その旅人の正体は…
その日、私はシアトルのダウンタウンに出た。
シアトルは、スタバの発祥地で、「街を歩けばスタバに当たる」くらいたくさんある。
店を2、3件回って、やっと空いている店を見つけた。
注文をし、席につき、テスト勉強を始める。
それから、しばらくして左隣に男性が座った。
彼もまた、注文して一息ついているように思われた。
だが、私が勉強していると、私の左の視界に動きがない。
思い切って彼を見て見ると、彼は黒いつばの大きい丸い帽子を顔に被せ寝ていた。右足元には、黒いスーツケース。
「アメリカの地で、しかも、カフェで無防備で寝られるこの旅人…どれだけ余裕なんだ…」
そう思っていると、彼が起き上がって流ちょうな英語で私に言った。
「僕の荷物を見張っててくれない?トイレに行きたいから。」
それに、私はさらに驚いた。
「さすがに、見知らない人に自分の荷物を見てと頼むとは…。」
私は、日本では電車でも居眠りをするが、海外では絶対しない。外出時間も気を付けるし、バッグの持つ位置も気にするし、行き先も気を付ける。
その後、彼がトイレから戻って私に「ありがとう」と言うと、彼は続けて私に質問してきた。
「何をしているの?」
「テスト勉強だよ。」
「ここの学校通っているの?」
「そう、でも本当は日本の大学で、今は交換留学中なんだ。」
そう、私たちは何も違和感なく英語で会話していた。