「好きよキャプテン」終演-銀山高校、卒業-
先日、南塾第20回公演「好きよキャプテン」無事全公演終幕いたしました。
南塾への出演も今回で5回目(厳密には4回だけど)、ありがたいことに毎回声をかけていただいて、最早南塾の構成員として認知されているかもしれませんが、僕は一貫して「知り合いが多いだけで関係者ではない」で通しております()
今回の出演についても、前回の公演終わりに演出の南さんから「次出る?」と聞かれたので「はいよー」と答えた所存でございます。
今回の公演「好きよキャプテン」は南塾では度々使わせていただいているTheatre 劇団子の石山英憲さんの脚本。
石山さんの脚本に出演するのは、僕が初めて南塾に出演した4年半前の「そのペン書けず」以来だったので、いやはや縁とは続くものだと思いました。
今回の脚本は前回ほどベタベタではないもののコメディタッチが強めな、けれど少しセンチメンタルな青春ドラマ。
メインキャストのほとんどが高校生で、男性キャストは高校生役になることが確定していたので、高校生役を演じるのは4回目、7年ぶりとなりました。
前回演じた時はまだ21歳で素でも大して違和感のないフレッシュさが(多分)あったのですが、そろそろ三十路も見えてきそうな歳になってまた高校生を演じることになろうとは。
まあ年齢にジャストマッチしてない役をやるなんてよくあることなのでさして驚きはしませんでしたが(オイ
なんなら座組の男性陣では3番目に年下でしたし、僕より上の人達なんかもっと大変だっただろうし。
「そのペン書けず」には出演していたし、その後の「トキタ荘三部作」は全部客として観ていたので、石山さんの脚本の面白さは知っていたし、久しぶりに演者として触れられることにワクワクもしていました。
そんな僕が抜擢されたのはハルビンこと春田という役で、ドングリを通貨にしているくらい貧乏だけどいいやつ、といった感じの高校生でした。
実は最初の顔合わせで台本の読み合わせをした時、僕の中で予感というか、警鐘が鳴ったんですね。
「あ、俺の配役ハルビンになるな」って。
南塾ともそろそろ5年の付き合いですし、南さんの配役意図も自分の身の丈もそれなりにわかっているつもりです。
台本を渡されて一通り読んでみると、自分がどの役になるかはもう何となく予想がついてしまうのです。
だけど、いやだからこそ敢えて歯に衣着せずに言わせてもらうと、ハルビンだけはやりたくなかった。
誤解のないように言っておくと、ハルビンという役を悪くいうつもりは全くありません。ただこれは僕自身のポリシーの問題と言うべきでしょうか。
役者をやっていく上で、譲れないものとか、これだけはイヤだとか、そういうものは人によってあると思うんですけど。
僕が役者として一番イヤなことは「レッテルを貼られること」なんですね。
「あ、この人はこういう役柄なんだな」とか、「どうせこの人はこういう役だろう」とか、そういう定まったイメージをお客さんや共演するキャストに持たれるのがすごくイヤなんですよ。
それって自分の可能性を狭めることにもなりかねないですし。
南塾での僕はというと、どうにも一発屋というか出オチというか、飛び道具みたいな役を回されることが多くて。
牛っていうそもそもわけわからん設定の機動隊だったり、弾けないくせにギター持ってるキカイダーかぶれの流しだったり。
「無頼茫々」なんて話はメチャクチャ真面目なのに箒でぶっ叩かれた挙句スローモーションで倒れる演出をつけられたりして。
そういった、いわゆるネタ枠に該当する役をやらされることが非常に多いのです。
今回のハルビンという役もその例に漏れず飛び道具のような役でして。
まず格好が短パンタンクトップ、貧乏でドングリを通貨にしている、貧乏だからセミとかアリとか食う、なんならナイフすら食う、合宿と聞いて人語かどうかすら怪しい奇声ではしゃぐ、かと思ったら大人になるといきなり大富豪になる(でもプリングルスで感動する)、メインキャストなのにセリフが他の役と比べると半分もない(尺の都合上原本からカットされたシーンもあるため、これは致し方なし)、でもほぼ全シーンに出てる、セリフと動きの比重が3:7くらい。
…とまあ、露骨にそういう風に書かれたネタ枠だったわけでして。
何もなければ当たり前のように僕に回ってくるんだろうなぁ、と直感で察しておりました。
でも、そういう「当たり前」や「どうせ」に落ち着きたくない。
そろそろ南塾のネタ枠から脱却したい。
もう5回目なんだからそろそろ違う役柄をやらせてほしい。
そんな思いもあって、本稽古前にいつも行われるキャストオーディションでは頑なにハルビンはやらず他の役を読んだりしたわけです。
まあ、結果はご覧の通りとなったわけですが。
とはいえ、抜擢された以上力は尽くさねば役者が廃るというもの。
そこで腐らずにきちんとやり遂げたつもりです。
そんな様々な思いを抱えながら向き合ったハルビンという役。
セリフとして訴えられる箇所が極端に少ない(あったとしても笑かしシーン)、だけどほぼ全てのシーンにいる。なればこそ佇まいで意味を見出さなくちゃいけない。
そこに「いる」という芝居は「無頼茫々」の福留でだいぶ鍛えられたと思ってましたが、今回もより一層鍛えられた気がします。
貧乏だし、タンクトップ姿だし、漢字苦手だし、異次元に住んでそうなママと妹いるし、タンクトップ姿だし。
見映えする綺麗さや格好良さとは遠いキャラクターなのかもしれない。
けれど、ハルビンは別にバカでも空気が読めないわけでもないと思うのです。
ただみんなよりほんの少しずれているというだけで。
キャプテンの言うようにいいやつだし、そのシーンでこぼした「(ボート部を)辞めたくねえから」って一言に彼の想いの全てが詰まってる気がしたので。
終盤のボート漕ぐシーンとか無言劇とか、ラストの大人のシーンとかは、その辺りを特に意識してそこに「いた」つもりです。
細かすぎたかもしれないし、直接語るような台詞もなかったので見る人には伝わってないかもしれないけど。
僕なりにハルビンの抱いていた気持ちをきちんと持ってあの部室にいたつもりなので。
せっかくだからここに書き残しておいてもいいかな、と思った所存です。
今回は座組唯一のシングルキャストで、特に男性キャストは舞台上でバック台を漕ぐという演出もあり、前回以上に肉体的負担が大きい役でした。
他の男性キャストはダブルなので4回しか漕がないところ、僕は8回漕がなきゃいけないし、なんなら場当たりとゲネでも漕いだので計12回漕いでるし。元々口より体が動く役なので運動量が多いし。
けどまぁ、疲れすぎて倒れそう…とはならなかったのは、稽古期間中欠かさずしていた筋トレのおかげですかね。
(台本読んだ時、上着を脱いで上裸になるってト書を見た時からなるべく体は鍛えようと思っていました)
本番終わった翌日から仕事だし、なんならこれ書いてる現在かなり想定外のことが起こってバタバタしていて、「わたし何した!?」ってレベルで逆風が吹き続けていて正直頭抱えておりますが(苦笑)。
とりあえずはそれを乗り越えて安堵の笑顔を見せられたらな、とおもいます。
最後に、演出家の南さん、共演者の皆々様、本番のステージを支えてくださったスタッフの方々。
何より、劇場まで足を運んでくださった皆様。
本当にありがとうございました。
それと南さん、以後短パンタンクトップは絶対NGでお願いします。
そろそろクセが強くない、素直な役をやりたいな。
それでは、またいつか。
春田/ハルビン 役
丸山陸歩
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