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天馬と共に(創作小説)

プロローグ

Twitter(Xという名前になったらしい)のFFさんにnoteのテーマを募集したところ、あるお題をもとに小説を書いてほしい、との案をいただきました。
というわけで、そのお題が何なのか予想しながら読んでみてください!
それでは本編です!


※この小説はフィクションです




本編

小中学校でいじめられていた僕。
変わりたいと思い、誰も僕を知らないところへ進学する決意をした。


中3の初夏、爽やかな風が吹いていたあの頃。


思い立って最初に受けた夏の模試。
返却された用紙には、「E」という絶望的な文字が刻まれていた。

「残酷なことを言うけれど、君の学力では無理だよ」


大人たちは口を揃えてこう言った。

無謀だとは分かっている、けれどもここで諦めるわけには…

諦めてしまったら、あと3年も耐えなければならないということ。
卒業する頃には僕が僕でなくなってしまう。
それだけは絶対に避けなければならない。


でも、現実的には厳しいよなぁ…


いつもの公園のブランコをほんの少し揺らしながら、ただ夕焼けを眺めていた。

目を閉じると、瞼の裏に浮かぶのは今までされてきた悪質ないじめ。
周りの大人は助けてくれない。
優等生がいじめをするはずないと思い込んでいるから。


ここで諦めてはいけない。
絶対に変わってやる。


しかし、現実はそう甘くない。


理由は明白である。
元々地頭がそこまで良くない上に、いじめによるストレスの逃げ場としてインターネットに依存していたから。

今日もまた、いつもの公園で夕焼けの中ブランコを揺らす。
目にうっすらと涙を浮かべながら。


今までは机に突っ伏し、夢の世界へ飛び込んでいた学校の授業をちゃんと受け、個別指導塾に通い詰めて半年近くが経過したのにも関わらず、成績は相変わらず水平線の如く横這い状態である。それも当然、中学3年生の夏からは皆がやる気を出し、皆が勉強するから他人と同じような努力量では成績が上がらないのである。

これも全部いじめてきたあいつらのせいだ。

あいつらがいなければ…あいつらがいなければ…


僕の頭の中の悪魔が囁く。

「もう全部諦めちまえよ」

「努力したってお前は凡人なんだ、変われないさ」


それに対抗するように頭の中の天使が囁く。

「このままではダメよ」

「やればできる、あの屈辱を忘れたの?」

「あと3年間も耐えられるの?」


あああああああああああああああああああ

辛い、あまりにも辛すぎる。

感情が抑えられなくなり、目からは大粒の涙が溢れる。


なんで僕だけ、なんで僕だけ…

過去が変わることはないと分かっていながら、小学1年生のあの頃の事件を反芻する。

僕は、どうすれば良かったのだろうか。



___あれは小学校に入学して1ヶ月が経過した頃のこと。

苗字の関係で出席番号が早い僕は、1番最初の給食当番をすることになった。

当時僕たち1年生が入学して初めての給食であり、皆緊張しながらも初めての「給食」に興奮を抑えきれずにいた。

僕もその1人だった。

当時のメニューはなんだっただろうか。

思い出せない。

ただ、おかずだけは鮮明に思い出せる。


「エビフライ」


エビフライが僕の人生をどん底に叩きつけたと言っても過言ではないだろう。

僕はエビフライを教室に運び入れる途中、死角から足を引っ掛けられて転んだ。

犯人は、あいつだ。

小学校に入学してから1ヶ月しか経っていないにも関わらず、抜群のルックスとコミュニケーション力でクラスの中心人物となっていたあいつ。

僕が狙われた理由は、背が低くて喘息持ちゆえに貧弱体質だったからだろう。

「こいつが先生に本当のことを言えるはずがない」

「こいつと喧嘩になっても絶対勝てる」

そう思われた、いや思われてしまったのだろう。

とにかく、僕はエビフライを教室の床にぶちまけた。

クラスメイトの瞳は期待と興奮から絶望へと変わった。

ただ1人、あいつを除いて。

「あっ、あ、焦らないでください!」
「怪我はありませんか?」

先生の呼びかけにも応じず、ただ呆然と立ち尽くしていた。


冷たく鋭い視線に耐えきれず、発作を起こした。
そして、バランスを崩して僕の華奢な身体は地面へと吸い込まれた……


「こんな時間に何してるの?風邪ひくよ」

後ろから声をかけられて現実世界に引き戻された。
時計を見ると短針はもうすぐ9に差し掛かろうとしている。
辺りはもう真っ暗だ。


「久し振りだね、元気にしてた?」


幼稚園の頃から仲が良く、小学校の時もいじめられていた僕を唯一助けてくれたあの子。
容姿端麗で運動神経抜群、おまけに性格も成績も学校1だったあの子。
1年に1度は必ず男子に告白されるのに、一度も了承しなかったあの子。

僕とは似ても似つかないあの子…


「話してみてよ、久しぶりに会ったんだしさ」


あの子は賢かったから、名門私立中学に進学した。


ずっと君を追い続けていた。
僕があの高校を第一志望にした1番の理由は家から遠いことだが、あの子の進学先ということも頭の片隅にはあった。
ずっと謝りたかった。
小学生の時に距離を取った事。
巻き込みたくなかった。
君がいじめられるのだけは、絶対に避けたかった。


あーーーーーーーーー


もういいや、全部吐き出してしまおう。
こいつに隠しても、全部お見通しだもんな。

「実は…」


あの時君を遠ざけたのは嫌いだったからじゃないということ…


ずっと謝りたかったこと…

ずっと君に憧れていたこと…

君と同じ学校に通いたくて勉強を頑張っているけど、学力的に厳しいということ…


全て話し切った。

洗いざらい全部。

笑われたっていい。


恥ずかしいけれど、清々しい気持ちだ。


全て話し切って、ふとあの子を見ると目に大粒の涙を浮かべていた。

あの子は涙を拭きながら、頬を緩ませて安堵の表情で言った。

「私のこと、嫌いになったんじゃなかったんだね…」

「何か手伝えることある?頑張りたいって言うなら、私が勉強教えてあげよっか?」


僕の何倍も、いや何十倍も賢い君に教えてもらえるなら喜んで…

でも、僕の脳みそでは無理だよ…


「じゃあ、こうしよう」


「第一志望に受かることができたら、なにか一つだけ君の言う通りにしてあげる」


?!?!?!?!?!

