「夜霧のジョージⅡ 紅の十字架」終幕 〜弾かないギターより愛をこめて〜
一昨日12月3日、南塾第19回公演「夜霧のジョージⅡ 紅の十字架」無事全公演終幕いたしました。
前回出演した「無頼茫々」より五ヶ月ちょっと空けてからの舞台出演、もっとやってる人からすれば決してコンスタントというわけでもないのでしょうが、年内にもう一度舞台に立たせてもらえて、ありがたい限りです。
前回は年単位のブランクがあったので「出演したい」と言い出すまでの逡巡や葛藤がものすごくあったのですが、今回はというと
前回「無頼茫々」の稽古佳境時
南さん(演出家)「丸ちゃん(私)、次回出る?」
私「え? あ、はい」
南さん「よし、決定」
この三行だけで半年後のスケジュールが決定しました。
いや、ありがたい話なんですけども。
こんな簡単でいいのかってちょっと思ったりもしましたね(笑)。
今回の作品は前回の「訴えかける」ニュアンスの強い作風とは一転したエンタメ作品。それも昭和テイストの勧善懲悪もの。
有り体に言ってしまえばベッタベタなコメディだったわけですが。
実は出演するとなるとシリアスというか、メッセージの秘められた文学的な作品に出ることが多い私にとって、こういう頭空っぽにしてもわかる(貶してないよ)直球のコメディに出るというのはなかなかに珍しいことでした。
まあ、そういう真面目な作品でもおふざけ担当みたいな役に選ばれることが多いわけですが。
今回の役もその例に漏れずなかなかにポップなものでした。
まず、見た目と名前がそもそも「人造人間キカイダー」のジローそのままだし。
弾けないのにギター持たされるし。
開幕早々出オチみたいな登場の仕方するし。
とにかく出るたびに一発何かふざけないといけない、そんな役でした(これに関しては他のキャストの役もそうだったかもしれませんが)。
経験があまりないからということもあるかもしれませんが、私いわゆる「遊ぶ」ということがどうも苦手でして。
セリフはすぐに覚えられるしダメを出されたらそれを修正するように努力することはできるのですが、「台本にないことをする」という行為についついブレーキをかけてしまうんですね。
ある種、ウケを狙うことに対して臆病になっているというか。
そういう意味でいうと今回の役は前回の福留とはまた違うベクトルで色々と悩みました。
これ本当にウケるのか? スベり芝居になりやしないか? とか色々。
けどギャグなんて思いっきりやってなんぼだし、遠慮されると一気に冷めるから、腹括って全力でやったつもりです。
幸いにも全ステージ通してお客さんがあったかく、登場シーンで笑いが起こった時はすごく安心しました(あそこがギャグシーンの一発目なので、プレッシャーが半端なかったです。初日は直前になって一気に緊張して心臓バクバクでした)。
ただ今回は結構早い段階(というかほぼ最初から)からどの役をやるのか、なんとなく予想がついていたので、その分役と向き合う時間は結構あったかな、と思います。
いや、別に初めから役の打診があったわけでもなく、演出家から直接指名されたわけでもないけども。
顔合わせの日に役のことを話している際、こっち見ながら話されたら流石に察するでしょうよ(苦笑)。
二郎というキャラは、ヒーローではありません。
弾けないギターなんて持ってるし、1mもない段差から飛び降りただけで足折れるし、色々な人から殴られたり恫喝されたりするくらい戦闘力低いし。
絵に描いたようなかっこよさはない、どうあっても二番手のキャラクターです。
ジョージは今作のヒーローだし、ハスラーはその宿敵たる存在だし、服部修道士は物語を通して心境の変化がよくわかる丁寧なキャラだし、悪玉三人は言わずもがな。
そう考えると、二郎は男性の中では物語上でキャラクターの深掘りがあまりされていない、いわゆる名脇役と呼ばれるポジションであるのかもしれません。
けど、どんな人物にも物語はあるし、きっかけはどうあれ筋のある意思を持つ生き様はかっこいいもの。
令和の時代に私が命を吹き込んだ二郎という人物が、見てくださった方達にとって「ただの軽いおふざけ役」で終わっていないことを切に願うばかりです。
いえ、楽しんでいただけたのなら演者としてそれに勝るものはないのですが(笑)。
それにしても今回の公演、過去イチと言っていいくらい肉体的に疲れました(唐突)。
配役が決まった直後、流行病にかかって稽古をストップさせてしまったり(その節は大変申し訳ございませんでした)。
ほぼほぼ唯一の休みである土曜にプライベートな用事が重なって一日家にいるという休日がこの二ヶ月で1日か2日くらいしかなかったり(一泊で福岡行って翌日タタキに遅れて参加なんてこともありました)。
こんな個人的にドタバタしている中、なんとか千穐楽まで駆け抜けることができて本当によかったと思います。
余裕があったらギターの練習をしたかった、というのは後悔ポイントですが。
流石に今年はもう何もないと思いますので、なんとか本番をやり切った安堵とともにしばらく冬眠しようと思います。
最後に、演出家の南さん、共演者の皆々様、本番のステージを支えてくださったスタッフの方々、
何より、劇場まで足を運んでくださった皆様。
本当にありがとうございました。
次ギターを持つ役に抜擢された時こそ、練習して弾けるようになりたいと思います。
それでは、またいつか。
ギターの二郎 役
丸山陸歩
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