組織にむけての翻訳を通じて、日本や自社にとってのカスタマーサクセスを確立することが、正しくしあわせな事業成長をもたらすと信じます!

最後までお読み頂き、どうもありがとうございました!
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