本当にいいのか


「いいよ、武士に二言はないっ!」


武士じゃないじゃん…w


「確かにねw」


今日は遅いから帰ろう


「…そだね」

あの子を送り届けて家に着いた。

冬の寒さが体に染みる。


家に着いて時計を見ると、もう日付が変わってしまっていた。

本番まで後2ヶ月ほど…


もう今年も終わるのか…


ここが踏ん張りどころだな


不安に満ち満ちた自分の心情とは裏腹に、僕の成績は右肩上がりにぐんぐん伸びていった。

おそらく、あの子の教え方が僕に合ったのだろう。

とにかく、僕の学力は第一志望の高校に受かることができるか否か半々のところまで伸びた。

何がなんでも受かってやる。

本番直前の模試では、今までに一度も見たことのない「C」の文字。
コンディションも申し分ない。
あとは、自分を信じて突き進むだけだ。


ふと空を見ると、雲ひとつない快晴だった。


そして迎えた受験当日。
曇天の中、単語帳を片手に会場へ向かう。

4月から、毎日この道を通れるようになれたらいいな…


やれることはやったはずだ。
いや、やった。これで落ちても悔いはない。
少し腹部に違和感があるが、大した事ではない。

ふと思い出し、昨晩あの子にもらったメールを見る。

「自信持ってがんばれ!」

あの子らしい、端的でまっすぐな言葉。
何度も口に出してみる。

できる、できる、僕は絶対にできる。やるんだ。


会場に着き、少しずつ本番が近づいてくる。

中3の僕の集大成。

刻一刻と、その時が迫る。
それに伴って、激しく鼓動する僕の心臓。
大きく息を吐き、深く深く息を吸う。

「それでは、始めてください」

試験官の合図と共に、一斉に手を動かし始める。
静寂に包まれた会場に、ペン先と天板の音がこだまする。
解ける。解けるぞ。
過去問を解いた時とは違う、これはいける。

そう思ったのは束の間。

激しい痛みが腹部に走る。

痛っ……!!

思わず腹を抱え込む。

今までに経験したことがない痛み。

まさか本番でこのようなことになるとは…

僕は落ちるのか?

いやだ

いやだ

いやだ

いやだ…

もうあの生活には戻りたくない…絶対に


外は大雨が激しく降っていた。


「ペンを置いてください」

必死に痛みを堪え、なんとか耐え切った。
埋められない問題があったが、今の自分にできることはやり切った。


やり切った。
悔いはない。
あとは結果を待つだけだ。


この先2度と入ることができないかもしれない会場を後にし、帰路につく。


雨は止み、雲の隙間から一筋の光が差し込んでいた。


「それにしてもさぁ、良く頑張ったよね」


自分でもそう思うよ、絶対に戻りたくはないね


「正直、無理なんじゃないかと思ってたよ」


ああ、俺もそう思ってたよ
君のおかげだよ…


色んな意味で


「色んな意味で?」


うん


「勉強教えただけじゃない?」


あの日の公園での約束を忘れたのか


「あっ………」


俺は、あの約束を片時も忘れたことなかったよ

武士に二言はない、だっけか


「…確かに言ったけど」

「ああもう!分かったわよ」

「何がお望み?」


◯を触らせてくれ


「は?」

「何言ってんの?」


だから、◯を触らせてくれ


「…優しくしてよね」


あったりまえじゃん


じゃあ、触るね…?


「ん……」


この時を待ち望んでいた。

昔から、僕はこれを望んでいた。

一度も、誰にも言ったことがなかった。






そう、僕は髪フェチだったのだ。



特にポニーテールの。
極度の。




だから、僕は「髪」を触らせてもらう選択をした。



髪に手を滑らせる。


わしゃわしゃ…


なんという至福の時。


自制が効かなくなる。


「ちょ、ちょっと触りすぎじゃない…?」


聞こえない。
我慢なんかできない。


もう少しだけ…もう少しだけでいいから…


わしゃわしゃ…






※この後めちゃくちゃわしゃわしゃした


〜完〜




エピローグ

いかがだったでしょうか。
良ければ感想等をコメントしていただけると嬉しいです。
気持ち悪い等の自分に都合の悪い感想は聞きません。
人生初の創作小説だったので、変なところがあるかも知れませんがご愛嬌でお願いします。
何人がここに辿り着いたのでしょうか。
色々足してたら、思ってたより長くなっちゃった笑


ちなみにですが、お題はこれでした。
ぬまひろ、お題提供ありがとね



ところで、この話には一つだけ私の実話があるのですが、どこか分かりましたか?





それは、エビフライぶちまけ事件です。
まあ、みんな慰めてくれたし誰にも責められなかったです。
自分で勝手に転んだだけなので、主人公くんとは少し違いますけど。


実際書いてみて、結構楽しかったのでまたやりたいと思います。
それでは。



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