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希少レンズを守り、楽しむ。 Leitz Hektor 5cm f2.5 のアクセサリについて
※いつも以上にマニアックな記事です。
Leitz Hektor 5cm f2.5
ライカレンズ開発の黎明期に登場したハイスピードレンズ。
概要は以下の記事を参照されたし…。
レンズを運用するにあたって、レンズに傷や汚れがつかないように扱うことは基本中の基本であり、殊オールドレンズのようなビンテージ品であれば「出来る限り手に入れた時のコンディションを保つ」ように心がけている。
現代のレンズであればプロテクトフィルターの径や種類が豊富にあるので特段気にとめることもないが、オールドレンズは製造時期によってフィルター径が変わったり、そもそもネジが切られていないロットが存在したり、逆ネジ仕様だったり…とにかく気を使うというか、どのフィルターが使えるのか調べ上げてからでないと痛い目に遭う事も少なくない。(汗)
さてこのヘクトール5cm、フィルター径が21.5mm(!?)である。
エルマー5cmは19mmのフィルターが使えるが、このフィルターもほぼエルマー専用で製造されてるんじゃないかと思ってしまうほどマニアックな製品である。
まして21.5mm径のフィルターなんて…。とダメ元で探すも、やっぱりどこにも存在しない。本当に見当たらない。
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仕方なしにA36のかぶせ式フィルター(Kenko製特注)にするか?等と考えあぐねていた所、素晴らしいフィルターに出会う。(というか製造可能ということを知る。) 探してみるもんだなぁ…と感動しきり。
そしてフィルターを買ったが故にフードも導入することに。このフードも、涙モノの素敵な製品なのであった。
アクセサリがアクセサリを呼ぶ。恐ろしい世界である。(笑)
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まず、フィルター装着なしでレンズキャップをつけた姿がこちら。
ヘクトールを買ってから2年ほど、この状態で使ってきた。なるべく汚れや拭き傷をつけないよう、慎重に扱ってきた…。当時品のレンズキャプも程よいテンションで嵌っているだけなので、うっかりすると無くしそうな代物。(汗)
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フィルターを装着するとこうなる。結構飛び出すが、真鍮を黒染めした丁寧な作りで見た目の違和感は少なく、絞り操作も問題なく行える。ガラスにはうっすらとコーティングが入っているが、試写した感じは未装着のときと全く変わらない。描写への影響は皆無と言っていいだろう。
ただ、レンズキャップが使えなくなってしまった…。これは痛手である。レンズを守るためフィルターは付けたい。でも当時物のレンズキャップも使いたい。ここでまた悩む。
そしてふと、あるアクセサリを思い出した。
このヘクトール5cmを購入させていただいた、flashback cameraさん特製のレンズフードである。
並々ならぬ熱量のアクセサリである。このフードを使うためにエルマーが欲しくなる(笑)ほどの、愛に溢れた製品。ぜひ開発秘話を覗いてみて頂きたい。
エルマー用のフードとほぼ同じ作りで、ヘクトール用フードも併売していたことを思い出したのである。もしかしたらこのフードを使えばレンズキャップが使えるんじゃないか…?しかも、真鍮黒塗りなら仕上げもほとんど同じで違和感なく使えるはず…絞り操作も出来るなら完璧…と。
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フィルターを装着した状態でフードを付けられるのか不安だったが、全く問題なし。止めネジ仕様の固定方式が泣かせる。まるでズマロンやズマリットの縮緬塗装フードみたいじゃないか…。さながら古き良きライツ純正アクセサリのような風貌である。艶のある黒塗りの風合いも、これから使い込んでいく楽しみを感じさせる。
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そして悲願の…レンズキャップも装着!
この嵌り具合がなんとも素晴らしい。誂えて作ったかのようなフィット感である。このかぶせ式キャップが実は曲者で、個体差によるのか内側のモケット生地の劣化によるのか、キツすぎて嵌まらないものとスカスカなものが結構ある。ただ持ち前のキャップは当にジャストフィット…。これで私のヘクトール5cmは完全体と相成った。
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製造から100年が経とうとしているレンズに熱中する私も、酔狂な趣味だとつくづく思う。でも、そんなマニアックなレンズに使えるアクセサリが今も製造されている事に、強く感銘を受けるのである。
良いものは古びない。一言では言い表せないが、時間に磨かれたビンテージ品をこれからも大切に使っていく為、また、道具として使うことで得られるレンズの楽しさを味わう為、こうしたアクセサリは脇役ではありながら、主役であるレンズを支える影の立役者と言っても全く過言ではないだろう。
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ライカDⅡにつけたりしたらもっと格好いいんだろうなぁ…。
など邪な事を考えてしまう(笑)ほど、イイ見た目である。
オールドレンズへのリスペクト、プロダクトへのこだわりを強く持って作られたこのアクセサリたちは、手にする度に作り手の魂が伝わってくる。
そんな感慨に浸りながら、カメラを弄り、写真を撮る。
これほど楽しいことはない。