「自分の好きの精度が上がる」 【ゼロからはじめる音楽理論 No.2】
音楽理論が役にたつ4つの場面
さて、音楽理論の必要性を考えるにあたってもうひとつ気になるのが、 「で、結局は理論ってなにに使えるの?」 というところだと思います。
それはそうですよね。 せっかく勉強しても、ふだん使う場面がないのであれば意味がありません。
ここでは、具体的にどんな場面で理論が役にたつのか見ていきましょう。
①共演者との会話のため
たとえばセッションなどでは、こんなかんじの簡単な譜面だけをつかって演奏をすることがよくあります。
そのばあい、少なくとも書かれてあるコード=和音についての理論的な知識が必要になります。
また、スタジオミュージシャンなど、譜面に合わせて演奏することをなりわいとする人には必須の知識となります。
②分析的に音楽を聴くことができる
音楽理論の実践として、ソングアナライズ=楽曲分析というものがあります。
なにか好きな曲があったら、その曲がどんな構造になっているかを、おもにコード進行の観点から分析する作業です。
たとえていうなら、漫才のコンテストなどで、審査員のひとはお客さんと違う目線でみてたりしますよね。あの感じに近いものです。
お客さんとしては「ただ単に面白いから笑う」という状態ですが、審査員のひとは「なぜおもしろいのか」を分析的にみることができます。
もちろんこれは「分析的にみれるから審査員はエラい」ということではありません。
ただ、審査員をやりたいなら、やはり分析的にみる技術が要求される場面が多くなるでしょう。
音楽でいえば、職業作曲家や編曲の仕事ではこういった分析的にみる技術が必要となる場合が多くなります。
③自分の好きの精度が上がる
個人的には、これがいちばん大きな利点だと思います。
セッションや編曲の仕事は、「別にほかの人と共演とかしないし、そういった仕事もやらないし必要ない」といってしまえばそれまでです。
しかし、「自分の『好き』の精度を高める」というのは、ひとりで作曲や演奏をする場合でも、とても役にたちます。
例えば、自分でなんとなく作った曲がとても気に入ったとします。
「なぜ自分はそれが好きなんだろう?」
「うまく言葉にはできないけど、なんか好き」
ということはよくありますよね。
あなたがリスナーであれば、それで何も問題ありません。
「なんでか理由は分からないけどこの曲好き。もう1回聴こう♪」
で全然オッケーです。
しかし、あなたが作曲をするひとであった場合はどうでしょうか?
前に作った曲が好きだったからといって、「また同じコードとメロディーで歌詞だけ変える」というわけにはいかないですよね。
そのときに、自分の「好き」の精度が高ければ、
「自分が1番好きなところだけを残して違う感じの曲をつくる」
ということができたりします。
④最終的にはルールを壊すことができる
ルールを壊すというと大げさでぶっそうな感じがしますが、すでに現代に生きるわたしたちはそれを体験しています。
実際にルールが壊された例のひとつが「ブルース」です。
現在いわゆる「音楽理論」とよばれるものは、西洋クラシック音楽が源流です。
詳しくはのちほどまた解説しますが、ブルースミュージックが生まれた当初は「西洋クラシックの音楽理論上あり得ない音楽」という扱いでした。
しかし、ブルースはとても魅力的な音楽であったために結果としてロックやファンクなどさまざまな音楽を生み出し、現在のポピュラーミュージックのほとんどに影響を与えています。
結果として、音楽理論は「なんとかしてブルースを説明できるようにアップデートする」ということになりました。
「理論上はあり得ないけど、魅力的な音楽」によっていったんルールは破壊され、それを取り込むようにして理論がアップデートされたわけですね。
ということは、「いまの理論上でNGとされていること」を知っていれば、逆にそこを攻めることで「効率的にルールを壊してアップデートする」ということもできそうですね。
この「ブルースによる音楽理論のアップデート」はとても重要なことなので、次の項目でひきつづきみていきましょう。
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さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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