よしながふみの映画みたいな漫画_2024/05/01
小中学生の頃、微妙に繋がっている姉の部屋にこっそり忍び込んでは漫画を借りて読んでいた。姉はお小遣いの殆どを本に継ぎこんでいたので、毎月新しい漫画が読めた。もちろんバレる度に怒られていたが、かなり大きくなるまで倫理観が発達しなかったのでへっちゃらだった。
冨樫義博やCLAMPや一条ゆかりなど有名な漫画もあったが、所謂BLも好むようで同人誌も多く、読み進めるのが難しいものも多かった。
そんな中で衝撃を受けた漫画がいくつかあった。
小池田マヤの『聖☆高校生』は、性的に赤裸々かつ劇的なストーリー展開で驚いた漫画なんだけど、それは今度また書く。
よしながふみは、たぶん最初に『月とサンダル』を読んだ。
確かにジャンルはBLで男性と男性の恋愛漫画なんだけど、ものすごく”人間”を感じる描写が自然で丁寧で、絵も癖がなくとにかくストーリーが抜きんでて面白いと感じた。この作品かは覚えてないけど、BL作品は性的にしっかりした描写もあり、ページをササッとめくったりもした。
どれもこれも、人の人生や人と人が出会った時間が切り取られていて、フィクションなんだけど愛には男とか女とか別に関係ないんだなと思うようになった気がする。親子や友人やパートナーや夫婦のシンプルな愛情とは言えない微妙な関係性がいっぱいでてきて、あらゆる感情を肯定しているような印象を受ける。
『愛すべき娘たち』には特に影響を受けている。
祖父に「決して人を分け隔てしてはいけない」と言われて育った主人公が、人と特別な関係性を築くことは人を分け隔てることだと矛盾を感じる描写。
女子中学生がわいわい喋ってる中で「民間企業で勤め上げるのが夢」という友人の意志と、その後の描写。
親の自分への教育方針や発言の根底には、親自身がその親から受けた教育に強く影響を受けていることが徐々に分かってくる描写。自分のコンプレックスを積み上げる親にもまたコンプレックスがある。
オムニバスが好きなのもあるけど、この本は大好きで何度も読み返す。
あと、たまに出てくる、人物の横顔や背中越しにセリフが静かに書かれている手法や、セリフ一切なしでまばたきだけ複数コマでする手法はなんなんでしょうか。”間”が絵で描かれていて、静かな時間が流れているのを感じて、すごく映画だなと思う。
最近出た『環と周』も、1話目から飛行機で読んでて泣いちゃった。
間違いなく自分の思想に影響を与えてる漫画家だなあ。
今までの作品全部読み返したくなってきた。