「時代の流行と感覚が音楽理論をアップデートする」 【ゼロからはじめる音楽理論 No.4】
時代の流行と感覚が音楽理論をアップデートする
さて、前回は「ブルースは西洋クラシック音楽の外にある」というおはなしをしました。
では、音楽理論がブルースを「外の音楽」として排除しているかというと、もちろんそんなことはありません。
古典的なクラシック音楽の理論では、ブルーノートというものは説明がつかない音でした。
しかし、現代の音楽理論ではしっかりブルースについて説明がされます。
つまり、「音楽理論がアップデートされた」ということです。
なぜこのようなアップデートが起こるかというのは、
「ブルースという音楽がカッコよくて流行ったから」
のひとことに尽きます。
歴史的には、ブルースミュージックは、アフリカ大陸からアメリカに奴隷として連れてこられた黒人たちが生み出したとされています。
それまでブルースというものを聴いたことがない西洋のひとびとからすると、奇妙でおそろしいものに聴こえたといいます。
実際、ブルースは「悪魔の音楽」とさえ呼ばれていた時代があります。
しかし、結果としてブルースはロックを生み、ファンクを生み、そのほかさまざまな音楽に影響を与えていきました。
それは、「ブルースに音楽的な魅力があり、おおくの人の心をとらえた」ということにほかなりません。
となると、音楽理論側もそれを説明できるようにアップデートされます。
このあたりは、わたしたちの「話しことば」と「辞書」の関係に似ているかもしれませんね。
たとえば、「全然だいじょうぶだよ!」という言い方は、むかしは間違ったものとされていました。
「全然」という言葉は、否定表現にしか使えない、つまり、「全然ダメ」や「全然よくない」といった言い方は正しいのですが、「全然だいじょうぶだよ!」という肯定表現との組み合わせは「辞書的には間違っている」とされていました。
しかし多くの人が「全然だいじょうぶだよ!」や「全然良いじゃん!それ!」といった話しことばを使うようになると、辞書側もその使い方を正しいものとして載せるようになります。
同じように、「現在の音楽理論からみると間違っていたり、説明がつかない音楽でも、その音楽を多くのひとが認めるようになれば、音楽理論はそれに合わせてアップデートする」ということです。
すこし乱暴ないいかたをすると、
「カッコいい、魅力的な音楽をつくったもの勝ち」
ということです。
これも音楽理論を学ぶにあたってとても大事なことです。
音楽理論は「絶対的でゆるぎない不変のもの」では決してありません。
その時代時代を生きるひとたちの「この音楽カッコいい!」という感覚によってアップデートされていくものです。
つまり、音楽理論を学んでいくにあたっては「なにか絶対的で不変的な真理を学ぶ」というスタンスではなく、
「自分がつくりだす音楽の魅力によってアップデート可能な、柔軟性をもったルールを知る」
というスタンスで取り組むのがよいでしょう。
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